🔴【第1話から読む】はじめての違和感|もう誘いたくないママ友
保育園で知り合い、真由の自宅でプール遊びをした里奈との関係は、その後も続いていた。しかし、訪問はいつも真由の家ばかり。会話も里奈の愚痴が中心で、真由は次第に「使われているのでは」という疑念を抱き始める。
なぜか、いつも「うち」ばかり
あの日のプール遊び以降、里奈さんはやけに距離を縮めてきた。送り迎えのたびに声をかけられ、世間話が終わると、決まって同じ流れになる。
「ねえ、今度また遊びに行ってもいい?」
「この前、結菜が陽向くんのおうちにまた行きたいって言っててさ」
あの日は少しモヤモヤしたけど、過ぎてしまえば「まあ、いいか」と思っていた。陽向も結菜ちゃんと遊ぶのを楽しみにしているし、片付けもそれほど大きな負担ではない。
ただ、うちで会う回数が増えるにつれて、胸の奥に小さな疑問が積み重なっていった。なんで、いつも“うち”なんだろう、と。
聞き役に回り続ける関係
何度か訪問してきても、里奈さんの態度に変化はなかった。いつも手ぶらで来て、子どもたちは遊び、大人はリビングで過ごす。うちで過ごすことに慣れるうちに、里奈さんのマシンガントークには拍車がかかるばかりだった。
「聞いてよ、うちの義母がさ」
「この前もさ、園のママがさ」
「ほんと、みんな自己中だと思わない?」
息継ぎもないようなマシンガントーク。私は相槌を打ちながら、ひたすら“聞く側”に回っていた。
「そうなんだ」
「大変だね」
「それは嫌だね」
言葉は自然と、同じものばかりになる。話題はいつも、里奈さんの不満や愚痴、他人への評価だった。私に話を振られることは、ほとんどない。たまに何か話そうとしても、すぐに話題を横取りされてしまう。
里奈さんとの会話では、少しずつ心が削られていく感覚があった。
(私、何しにここにいるんだろう……)
ふと、そんな考えが浮かぶ。それでも、表に出すことはなかった。子どもが大好きな友達の親と波風を立てたくなかったし、「ママ友なんて、こんなもの」と自分に言い聞かせていた。
でも、ある日、何度目かの訪問の帰り際、里奈さんが何気なく言った。
「やっぱり真由さん家って落ち着く~」
「居心地いいし、子どもも自由に放せるしさ」
その言葉に、胸がざわっとした。
――居心地がいい?
――自由にできる?
片付けられた部屋。用意されたおやつや飲み物。
その準備をしているのは私なのに、その結果として提供されたものが狙いで遊びにきているように感じてしまった。
私は、ただの“都合のいい場所”として見られているんじゃないか。
そんな思いが、はっきりと輪郭を持ち始めていた―――。
気づいてしまった、本当の理由
ある日、私は思い切って言ってみた。
「ねえ、今度さ……里奈さんのおうちにも、遊びに行ってみたいな」
一瞬、空気が止まった。里奈さんは目を瞬かせ、少しだけ視線を逸らす。
「え?あー……うち、ちょっと散らかってるし……」
「全然気にしないよ」と続けようとした私の言葉を遮るように、里奈さんは笑った。
「ちょっと考えてみるね」
その声は、やけに軽かった。
そして、それきりだった。
次の日も、その次の日も、その話題が出ることはなかった。
ああやっぱり、里奈さんは私に会いたいんじゃなくて、私の家で過ごしたいだけなんだ。
それに気づいた途端、これまで曖昧だった違和感が一気にふくらむ。
私は聞き役でも、便利な場所でもない。
対等な関係だと思っていたのは、私だけだったのかな。
―――もうわが家には誘いたくない。
そんな気持ちがはっきりと心の中に浮かんでいた。
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あとがき:対等じゃない関係に、名前がついた日
「ママ友だから」「波風を立てたくないから」と我慢してしまう関係は、少なくありません。けれど、どちらか一方だけが負担を背負い続ける関係は、いつか必ず歪みが生まれます。
第2話では、真由がその歪みに気づいてしまった瞬間を描きました。まだ何かが起きたわけではない。でも、もう同じ気持ちではいられない。
その静かな変化こそが、この物語の大きな転換点です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










