年賀状のマナー
そもそも年賀状の「年賀」とは、日頃お世話になっている方々に感謝の気持ちを込め、新年を迎えるに際してあらたまって行う挨拶のことです。
近年では、SNSの普及により、ハガキを使って年賀状を送る人が減少していると言われていますが、やはりハガキでの年賀状が届くと嬉しいものですよね。
しかし、ハガキでの年賀状には、送る際にマナーがあります。例えば、年賀状はおめでたいことなので、「去年」などの忌み言葉を使ってはいけないというものがあります。これは「去る」ことを連想させる忌み言葉なので「去年」ではなく、「旧年」や「昨年」を使いましょう。
このように、意外と知らなかったというようなマナーもあると思います。年のはじめのご挨拶ですので、ぜひマナーを守って素敵な年賀状を書いてみましょう。
出していない人から年賀状が届いたら?
年賀状を出していない人や、出し忘れてしまった人などからハガキが届いたときは、返事を書かないことがもっとも失礼にあたります。すぐに返事を送るようにしましょう。
その際に、注意しなければならないのは、松の内と呼ばれる1月7日までに届けられれば年賀状として返信しますが、7日までに間に合わなそうであれば、寒中見舞いとして送るということです。送るにあたって、年賀状の発送が遅れた理由を書く必要はありません。
文例
- 「新春の御祝詞をいただきながらご挨拶が遅れ、まことに申し訳ございません。」
- 「ご丁寧な年賀状をいただきありがとうございました。ご挨拶が遅れましたこと深くお詫び申し上げます。」
一般的には、頂いた年賀状に対するお礼の気持ちを添えますが、目上の人などに送る場合は、それがかえって失礼になるからと、普通の年賀状として書く方が良いともいわれます。
被災地に年賀状を出すときは?
地震などの自然災害で被災した方に年賀状を出そうとした場合、失礼にならないか、そもそも出してよいものか悩む方も多いのではないでしょうか。
避難生活の日々では年賀状どころではなく、おめでとうと新年を祝う気持ちになれない方も多いと思います。不安な日々の中で頑張って生活している人にとっては、「頑張って」との励ましもかえって辛く思われるかもしれません。
その為、年賀状としてではなく、年内にお見舞い状として送るか、時期を遅らせて年明けに寒中見舞いを送るのもよいと思います。年が始まった挨拶状として送るなら、「年の始めのご挨拶を申し上げます」といった挨拶語を書き、被災地の復興と幸せを願った内容を記します。「賀」「寿」「おめでとう」などの祝いの語は使わずに送りましょう。
しかし、中には新年を祝う年賀状が励みになる方もいるかもしれません。送り先の相手に少しでも元気になってもらいたいからと、あえて通年通りの年賀状を送るという考えもあります。その場合は、普段通りの年賀状を送りましょう。
文例
- 「新年のご挨拶を申し上げます」
- 「幸多き年でありますように」
- 「新しい年が明るい年でありますように」
- 「一陽来復」
被災地への年賀状はどうすればいちばん良いのかと、悩んでしまいますが、相手の立場を自分の身に置き換えて、考えてみることが大切です。相手方のことを思いやり、気遣って年賀状を送りましょう。
喪中欠礼状をもらったら?
喪中欠礼状とは、年内に身内の不幸があり、年賀状を出すことができない場合に出すお知らせのことです。送られてくる時期については、一般的に、年賀状準備を始める11月末から12月初旬にかけてです。
喪中欠礼状をもらったら、年賀状を送ることは控えて、普通の手紙として返事を出しましょう。または、松の内があける1月8日以降に寒中見舞いを送ります。
文例
「年内に返事を書く場合」
喪中お見舞い申し上げます。
年賀欠礼のお知らせをいただき、〇〇様のご他界を知って驚いております。
存じ上げず、お悔やみの言葉も申し上げられませんでしたことをお許しくださいませ。
改めて、お悔やみを申し上げますとともに、〇〇様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
ご服喪中につき、年頭のご挨拶は控えさせていただきますが、
どうぞお身体を大切に、新しい年をお迎えくださいますようお祈り申し上げます。
平成〇年〇月〇日
「1月7日以降に寒中見舞いとして返事を書く場合」
寒中お見舞い申し上げます。
ご服喪中につき、年頭のご挨拶は控えさせていただきます。
この度の〇〇様のご他界を知って驚いております。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
お気を落とされていることと存じますが、寒さ厳しい折からくれぐれもお体を大切にお過ごしください。
平成〇年〇月〇日
最近では、「喪中見舞い」として返信することも多いようです。喪中見舞いとは、喪中期間を過ごしている遺族を気遣い慰めるという意味から、送る期間にきまりはありません。ですが、寒中見舞いは1月5日~2月4日の間と出す時期が決まっているので注意が必要です。
喪中と知らずに年賀状を出してしまったら?
年賀状の投函と行き違いになり、喪中であることが年内に分かったときは、年が明ける前に届くように急いでお詫びの連絡を入れましょう。その際、時候の挨拶は書かずに、まずは年賀状を送ってしまったという自分の非礼をお詫びする言葉を書くようにしましょう。その上で、お悔やみを兼ねた書状を寒中見舞いという形で、1月7日過ぎに送りましょう。
また、年賀状を送った相手から、年明け後に寒中見舞いなどで喪中の旨を知らされたときは、すぐにお悔やみとお詫びを兼ねた書状で返信しましょう。いずれの場合も、「賀」などのおめでたい文字は避けます。
文例
「すぐにお詫びの連絡をする場合」
このたびはご丁重なご挨拶を頂き、○○様ご他界を知りました。
お病気のことも少しも存じませず、御見舞もお悔やみも申し上げず失礼いたしましたことお許しくださいませ。
お悔やみが遅れましたことをお詫び申し上げますとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
ご家族の皆様におかれましてはさぞかしご傷心のことと存じますが、厳寒の折から、何卒お体を大切にお過ごしください。
平成〇年〇月〇日
「1月7日以降に寒中見舞いとして返事を書く場合」
寒中お見舞い申し上げます。
厳寒の侯、いかがお過ごしでしょうか。
先日は〇〇様の喪中を存じあげずに年賀状をお送りし、大変失礼いたしました。ご家族の皆様にも心よりお詫び申し上げます。
寒さ厳しい折からくれぐれもお体を大切にお過ごしください。
平成〇年〇月〇日
寒中見舞いとして送る場合は、2月4日までに送りましょう。どちらにしてもいただいたらすぐにお返事をするのがマナーですので、早めの返信をこころがけましょう。
年賀状はいつからいつまでに出せばよい?
年賀状は、松の内(一般に1月7日まで)に届けば失礼でないと言われています。松の内とは、正月の松飾り(門松)を飾っておく期間を指します。 7日を過ぎてしまったら、2月4日の立春までは「寒中見舞い」として出すと良いでしょう。
年賀状の投函受付は、12月15日から開始されます。それ以前に投函すると通常郵便の流れで届いてしまうので早めに出す場合は注意しましょう。郵便局のホームページによると元旦に届くようにするには、12月25日までに投函すれば、基本的に元旦に届くようです。
年賀状の項目と書き方
年賀状において、賀詞(がし)や添書(そえがき)、イラストや写真を載せる面を、文面と呼びます。文面の向きは、宛名を書く面の方向に合わせます。
一般的に、年賀状の文面は「賀詞」「添書」「年号・日付」「ひと言メッセージ」という4つの要素で構成されています。
1.賀詞
賀詞とは、年賀状の冒頭に書かれるお祝いの言葉のことです。今ではすっかり新年のあいさつ文として定着しています。例えば、「迎春」のような漢字2文字以下のものや、「謹賀新年」などの漢字4文字の熟語、文章や英文など賀詞には多様な種類があります。
注意点としては、賀詞を重複して使うのはマナー違反になるので、重複しないようにしましょう。例えば、よく目にする「新年あけましておめでとうございます」は、「新年」と「あけまして」が重複しているので間違いです。どちらか一つを使用するようにしましょう。
また、基本的にはどんな賀詞を使用しても自由ですが、年賀状を送る相手によっては選ぶ必要があります。例えば、2文字や1文字の賀詞は4文字の略式とされ、目上の方に送るには失礼にあたるので注意しましょう。
2.添書
添書とは、日頃お世話になったことへのお礼や疎遠になっていることへのお詫び、感謝の気持ちやこれからも変わらないお付き合いをお願いする内容などを書くことです。
注意点としては、添書には句読点を使わないようにしましょう。これは、区切りをつけないために句読点は年賀状に用いないとされているためです。文が長くなった場合は、改行して書きましょう。
また、文の最後は、送る相手の幸せや繁栄、健康を願う言葉で結ぶのが一般的です。結びの言葉は、目上にあたる方には必ず書くようにしましょう。
3.日付・年号
年賀状の最後には、日付と年号を表記します。その際、元号と西暦どちらでもかまいません。ただし、「1月1日元旦」という表記をときどき見かけますが、元旦は1月1日の朝という意味があるのでこの書き方は誤りです。
これでは意味が重複してしまいますので、どちらか一つにしましょう。また、1月1日に到着しないことが予めわかっている年賀状には、元旦とは書かないように配慮しましょう。
4.ひと言メッセージ
印刷された年賀状でも、必ず最後に手書きでひと言メッセージを添えるのがよいでしょう。その際、印刷されている文章と意味が重複しないよう注意しましょう。
年賀状は家族が見ることも多いので、添えるメッセージは内容には配慮し、楽しく明るい話題が適しています。仲の良い関係の人でも、「昨年は体調を崩してしまって」などの暗い話題は避けて、新年にふさわしい文章を送りましょう。
手書きでのメッセージがひと言入っているだけで、もらった人はうれしいですよね。近況などを自分の言葉で、ていねいに書きましょう。
喪中欠礼はがきはいつ誰に出す?
喪中欠礼はがきとは、通常、親・兄弟・子供などが年内に亡くなった場合に、「喪中なので、年賀状は出せません」という内容の知らせを書いて先方に送るハガキのことです。
年賀状を出せないことを知らせるわけですから、先方が年賀状を用意する前に到着するように送ります。一般的には、年賀状準備を開始するのは12月に入ってからなので、それよりも前の11月に届くよう出すのが、先方にとっても親切な対応です。
喪中欠礼はがきを出す相手は、友人、知人、仕事の関係者などです。親兄弟や常に交流のある親族には出さないことが多いようです。
仕事上のお付き合いで故人と面識のない方や、気遣いをさせたくない相手には喪中を知らせずに、平年通り年賀状を送ることもあります。送る範囲としては、必要と思われる範囲のみにしましょう。故人と自分の関係性や、故人と喪中欠礼状を送る相手との関係を考慮して送りましょう。
写真入り年賀状の注意点
家族の写真やペットの写真、旅行の写真を年賀状に印刷して作る方も多いのではないでしょうか。この写真入り年賀状ですが、送る際に注意点がありますのでみていきましょう。
まず、写真入り年賀状は、「カジュアル仕様」であることを踏まえたうえで先方に送りましょう。親しい関係性であれば、写真があることによって親近感を感じやすく、わかりやすい近況報告になってよいのですが、上司や、目上の方、仕事上でしかお付き合いしない相手には、礼儀を軽んじている、そもそも写真など興味はないなどと、印象を悪くしてしまう場合があります。
もちろん、一口に「目上の方」といっても、家族ぐるみでの付き合いがある上司もいるでしょうし、教え子の成長や近況報告を楽しみにしている恩師もいるでしょう。そういう相手であれば、写真入りの年賀状を送っても差し支えないと思います。
ただ、あくまでも仕事上での関係性しかない上司や取引先、先生に対しては、写真入りの年賀状は避けたほうがよいでしょう。相手との関係性を見極めて写真入りにするか選ぶようにしましょう。
次に、写真に黒枠は使ってはいけません。デザイン上、写真に枠を付けることがありますが、黒枠は遺影を想起させるため、縁起が悪いとされています。年賀状は特に縁起の良し悪しを気にしますから、注意が必要です。
年賀状マナーを知って素敵な年賀状を書きましょう
年賀状のマナーですが、意外に知っているようで知らないことが多かったのではないでしょうか。せっかく時間をかけて準備するものなので、マナーに配慮した年賀状を送りたいですよね。
これから、準備をはじめるという方は、こちらで紹介したマナーを参考に、ぜひ素敵な年賀状を書いてみてください。皆さんに素敵な新年が訪れますように。