当日、賑やかな父子4人を見送った後、私はともみさんと二人、リビングのソファに腰を下ろしました。
「今日はありがとうね、ゆりちゃん。久しぶりにこういう時間を持てて嬉しいわ」
ともみさんは、心底リラックスしたように微笑みました。
「こちらこそ、誘ってくれてありがとう。ちょっと奮発して買った、おいしいカフェオレがあるのよ。牛乳で割って飲むタイプなんだけど」
私はそう言って、キッチンの棚から、少し高級な瓶入りのカフェオレベースを取り出しました。ともみさんが目を輝かせて「それ、CMで見て気になってたの!」と言ってくれたので、私も嬉しくなりました。
早速、冷蔵庫を開けました。しかし、ここで一つの問題に気がついたのです。
「あら…牛乳を切らしているわ」
私は思わず声を上げました。昨夜、息子が寝る前に全部飲んでしまったようです。
「ごめんなさい、ともみさん。このカフェオレは牛乳で割って飲みたいよね。楽しみにしていたのに、本当に申し訳ないわ」
私は慌てて謝罪しました。ともみさんは「気にしないで、何か他の飲み物でも」と言ってくれましたが、私はともみさんがこのカフェオレを心待ちにしていたことを知っています。
「すぐ近所のコンビニで買ってくるから! 5分もかからないから、少しだけ待っていてね」
私はそう言って、慌ただしく家を飛び出しました。この「たった5分」で、ともみさんと私の信頼が大きく揺らぐことになるなんて、このときはつゆにも思わなかったのです―――。 ※1
たったの5分…ママ友を置いてコンビニへ
牛乳を切らしていることに気づいたゆりは、慌ててコンビニへと出かけます。ゆりのことを信頼しているからこそ、家の留守を託し、飛び出してしまいました。
ところが、ある事件が起きてしまったのです…。
「どうしてそこに?」ママ友への違和感
小走りで5分ほど歩いたでしょうか。1つ目の角を曲がろうとしたそのとき、私はポケットに手を入れて、ゾッとしました。なんと財布を忘れたのです。スマホもあろうことか充電切れです。慌てて立ち止まり、家へ引き返すことにしました。
「なんてうっかりしているのかしら」
そう自分に呆れながら、私は再び自宅のドアを開けました。
「ごめん、ともみさん。財布を忘れち…」
言葉が途中で止まりました。
うちのリビングの一角には、生活費や通帳、保険証券などの大切な書類をまとめて入れている、施錠の必要のない小さな木製の棚があります。いつもはリビングの隅にひっそりと佇んでいるその棚の前に、ともみさんが立っていたのです。
私の足音に気づいたともみさんは、ビクッと体を震わせ、驚きに目を見開きました。そして、その大きな瞳と、私の目が合ったのです。一瞬の静寂が、私たちの間に流れました。
「……ゆりちゃん、早かったのね」
ともみさんは、不自然なほど明るい声を出しました。しかし、その声は微かに震えていました。 ※2
家に戻った ゆりは、衝撃的な光景を目にします…。家の生活費などを仕舞っている棚の前に、ともみが立っていたのです。しかも、明らかに動揺した様子。
ゆりは、平静なふりを装いますが、内心穏やかではありません。
まさか…ママ友への疑惑が確信へ
そして、私は見逃しませんでした。ともみさんが、何かを素早く、右手のポケットに隠したのを。その手つきは、あまりにも手慣れた、淀みのない動作でした。
私の心臓は、ドクドクと不規則な音を立てていました。頭の中は真っ白で、何も考えられません。私は、とっさに、口から出た言葉をそのまま口にしました。
「あ、ごめんね。あのカフェオレ、よく考えたら、家にあるスキムミルクでも飲めるなと思って…」
それが、私がその場で絞り出せた、精一杯の「言い訳」でした。ともみさんが棚の前で何をしていたのか、何をポケットに隠したのか、その真実を問いただす勇気が、私にはありませんでした。
長年の友情、信頼、そして「まさか」という気持ちが、私の舌を縛り付けていたのです。ともみさんは「よかったわ」と安堵したような表情を見せ、すぐに元のソファに戻りました。
結局、私たちは脱脂粉乳で割ったカフェオレを飲みました。そのカフェオレは、いつものように美味しかったはずなのに、私の口には砂を噛むような味が広がりました。
その間、ともみさんは、先ほどのできごとなどなかったかのように、映画の話や幼稚園での息子の様子などを楽しそうに話していましたが、私は目の前の彼女の言葉に、全く集中できませんでした。 ※3
ゆりの目の前で、ポケットに何かを入れたママ友…。あまりにも大胆な行動に、驚きます。そして、信頼していたママ友だったからこそ、ゆりのショックは大きいものでした。
このあと、ゆりは勇気をだしてタンス預金を確認します。すると、1万円減っていることに気づいたのです…。ママ友が犯人で間違えなさそうです。
あなたは、自宅に他人だけを残して出かけてしまったことは、ありませんか?いくら仲がよくても、このシチュエーションは危険ですね。また、普段から金銭を人目につく場所に保管するのもよくありません。改めて、防犯意識を高めるとともに、仲良しのママ友の心に潜む闇にゾッとそるお話です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










