「神田さん、妹がお世話になっています。……『2年ぶりの彼女』なんですってね?」
私が突き放すように言うと、彼は何か言おうとしますが、言葉になりません。香澄が凛とした声で続けました。
「全部聞いたよ。奥さんがいることも、お子さんがまだ小さいことも。私を独身だと言って騙して、お姉ちゃんの親友を裏切って……。あなた、人間として最低だよ」
「か、香澄、違うんだ!里奈とはもう冷え切っていて、離婚の話も出てて……!」
「嘘つかないで。里奈からは、あなたがよく家事をしてくれるって、感謝の言葉しか聞いてない。離婚の話なんて一度も出てないでしょ?」
私が一喝すると、神田さんはついにうなだれました。
「別れてください。今すぐ。二度と私の前に現れないで」
香澄の断固とした拒絶に、彼は成す術もなく、ただ震えていました。 ※1
二重の裏切りをした男に制裁を!
妻を裏切り不倫をした挙句、相手には「独身」とウソをついていました。妹・香澄は、危うく不倫の加害者になるところだったのです。
香澄は、別れを告げますが、これで終わりではありません。親友も妹も傷つけられた咲良は、さらに追い打ちをかけます。
逃がさない!さらなる追撃を
神田さんは、逃げ出すように立ち上がろうとしました。でも、私はそれを許しません。
「座って。まだ話は終わってない」
私の冷徹な声に、彼はビクッと肩を揺らして座り直しました。
「今回のこと、里奈にはまだ言わないであげる。でも、条件があります」
神田さんは縋るような目で私を見ました。
「今後の態度次第では、全部言います。少しでも里奈や子どもをないがしろにしたり、また他の誰かと浮ついた真似をしたりしたら……その時は、この事実を里奈や周囲の方にもバラしますよ」
私は机の上に、録音中のスマホを置きました。 ※2
親友・里奈のことを考え、不倫の事実を伏せることにした咲良。ですが当然、条件付きです。
そして香澄も、「慰謝料はいらない」と言い、その代わり「一生かけて家族に尽くしてください」と、厳しい言葉をかけます。
ようやく訪れた平穏と覚悟
その後、里奈から届くLINEには「パパは前よりずっと育児に積極的になってね…」といううれしそうな言葉が並んでいます。 それが神田さんの「贖罪」なのか「恐怖」によるものなのかは分かりませんが、里奈が幸せなら、今はそれでいいと思っています。
香澄はその後、仕事を辞めて別の会社に転職しました。
「次は、ちゃんとお姉ちゃんに紹介できる人を連れてくる!」
そう言って笑う妹の顔には、もう迷いはありませんでした。世の中には、知らない方がいい真実もある。 でも、その真実を知ってしまったからこそ、守れる平和もあるのかもしれません。
私はこれからも、里奈の相談に乗りながら、この秘密を胸にしまって生きていくつもりです。でももし親友に何かあれば、私はいつでも鬼になる覚悟があります。 ※3
今回、不倫騒動は当の本人・里奈には告げないことを決めた咲良。ですがそこには、並々ならぬ覚悟を備えていました。
不倫だと知り、すぐに別れた妹・香澄。また、最愛の妹と親友のために、全力で闘った咲良。ふたりとも、かっこいい女性ですね。
もしも、身近な人の裏切り行為が発覚したら?「世の中、知らないほうがいいこともある」という言葉に、ドキッとします。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










