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罵られることも覚悟していた分、彼の温かい言葉によけいに涙が溢れる。まなぶは夜のバイトを増やして頑張っていた。そんな彼だからこそ、支えたいと思ったのに…。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
「もう謝るなよ。それより、これからどうするか話そう。今はその抗弁書?ってのを用意してるんだっけ」
「うん。カード利用を止めるのに必要な書類なんだって」
「一度、消費生活センターにも相談してみようか。相手の会社からお金を取り戻したり、訴えたりできないかな」
彼の言葉に目から鱗が落ちる。消費生活センター…そういえばそんな機関があった。 ※1
夫の優しさに涙が止まらない
夫の会社が経営不振に陥り、ボーナス全額カットという、暗い話題が家計に影を落としていました。そんな中、夫は夜にバイトをし、家族を養うために奮闘していたのです。そんな夫の助けになりたかった美穂ですが、詐欺にあってしまったのです。
被害を告白するのは、勇気がいることですね。ですが、そんな妻の様子を汲み取り、優しく寄り添ってくれた夫。少し冷静さを取り戻した美穂は、消費生活センターへ相談することを決めます。
詐欺被害を訴えることはできる?
翌日私は、娘を連れてすぐに消費生活センターに行き、今回の副業詐欺について相談をした。しかしカード利用停止と仕事を辞める以上の対処は難しいとのこと。弁護士を使い相手へ訴えても、結局労力と資金がかかるばかりで得られるものは少ないという。
「弁護士さんも、こういったケースは訴えるのが難しいとよく聞きます。泣き寝入りを狙うネット犯罪は、消費者自身の防衛が必要なんです」
「そうなんですね…」
窓口の男性職員は「主婦の方は狙われやすいので、ご注意くださいね」と言う。きっと似たような主婦を、何人も見てきたのだろう。
とぼとぼと建物から出ると、ある人物とばったり会った。近所の実家に住む私の母だ。
「あら、美穂じゃない。消費生活センターに、何の用事だったの」
「お母さん…」
まずいところを見られてしまった。しかし、下手に隠すのも良くないだろう。私は実家によると、母に自分の情けない詐欺被害を報告した。 ※2
消費生活センターへ相談に行きましたが、期待していたような結果を得ることはできませんでした。詐欺被害を訴えるのは、難しいのですね。
そして偶然、実の母と会ってしまいました。詐欺の被害にあったことを母に正直に話します。すると、母から意外なことを告げられたのです。実は、母も被害にあったことがあるそう。しかも、被害額は100万円。「お金を預けるだけで、20パーセントの利子がつく」という、甘い言葉に騙されてしまったそうです。
詐欺被害を経験し、学んだこと
似たような道を歩くとは、さすが親子だ。そして母は、おもちゃで遊んでいる2歳の孫娘に視線を送った。
「この物価高ですものね。あなたも育児中、少しでも稼ぎたくて動いたんでしょう」
「うん…」
「不安を感じて家族を助けたいと思った気持ちは、間違いじゃない。ダメだったのは、詐欺を見抜く力をきちんとつけていなかったこと。そしてそれは、これから学んでいけばいいのよ」
「お母さん…」
「…って、私も失敗したから言えるんだけどね」
ふと、消費生活センターの職員が言っていた「主婦は狙われやすい」という言葉がよみがえる。主婦が狙われやすいのは、世間と隔離されやすく、育児の合間でしか動けないので、詐欺相手にはうってつけだからなのかもしれない。
そして家族を助けたい、負担をかけたくないという意志があるからこそ…相談せずに泣き寝入りをしてしまう。だから、副業詐欺が多いのだ。母は穏やかに言う。
「今回のこと、教えてくれてよかった。あなたが詐欺被害の話をすることで、私も改めて引っかからないようにしなくちゃって思えたわ」
「そうなんだ」
「ええ。話すことによって、周囲への注意喚起にもなるのよ」
「…そっか」
その言葉に救われたような気がした。 ※3
母の温かい言葉に救われましたね。家計がひっ迫していたり、子どものためにお金が必要だったりすると、追い詰められてしまうものです。そんな切実な想いにつけこむのが詐欺の手口。改めて「簡単に稼ぐ方法はない」ことを、心に刻んでおきたいですね。
当然ですが、詐欺の加害者がいちばん悪いですね。ですが、わたしたちも防衛の意識を高めなくてはいけません。「泣き寝入り」という悲しい結末を防ぐために、教訓となるお話でした。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。










