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娘がネットで恋した“小説好き大学生”、信じられない正体に恐怖が走る|はじめての恋、見えない檻

真紀子さんは、中学2年生の娘・ひよりを育てる母。警察署での相談のあと、知らされたのは衝撃の事実でした。守れなかった悔しさと、それでもかろうじて間に合った安堵の間で揺れる両親。そして傷心のひよりに届いたのは…。『初めての恋、見えない檻』第5話をごらんください。

Ⓒママリ/画像の生成にAIを使用しています

🔴【第1話から読む】娘とスマホ、揺れる家族の日常

刑事から相手の正体が暴かれ、家族は絶望と安堵の狭間に立たされる。そんな中、ひよりに届いたのは同級生からの何気ない電話だった。

警察での娘の自白

警察 PIXTA

警察署の面談室は、冷房が効いているはずなのに、空気が重くとても息苦しいものでした。机の上に置かれたひよりのスマホを、刑事が手袋越しに操作していました。私は両手を膝の上に置き、爪が食い込むほど強く握りしめていました。

「ひよりさん、このやり取りの中で、写真送ったことはありますか?」
優しいけれど、低い声の質問に、ひよりは目を泳がせました。そして
「……あります」
小さな声でしたが、私には頭を殴られたような衝撃でした。そしてやっぱり、とも。夫を見ると目を閉じ、口を固く結んでいました。

刑事さんは淡々とメモを取りながら続けました。

「相手に会ったことは?」
「ないです…。でも、会いたいって」
「写真を消してって何度も言ったんだけど、目の前で消してあげるって」

声はだんだん涙で震えていきました。すごい顔で画面を見ていたのは、その応酬だったのです。

「この素敵な奥さんになれるって、どういう意味かな。結婚しようって言われた?」
「中学を卒業したら結婚しようって言われてました。たくみさんの家で暮らそうって」

卒業したら…って高校は?なんで結婚なのよ!しかも同居って!何を考えているのよ!そいつ!

「最初は小説の話や学校の話とかだったけど、写真を送ってから変になって…」
事情聴取は1時間以上続いたあと、最後に刑事が言いました。
「このスマホは証拠としてお預かりします。しばらくはネットや通話は控えてください」

そして私たち夫婦が何が何でも送り返したかったお金ですが、接触、刺激しない方がいいとのアドバイスがあり、従うことにしました。署を出ると、夜風が頬にあたりましたが、生ぬるくとても不愉快なものでした。車に乗り込んでも、夫は一言も話しませんでした。家に着いても同じでした。

夫はひどく落胆しています。失望もしているでしょう。無理もありません。怒鳴られるより、何も言われないキツさを、ひよりに知ってもらうしかありません。

そして私たち親は、自分たちの認識の甘さに打ちのめされていました。「娘を信じていたからこうなった」というより「うちの子に限って」という思いがどこかにあって、その思い込みを信じていたから、こうなった。…そうとしか言えません。

崩れ落ちる家族

危険 男 PIXTA

リビングの時計の針がやけに大きく音を立てて進む中、スマホが鳴りました。警察からでした。「先ほど、相手の身元が判明しました」受話器を持つ手に力が入りました。

「たくみという名前は偽名で、本名は田村まさふみ。38歳、無職。両親と同居している男性です。それからSNSのアイコンの写真は本人のものではありません」

言葉の意味はすぐに理解できました。けれど頭の中では、まだ大学生のたくみが、笑顔でひよりとLINEしている映像が浮かんでいました。その顔が、ゆっくりと、知らない中年男の顔に変わっていき、吐き気がこみ上げました。ひよりはぽかんとしています。刑事さんの声が続きました。

「この男は過去にも、未成年への接触で警告を受けています。なのですぐに特定できました。そして今回ひよりさんに、『中学を卒業して結婚したら、体1つで飛んできてね』『その前にママに内緒で会おう。駅まで迎えに行くから』…こうした文面が繰り返し送られていました」

握っていたスマホが手汗で滑りそうになりました。横で夫は、拳を膝に押し付け、目を固く閉じていました。

「…わかりました。ご連絡ありがとうございます」

電話を切った瞬間、体から力が抜け、ソファに沈み込みました。大学生ではなく、たくみですらありません。38歳、中年男性です。ひよりが笑いながら語った「優しい」「大人っぽい」「小説が上手」は、全部、彼女を絡め取るための道具でした。ひよりはこんなモンスターとたった1人で戦っていた…。

その現実が、胃の奥に鉛の塊のように沈んでいきました。同じくソファーで脱力しているひよりに寄り添い、「ひよ、ごめんね…ママたち気がつかないでごめんね…もっと早くスマホを見ていれば…」と謝ることしかできません。

夫は、こちらに背を向けて肩を震わせて低い声で言いました。「…ひより。気づいてやれなくてすまなかった」

私の胸の奥では燃えるような怒りと、あの日、もっと強く止められなかった自分への悔しさだけが渦巻いていました。ひよりは私の胸で黙って抱かれていました。ショックで何も言えないのだと思います。

後日、警察の話だと、男は取り調べを受けたうえで、厳重注意となる見込みだということでした。彼がどれだけ非常識な計画を立てていたのかを知った今、ただ一つ、心から思います。ギリギリだけど守れてよかった。

日常への一歩

女子校生 PIXTA

ひよりはあの悪夢の日からしばらく学校を休んでいます。もうそろそろ行ってもいいんじゃないかなと思っていたとき、ひよりのスマホが鳴りました。ビクッとしながら画面を見ると、クラスメイトのトモヤくんでした。ひよりがおそるおそる出ると、あっけらかんとした声が聞こえました。

「ぴよこ〜、おまえどうしたんだよ学校休んでさ〜。もしかしてアイス食いすぎてハラ壊した〜?」

ひよりは思わず

「違うし!」

と叫びます。トモヤくんは

「明日は学校来いよ〜。給食、焼そばとフルーツ白玉だから〜」

とだけ言って切ってしまいました。そばにいた私が「焼そばだって、行く?」と聞くと、答えませんでしたが、口元は笑っていました。同い年の、よーく知ってる男の子からの電話で、ひよりはやっと日常に戻ることができそうです。

こうして、私たちの穏やかな日常は、取り戻されました。けれど、その裏にあった見えない檻の恐ろしさは、一生忘れずに生きていきたいと思います。

あとがき:真実と恐怖を超えて、日常へ

大学生“たくみ”の正体が38歳無職の男であることが明かされました。信じていたものが根底から覆される衝撃、娘を守れなかった悔しさ、そして間一髪で救えた安堵。その複雑な感情が家族を覆いました。それでも最後に描かれたのは、同級生からの何気ない電話にひよりが見せた小さな笑顔。危険は去り、日常を取り戻せるという希望が示されました。“見えない檻”の恐ろしさを知った母と娘は、これからも共に歩んでいきます。

※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています

🔴【全話読む】はじめての恋、見えない檻

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