Ⓒママリ
このお話の主人公は、妊娠中のさゆり。夫は家計に無関心、義母は浪費家。穏やかな日常が続く中、財布や隠し場所からお金が消えていることに気づき、不穏な予感に苛まれる。
出産に備えて、家計の管理を頑張る日々
「ふぅ、今日も1日、無事に終わったわ」
さゆり(32)は、大きくなったおなかをそっと撫でながら、リビングのソファに深く身を沈めた。現在妊娠7か月。もうすぐ新しい家族が増える。その喜びと同時に、漠然とした不安も感じていた。出産に備えて、ちゃんとお金の管理をしておかなきゃ。そう強く思っていた。
夫の学(33)はマイペースで、お金のことには無頓着だ。家計のことはすべて私任せ。いや、任せているというより、面倒くさがって見て見ぬふりをしている、と言った方が正しいかもしれない。
義母のお金の使い方が不服
「学くん、今月の家計簿、見てくれる?」
私がそう声をかけると、学はスマホから目を離さずに「ああ、後で見るよ」と生返事をする。その「後で」が、いつになったら来るのか。何度か催促しても、結局はうやむやになってしまうのが常だった。だから、私は一人で黙々と家計簿をつけ続けていた。子どものためにも1円たりとも無駄にしたくない。「しっかり貯金する」それが、今の私の最大の目標だった。
義母(72)は、私たち夫婦と同居している。学の母親だから、もちろん大切に思っている。でも、正直言って、義母のお金遣いには頭を抱えることが多かった。毎月のように「ちょっと貸して」と頼まれ、その度に家計は厳しくなる。学は「仕方ない」と済ませるけれど、私にとっては切実な問題だ。
「さゆりちゃん、今日スーパーでね、特売の高級和牛があったのよ!思わず買っちゃったわ!」
義母がうれしそうに話すのを聞きながら、私は心の中でため息をついた。特売とはいえ、高級和牛。そんなの食べる必要ある?
「あら、おいしそうですね」
精一杯の笑顔でそう返しながらも、私の脳裏には、少しずつ減っていく貯金額がちらついていた。
ある日抱く違和感
そんなある日、私は妙な違和感を覚えるようになった。財布の中身が、どうも合わないのだ。最初は気のせいかと思った。自分がどこかで使ったのを忘れているだけだろう、と。でも、それが一度や二度ではない。封筒に入れて隠しておいたへそくりまで、なぜか減っているような気がした。
「まさか……」
この家には、私と学、そして義母しかいない。誰かが、私のお金を盗んでいるなんて、考えたくもなかった。でも、この不穏な感覚は、日を追うごとに強くなっていった。私の穏やかな日常に、得体の知れない影が忍び寄っているような、そんな不安に苛まれ始めていた――。
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あとがき:疑惑の始まり
幸せな日常が、突然の謎によって揺らぎ始める第1話。お金がなくなるという小さな違和感は、さゆりの心に、夫や義母への不信感を芽生えさせます。この不穏な出来事の裏に隠された真実とは?そして、さゆりは大切な家族とどう向き合うのか。物語はここから加速していきます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
イラスト:まい子はん










