Ⓒママリ
昨日…りゅうとが学校から帰ってきて、けんやくんがいつものように家に入ってきた。そして、いつものようにゲーム機を手に取ろうとした、その時だった。
「あれ?ゲームがない」
けんやくんの声が響いた。私はリビングにいたので、何ごとかと顔を上げた。
「りゅうと、ゲームどこ?探してよ!」
けんやくんは、りゅうとにそう言った。まるで、りゅうとが「ゲームを隠した」とでも言いたげな口調だった…。
「知らないし、自分で探してよ」
りゅうとが、少しフキゲンそうに答えた…。りゅうとは、最近、けんやくんにゲームを独占されるのが面白くないようだった。けんやくんは、うちの中を散々探し回った。ソファーの下、棚の中…そして、私の引き出しまで開けようとした。
「けんやくん!人の家の引き出しを勝手に開けちゃダメでしょ!」
私は、思わず強い口調で注意した。彼の行動に、私の怒りが頂点に達しそうだった。結局、ゲームは見つからなかった。
「ちぇーっ」
けんやくんは不満そうにしたうちをして、そのまま帰っていった。 ※1
非常識すぎる息子のクラスメイト
小学1年生の息子・りゅうとの友だち・けんやくんは、毎日ゲーム目的で遊びに来ます。この日も、ずかずかと家に入ってきて、勝手にゲームをし始めようとしました。ところが、ゲーム機は見つからず、けんやくんは帰って行ったのです。
このとき、さつきは「けんやくんは息子と遊びたいわけじゃなかった」ことに気づきます。さらに、今までは「息子の友だち」だからとガマンしていましたが、友だちですらなかったことを確信します。
もう遠慮しない!夫に相談した夜
その日の夜…私は夫・達也に、これまでのことをすべて話した…。けんやくんが毎日、来るようになったこと…。りゅうとがいないのに家に入ろうとすること。ゲーム目当てで来ていること。宿題をじゃますること。お礼の言葉もないこと…。そして、ゲームが見つからなかった時の彼の態度について。
私の口から、せきを切ったように言葉があふれ出した。
「もう、私、限界なの。りゅうとの友だちだからって、がまんしてきたけど…もうムリ。毎日、彼が来る時間になると、心臓がドキドキするの…。インターホンが鳴るたび、胃がキリキリと痛むのよ」
私の声は震えていた。達也は黙って私の話を聞いていたが、その顔はみるみるうちに険しくなっていった。
「それは、あまりにも非常識すぎるだろう」
達也の声は静かだったが、怒りが込められているのが分かった。
「りゅうとの友だちだからって…こんなに好き勝手されて、こっちがストレスを抱えるなんておかしい。相手の親は一体、何を考えてるんだ…」
彼の怒りを見て、私は心が軽くなった気がした。一人で抱え込んでいたものが、少しだけ分かち合えたからだ。
「明日、俺が一緒に相手の家に行く。こんなの、放っておけるわけがない」
達也の言葉に、私は涙が止まらなかった。 ※2
今まで、ひとりでストレスを抱えていたさつきにとって、夫が味方になってくれたことは、どれほど心強かったことでしょう。
ついに、けんやくんの母親へ、今までのことを話します。
問題児の家へ、突撃訪問
インターホンを鳴らすと、出てきたのはけんやくんの母親らしき女性だった。私と達也は自己紹介をし、「けんやくんのことでお話ししたいことがある」と伝えた。
「けんやが何かしましたか?」
けんやくんの母親は、けげんな顔で私たちを見た…。何が悪いのかピンと来ていないような口調だった。
達也はこれまでの経緯を冷静に…しかし、毅然とした態度で説明した。けんやくんが毎日、約束なしに家に来ること…。りゅうとがいないのに家に入ろうとすること。ゲームを独占することや宿題のじゃまをすること。そして、無断で引き出しを開けようとしたことなど…。
けんやくんの母親は話を聞いている間も、どこか上の空…といった様子だった。時折「へぇ」「そうなんですか」と相づちを打つだけだった。そして、達也が話し終えると、彼女は言った。
「あの子、ゲームが好きなんです。うちにはゲームがないから…お宅で遊ばせてもらっていたんですね。すみません、ご迷惑をおかけしました」
謝罪の言葉はあったものの、その声には全く反省の色が見られない。まるで、仕方なく言っている…といった感じだった。私の心の中には、再びモヤモヤとした感情が広がった。
「あの、お宅のお子さんが、毎日うちに来て、勝手に家に入って、りゅうとの宿題のじゃましたり、勝手に引き出しを開けたりするのは、非常に困るんです。もし、この状況が続くようでしたら、学校にも相談させていただきます」
達也ははっきりと、そして強い口調で告げた。その言葉に、けんやくんの母親の顔色が変わった。初めて、彼女の表情にあせりの色が浮かんだ。
「え…学校にですか?それはちょっと…」
彼女は、口ごもった。
「ええ。私たちも、これ以上はガマンできませんので」
達也は、きっぱりと言い放った。
「…わかりましたよ」
彼女はしぶしぶ…といった感じで、そう返事をした。その声には不満がにじんでいるようにも聞こえた。それでも、達也の言葉が、彼女に何らかの圧力をかけたのは間違いなかった。 ※3
最初は、心のこもっていない謝罪の言葉を口にしたけんやくんの母。ところが、「学校に」と言った途端、態度を改めました。学校に、息子の粗暴の悪さが伝わるのは、まずいと思ったのでしょうか?いずれにせよ、夫の言葉が効いたようです。
その後、けんやくんが家に来ることはピタリと止みます。さつきさん親子は、ようやく平穏な毎日を取り戻すことができました。そして、見当たらなかったあのゲーム機は、単純にりゅうとが車に置き忘れていました。無事に見つかり、よかったですね。
いくら息子の友だちとはいえ、約束もなしに毎日来られるのは迷惑ですよね。さらに、やりたい放題でした。今、けんやくんがどのように放課後を過ごしているのかは、わからないそうですが、今の内から常識を身につけないと、将来困ってしまうのは本人です。常識やマナーについては、家庭で教えなければいけませんよね。










