里帰りもできず心細い中妊娠した主人公・ゆり。そんな彼女と似た境遇のともみさんは、数少ない親友になってくれました。そんな彼女との友情は、もう5年も続いていたのですが―――。
妊娠中からそばにいてくれたママ友
私は現在、夫と息子との3人暮らしで、絵に描いたような穏やかな日々を送っています。
会社役員である夫は仕事に忙しいものの、家族を大切にしてくれる優しさがあり、息子は幼稚園で毎日泥だらけになって遊ぶ、元気いっぱいの男の子です。そんな私の日常に、なくてはならない存在がいるとすれば、それは紛れもなくママ友・ともみさんでしょう。
ともみさんとの出会いは、5年前の妊娠・出産時にさかのぼります。実家も義実家も遠方で、いわゆる「里帰り出産」がかなわなかった私は、初めての妊娠と出産を孤独の中で迎えることへの漠然とした不安を常に抱えていました。分娩予約をした小さな産院には、同年代の妊婦さんが少なく、心細い思いで検診に通っていたことを思い出します。
そんなときに出会ったのが、ともみさんでした。同じくらいの週数で、同じように初めての出産を控えているという共通点だけで、私たちはすぐに打ち解けました。
お互いの不安や期待を共有し合ううちに、いつしか「同志」のような感覚を抱くようになっていたのです。
特に驚いたのは、予定日の近さ。私たちはわずか2日違いで出産を果たしました。同じ産院で、ほぼ同時に初産を経験した私たちはこの偶然にも後押しされ、親友と呼べるほどに絆を深めていきました。
退院後も、初めての育児に奮闘する中で、互いに情報交換をし、助け合いながら、必死に頑張ってきました。夜泣きに疲れ果てたとき、離乳食の進め方に悩んだとき、どんな小さなことでもともみさんは親身になって話を聞いてくれたのです。
夫も公認の、文句のつけようのない人
ただ、私たちの生活には少しだけ違いがありました。私の夫は会社役員ということもあり、経済的には比較的恵まれていました。
一方、ともみさんの夫は、職を転々とされることが多く、ともみさんが時折見せる表情から、金銭面で苦労されているのだろうということは、なんとなく察していました。
それでも、ともみさんはいつも明るく、息子とともみさんの娘も同い年で同じ幼稚園、同じ児童館に通うようになった今も、私たちは毎日、幼稚園のお迎えのついでに井戸端会議をするのが日課となっています。
夫も、私とともみさんが楽しそうに話している姿を見るたびに、「いいママ友ができてよかったな」と、心から言ってくれていました。
私にとって、ともみさんは、この地での生活において、家族以外で最も信頼できる、大切な友人だと思っていました。
そんなある週末のこと。夫が「子どもたちを連れて、話題の映画を見に行こう」と提案してくれました。夫、息子、ともみさんの夫、ともみさんの娘、の4人で。これには、私たち母親組をゆっくりさせてあげようと意図があり、とてもうれしかったです。
この機会に、私とともみさんは「2人でゆっくりお茶をしよう」という話になりました。私の家で、気兼ねなくおしゃべりを楽しむ計画です。
せっかくのお茶会なのに…うっかりしてしまい
当日、賑やかな父子4人を見送った後、私はともみさんと二人、リビングのソファに腰を下ろしました。
「今日はありがとうね、ゆりちゃん。久しぶりにこういう時間を持てて嬉しいわ」
ともみさんは、心底リラックスしたように微笑みました。
「こちらこそ、誘ってくれてありがとう。ちょっと奮発して買った、おいしいカフェオレがあるのよ。牛乳で割って飲むタイプなんだけど」
私はそう言って、キッチンの棚から、少し高級な瓶入りのカフェオレベースを取り出しました。ともみさんが目を輝かせて「それ、CMで見て気になってたの!」と言ってくれたので、私も嬉しくなりました。
早速、冷蔵庫を開けました。しかし、ここで一つの問題に気がついたのです。
「あら…牛乳を切らしているわ」
私は思わず声を上げました。昨夜、息子が寝る前に全部飲んでしまったようです。
「ごめんなさい、ともみさん。このカフェオレは牛乳で割って飲みたいよね。楽しみにしていたのに、本当に申し訳ないわ」
私は慌てて謝罪しました。ともみさんは「気にしないで、何か他の飲み物でも」と言ってくれましたが、私はともみさんがこのカフェオレを心待ちにしていたことを知っています。
「すぐ近所のコンビニで買ってくるから! 5分もかからないから、少しだけ待っていてね」
私はそう言って、慌ただしく家を飛び出しました。この「たった5分」で、ともみさんと私の信頼が大きく揺らぐことになるなんて、このときはつゆにも思わなかったのです―――。
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あとがき:妊娠時代からのママ友との絆は、強い!
人生の転換期ともいえる妊娠出産は、女性からするととにかく心細いもの。そんな時、同じ境遇の友人がいるととても心強いですよね。
それだけ素敵な友人なら、主人公がここまで心を寄せるのも頷けます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










