🔴【第1話から読む】はじめての違和感|もう誘いたくないママ友
保育園で知り合った里奈と真由は、子ども同士の相性もよく、自然と距離を縮めていく。里奈の提案で真由の自宅でプール遊びをすることになるが、その1日を終えたあと、真由の心には言葉にできない違和感が残って―――。
保育園ではじめてのママ友ができた
保育園に入園して、少しだけ生活が落ち着いた頃。送り迎えの時間帯に、同じクラスの子の名前と顔がようやく一致し始めて、挨拶だけだった保護者同士の会話も、少しずつ長くなっていく。
「陽向くんのお母さん!」
声をかけてきたのが、里奈さんだった。明るくて、話しやすそうで、いつも笑顔の人。隣に立つ娘の結菜ちゃんは、くりっとした目でこちらを見上げていた。
「あ、お世話になってます!」
「こちらこそ。結菜の母です」
それが、里奈さんとの最初の会話だった。それからというもの、園で顔を合わせるたびに少し話すようになった。子ども同士も気が合うようで、迎えの時間になると、陽向と結菜ちゃんは自然と並んで遊んでいることが多かった。
「今日も一緒におままごとしてたみたいですね」
「うちでもよく陽向くんの名前が出てきますよ」
そんなやりとりが、なんだか嬉しかった。保育園に入ってからできた“ママ友”。
これからも仲良くしたいと思っていたのです。
自宅プール遊びで感じた小さなズレ
梅雨が明けて、本格的な夏がやってきた頃。ある日の送り迎えの帰り道、何気なくこんな話をした。
「この前、家に小さいビニールプールを買ったんです。陽向が喜んじゃって」
「えー、いいな!プールあると助かりますよね」
そのとき私は、何の気なしにこう言ったんです。
「良かったら今度一緒にやります?うちで」
「え~やった!じゃあ、今度のお休みとかどう?」
まさか面倒なことになるなんて思わず、軽く誘ってしまったことを、私はのちに後悔することになる。
そして約束の日、午前中から気温は高く、プールもすぐにぬるくなりそうだった。陽向は朝から落ち着きがなく、何度も「まだ?」「結菜ちゃん来る?」と聞いてくる。
インターホンが鳴ったのは、約束の時間ぴったりだった。ドアを開けると、里奈さんと結菜ちゃんが立っていた。軽く手を振りながら、「おじゃましまーす」と笑う。
その時、私は里奈さんの手荷物がずいぶん少ないことに目がいった。
(え、荷物それだけ?バスタオルとかは…?)
一瞬、ほんの一瞬だけ、心が引っかかった。小さなランチトートのようなバッグと、着替えを入れたエコバッグだけで、タオルも小さなフェイスタオルだけ。もちろん、手土産なんて入っていない。
子どもたちはすぐにプールへ向かい、きゃあきゃあと声を上げて遊び始めた。里奈さんはその様子を見ながら、リビングのソファに腰を下ろした。
「いやー、クーラー効いてて助かる」
「あ、飲み物どうぞ!」
用意していた麦茶を出すと、里奈さんは当然のように飲み、続けて話し始めた。
「真由さんって専業?それともパートなの?」
「今は午前中だけパートだよ」
「へぇ〜そうだったんだ、私は日によってはシフトが長くて預かり保育の日もあって、ヘトヘトだよ。真由さんいいな」
その言い方に、少しだけ引っかかる。でも、悪気はないんだろうと、自分に言い聞かせた。
プール遊びが終わると、今度はおやつ。着替えさせる最中、やっぱり結菜ちゃんのタオルは小さすぎて髪を拭ききれず、うちのバスタオルを貸した。里奈さんは「ごめ~ん」と言って借りていたけれど、借りたタオルは床に放置されていて、ちょっとモヤモヤ。
おやつは用意していたゼリーとせんべいを子どもたちに出したが、里奈さんは何も出さなかった。この日は午前中だけ遊ばせる予定だったから仕方ないかと思ったけれど、私なら手ぶらではお邪魔しない。
「お昼になるし、そろそろ片付けようか」
「え?本当だ、もうこんな時間だね。あ、じゃあ私たちはこの辺で」
そう言って、里奈さんはあっさり立ち上がる。
「今日はありがとうねー!楽しかった!」
え、プールを出したままなのに片付けもなし?
玄関で手を振って颯爽と子乗せ自転車で走り去る里奈さんを見て、なんとも言えない心境になった。
楽しかったはずなのに残った違和感
ドアが閉まったあと、急に家の中が静かになった。
散らかったリビング。濡れた床。使い終わったコップ。陽向は満足そうに「楽しかったね」と言ったけれど、私はなぜか素直に笑えなかった。
(あれ……?)
何が、というわけじゃない。ただ、胸の奥に、小さな違和感が残っていた。
誘ったのは私なんだけど…準備したのも、片付けるのも、全部こっち。少しだけ“使われた”ような気持ちになる。考え過ぎだろうか?
(ママ友なんて、こんなものなのかも。私がお邪魔することもあるだろうし)
そう思おうとしながらも、心は落ち着かないままだった。
(……なんだろう、この感じ)
まだ名前もついていない、そのモヤモヤを抱えたまま、私は黙々とプールを片付けた―――。
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あとがき:違和感は、気づいた時点ですでにサイン
ママ友との関係は、はっきりとしたトラブルがなくても、心に引っかかる瞬間が生まれることがあります。「嫌じゃない」「悪い人じゃない」──そう思うからこそ、その違和感を無視してしまいがちです。
第1話では、そんな言葉にならない感情の芽を描きました。この小さな違和感が、今後どのように形を変えていくのでしょうか。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










