🔴【第1話から読む】微笑ましさ→違和感へ…小1娘の友人が毎日のように家にくる|娘の友達を出禁にした話
娘の友人の奇行に悩まされ続けていた主人公・果穂。そんな中、なんとついに「家に対しての被害」とも言える事態が起こってしまうのです。
ベランダ放置子がしていた“とんでもないこと”
そして数日後。その日、事件はベランダで起こりました。
「パパ!大変!」
ももの声に、雄也が仕事部屋から出てきます。私も、リビングからベランダの様子を窺いました。ベランダのコンクリートの地面に、絵の具がこぼれている。そして、その絵の具を、みかんちゃんが指で伸ばし、何かを描こうとしているではありませんか。
それは、まるで抽象画のように、赤や青、黄色の色が混ざり合い、コンクリートのグレーを覆い隠していました。
「みかんちゃん!何してるんだ!?」
夫の大きな低い声が響きます。みかんちゃんは、ビクッと体を震わせ、雄也を見上げました。手には、私がももに買い与えた水彩絵の具のセットが握られています。その箱の中は、すでにめちゃくちゃになっており、絵の具のチューブがいくつも飛び出していました。
「ももがトイレに行ってたら、みかんちゃんが…」
ももはあまりのことに唖然としています。
「絵を描こうと思って…」
みかんちゃんの無邪気な言葉に、雄也の怒りが頂点に達しました。
「ここは君の家じゃない。人の家のベランダを汚すとはどういうつもりなんだよ」
雄也の声には怒りだけではなく、悲しみや、やり場のない苛立ちを含んでいるように私には聞こえました。みかんちゃんは、雄也のあまりの剣幕に、さすがに顔を青ざめさせました。
「ご、ごめんなさい」
か細い声でそう言うと、みかんちゃんは、持っていた絵の具のセットを放り出し、ももに「これ返すね」と言うと、サッと走り出して一目散に玄関から飛び出していきました。
みかんちゃんが帰った後、雄也は怒りが抑えられません。
「他人の家に落書きって…一体どういう教育されてるんだよあの子は。もう家には一切あげさせないでくれ」
雄也の言葉は、私の心に深く突き刺さりました。雄也の怒りは、みかんちゃんに対するものでもあり、私に対するものでもありました。ベランダの汚れは私が落としましたが、水性絵具とはいえコンクリートに染みたものはなかなか落ちませんでした。
授業参観で放置子の母に遭遇
それ以来、ももにもしっかり言い聞かせ、みかんちゃんとは外で遊ぶようにさせていました。これまでは雨の日は仕方なく家にあげたりしていましたが、それもなしにしています。
そんなある日、学校の参観日でみかんちゃんのお母さんに会いました。みかんちゃんのお母さんは想像より物腰やわらかく、ていねいな印象の方でした。
「いつも、ももと仲良くしてくれて、ありがとうございます」
私がそう言うと、みかんちゃんのお母さんは
「こちらこそ、うちの子がいつもお世話になってしまって…なかなかご挨拶に伺えていなくてすみません」
と、恐縮した様子で答えました。私は、この機会に、思い切って話を切り出すことにいたしました。
「あの…実は、少し、困っていることがありまして…」
私は、言葉を選びながら、みかんちゃんが私の家で走り回ったり、ベランダを汚してしまった話を伝えました。みかんちゃんのお母さんは、申し訳なさそうな顔で、何度も頭を下げました。
「それは本当に申し訳ございません。家では静かなタイプの子で、ももちゃんの家でそんなに暴れているなんて知りませんでした。私の把握不足でした。家に戻ったら厳しく言っておきます」
それからしばらくは、みかんちゃんが家に来ることもなく、平穏でした。しかしある日の朝に目を覚ました瞬間、耳を疑いました。
「ガチャン」
リビングの方から、何かが開くような音がします。家族はまだみんな寝ているのに…。私は心臓をバクバクさせながら、そっとリビングに向かいました。
「おはよう!」
リビングの掃き出し窓が少し開いており、そこから、見覚えのある顔が、私に満面の笑みを向けておりました。みかんちゃんでした。
早朝の来訪
「みかんちゃん!?どうしてここに!?」
私は、あまりのことに、言葉を失いました。
「ももちゃんと朝ごはん食べたい」
みかんちゃんは、そう言うと家の中に入ろうとします。私は、もう限界でした。今までの、小さな違和感や不満が、一気に爆発いたしました。
「待って!みかんちゃん、やめて!」
私は、今までにないほど強い口調で、みかんちゃんを制止しました。私の声は、震えていました。それは、恐怖と、怒りと、そして疲弊の入り混じった声でした。
「どうして、窓から入ってくるの!?こんなの、絶対ダメだよ!」
私は、泣きそうになりながら、みかんちゃんに詰め寄りました。みかんちゃんは、私の剣幕に、目を丸くして、立ち尽くしました。そして、次第にその目に涙が溜まっていく。
「だって…ももちゃんと朝ごはん、食べたかったんだもん…」
みかんちゃんは、そう言うと、大粒の涙を流し、泣き出しました。私は、泣いているみかんちゃんを見て、少しだけ後悔しました。しかし、もう後には引けません。
「勝手にうちに入ってくるのは、やめて。こういうのは、ダメなの」
私は、そう言って、みかんちゃんを家の外に出し、窓を閉めました。みかんちゃんは力なく「バイバイ」と言うと、泣きながら自宅へと帰っていきました。私は、窓からみかんちゃんの背中が見えなくなるまで、動けませんでした。
起きてきたももが心配そうに私に「どうしたの?」と尋ねました。きっと、私が思い詰めていることに気付いたのでしょう。私は、ももに、今日の出来事を正直に話せませんでした。話せばきっと、ももがただ困るだけで終わる気がして。
今回のことをどうするか悩んだ結果、私はみかんちゃんのお母さんにメッセージを送りました。今朝のことをすべて、包み隠さずに。
その日もみかんちゃんのママは休日出勤だったそうで、とてもていねいな謝罪が届きました。仕事に行く際、みかんちゃんを祖母の家に向かわせようとしたそうですが、その道中にわが家があり、みかんちゃんはそのまま突発的にももの家に来てしまったそうです。
みかんちゃんの気持ちはわかりつつも、わが家ももうこれ以上面倒は見られません。今後どうしていけばいいのか、内心頭を抱えるばかりでした。
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あとがき:お母さんはまともなのに…
みかんちゃんの母はとても常識的な人だったようです。しかし、子どもがお友達の家に出かけているときの態度まではなかなか把握できませんよね。
親からは見えない子どもの振る舞いについても、子どもに話を聞くなどしてしっかり知っておきたいと思わされるエピソードでした。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










