入園してすぐ、私は一人のママさんに目をつけられた。その名も沙織(さおり)さん。彼女は会うたびに、夫の勤務先や収入の話をさりげなく、いや、あからさまに織り交ぜてくる。
「ねえ、真由美さんのご主人、お仕事は何をされているの?うちはね、とある上場企業なのよ」
彼女はそう言って、私を値踏みするような視線を送ってくる。最近は特にマウントが激しくなった。どうやら、この春にご主人が昇進されたらしい。
「聞いてくれる?うちの主人、ついに課長補佐に昇進したの。あんまり偉くなっても帰りが遅くなって困るんだけど、まあお金の面は助かるわよねえ」
彼女の顔には、隠しきれない優越感が貼り付いている。私は
「まぁ、それはおめでとうございます」
と、当たり障りのない相槌を打つのが精一杯だった。
「やっぱり、安心できる環境って大切よねえ」
「まあ、だれもがそんな環境じゃないだろうし、そういう方々こそ『頑張ってる』んでしょうけど」
まるで上場企業でない企業に勤める人たちを下に見るような言い方にモヤモヤしつつも、私は適当にかわすので精一杯だった。内心、とても面倒に感じていたのだけど―――。 ※1
面倒なママ友の発言
保育園で出会ったママ友・沙織は、自分の夫が上場企業に勤めていることが自慢なのでしょう。さらに、最近昇格をしたようで、マウントが激しさを増します…。
このような状況ですが、真由美は自身が課長であることを隠し、保育園での生活を穏便に過ごそうと決め込んでいました。ですが、沙織のマウントは日を追うごとにエスカレートするばかり…。
「貧乏は大変」マウントママの決めつけにドン引き
彼女の言葉は、常に相手が自分の家よりも貧乏な想定で語られる。
「子どものものは品質で選びたいけど、みんながそうできるわけじゃないわよね」
「インスタで節約頑張ってる方の投稿を見たんだけど、あんなにチマチマやって時間の無駄じゃない?貧乏は大変ね」
あまりにも失礼な発言に、私の理性は切れそうになったが、ここで私も上場企業に勤めていて課長ポジションだなんて暴露したら大人気ない。私は、ふつふつと湧き上がる怒りを深呼吸で押し殺した。
「そうですねえ、節約しないと色々大変ですよ~」
そう笑顔で返すと、沙織さんは勝ち誇ったような顔をした。
彼女は、私が何も反論しないことで自分が勝ったと受け取っているのだろう。その誤解が、いずれ彼女自身を追い詰めることになるとも知らずに。私は、この理不尽な状況を、どこか冷めた目で見つめていた。 ※2
真由美が反論しないのをいいことに、ますます調子に乗る沙織…。夫自慢だけではなく、相手の経済状況を決めつけ、臆測で見下す発言をするのは、幼稚ですね。
そして、大人の対応を貫く真由美。かっこいいですね。やがて、マウントママのメッキがはがれる事態が訪れます。
ある日の雨上がりの朝、いつもより保育園へ送る時間が遅くなってしまいました。すると、そこで沙織の夫と遭遇。そして、真由美自身も気づかなかった、新事実が発覚したのです…。
マウントママの夫の「まさかの正体」
「夫は忙しいのにたまには送迎してあげようって言うのよ」
私は内心、驚きと呆れでいっぱいだった。彼女が誇らしげに語る「課長補佐」とは、私の直属の部下。私は、あまりのことに動揺し、どう対処しようか一瞬の中でとても迷った。ここで沙織さんの夫に「山下さん!」と声を掛けたら、部下であるママ友の夫は驚くことだろう。でも、ママ友はさんざん自慢してきた夫が私の部下だと知ったらそれこそ大恥だと思う。
私は「素敵な旦那さんですね。すみません、ちょっと今日は急いでいるので失礼しますね!」と、沙織さんの夫・山下さんに気づかれないよう避けてその場を後にした。
今日は避けてもきっといつか真実がわかる日がくる。私の中で、沙織さんのマウンティングが、全く違う意味を持つようになった日だった―――。 ※3
沙織が自慢する夫の正体は、真由美の部下でした!今まで、保育園で顔を合わせたことがなかったため、お互い気づきませんでした。ですがいづれ、遅かれ早かれ、部下と上司の関係であることが明らかになる日がやってくるのは確実です。
まさか、自分がマウントをとっていた相手が、夫の上司夫婦だったとは、夢にも思わなかったのでしょう。ですが、勝手に相手の立場を決めつけ、マウントをとる行為は浅はかですね。たとえ、自慢したいことがあっても、発言には気をつけなければいけません。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










