主人公・春香(32)は、夫と息子・陽太(4)との3人暮らし。平和な暮らしをしていたある日、近所に引っ越してきた6歳の健也君は、いつも1人で寂しそうに外で遊んでいます。年下の陽太とはすぐに仲良くなりますが、誰かにかまってほしいという健也君の寂しそうな様子が気にかかります。
1人でいる男の子
私は春香、32歳。夫の悟と4歳の長男、陽太の3人暮らしです。最近、私たちの生活は少し変わりました。隣の敷地に立つ集合住宅に、ある男の子が引っ越してきたんです。健也君、6歳。小学1年生になったばかりの、活発そうな男の子です。
私の家の近所は道路を挟んで8軒ほどの家が向かい合っています。この道路は車の通りが少なく、近所の子どもたちがよく遊び場にしています。陽太もここで自転車の練習をしたり、鬼ごっこをしたり。そんな日常の中に、いつからか健也君は1人で立っていることが増えました。
最初に気づいたのは、陽太を公園に連れて行こうと玄関を出たとき。道路の向こう側で、家の前をじっと見ている男の子がいました。私や陽太が気づくと、少し視線をそらしたり、急にしゃがんでみたり。まるで、誰かが出てくるのを待っているみたいで、その姿がなんだか胸に刺さりました。
息子ともすぐに仲良く…
陽太は、最初から彼に興味津々。だんだんと健也君のことを本当の兄のように慕い「お兄ちゃん」と呼ぶようになりました。
家の前で健也くんを見かけたとき「お兄ちゃん!」と声をかけると、健也君はうれしそうに駆け寄ってきます。遊んでいると健也君も本当に楽しそうで、ずっと笑っているんです。
夫の悟にも、健也君のことを話しました。「あの子、いつも1人でいるんだよね」と私が言うと、悟も「ああ、気づいてたよ。親御さんはあんまり出てこないみたいだね」と返しました。
私たちは、正直なところ少し戸惑っていました。健也君は最近よく話題になっている「放置子」なのか、それとも自由な家庭なのか。でも、健也君の寂しそうな、誰かにかまってほしいという眼差しを見ていると、どうしても胸が締め付けられるのです。
どこかずっと寂し気な子
近所の子どもたちが集まって遊んでいると、健也君はいつもその輪に加わりたそうに、少し離れたところから様子をうかがっています。誰かが「健也君も入る?」と声をかけると、パッと顔を輝かせて駆け寄っていく。
そして、遊びが終わって子どもたちが家路につくとき、また1人で道路にぽつんと残される。その背中を見るたびに、なんだか私たちまで寂しくなってしまうのです。
この寂しそうな男の子との交流は、私たち家族の日常に、小さな波紋を広げ始めていました。彼と陽太の関係は良好で、それはとても喜ばしいことなのですが、彼の行動は少しずつ私たちの気をもませるものになっていくのです。
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あとがき:「小さな影が落とす波紋」
新しいご近所さんの存在は、日常に小さな変化をもたらすものです。特にそれが子どもである場合、その無邪気さの裏に隠された寂しさは、周囲の大人の心を揺さぶります。春香さん一家にとって、健也君は単なる隣人ではなく、無視できない存在になっていく様子が伝わります。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










