卵管閉塞とは?
卵管閉塞とは、何らかの理由で卵管が詰まっている状態のことです。卵管は精子と卵子の通り道で、卵巣から排卵した卵子を卵管内に吸い上げ、受精卵を輸送する役割を持っています。
卵管が詰まってしまうと精子や受精卵が通過しにくくなるため、不妊の原因となることがあり、卵管の病変によって起こる不妊を「卵管性不妊」と呼びます。
卵管は左右1本ずつあり、片側だけ詰まる「片側卵管閉塞」と両側が詰まる「両側卵管閉塞」があります。両側卵管閉塞になると自然妊娠は難しいですが、体外受精による妊娠が可能です。
- 井上裕美(監)「病気がみえるvo.9 婦人科・乳腺外科」P234(メディックメディア,2015年)
- セントマザー産婦人科医院「不妊症の原因」(https://www.stmother.com/cause/cause6/,2018年3月15日最終閲覧)
卵管閉塞の原因
卵管閉塞の原因の一つにクラミジア感染症が挙げられます。細菌によって卵管の中やその周辺に炎症が広がり、卵管炎を起こすことで卵管閉塞が起こります。
また、子宮内膜症の病変により卵管の周辺に癒着が起こることで卵管閉塞が生じる場合もあります。自覚症状はなく、気づかないうちに卵管閉塞や癒着を起こしていることがあります。
- 日本産科婦人科学会「不妊」(http://www.jsog.or.jp/public/knowledge/funin.html,2018年3月15日最終閲覧)
- セントマザー産婦人科医院「不妊症の原因」(https://www.stmother.com/cause/cause6/,2018年3月15日最終閲覧)
- 英ウィメンズクリニック「不妊治療の知識」(http://www.hanabusaclinic.com/knowledge/2008/11/17/post_29/,2018年3月15日最終閲覧)
卵管閉塞を調べるための検査
不妊の原因と調べる子宮卵管造影検査で卵管閉塞の有無を確認することができます。検査は子宮口から子宮内に造影剤を注入し、造影剤が子宮や卵管まで広がる様子を観察し卵管の通過性を調べます。造影剤が卵管内を通過するため、検査を行うことで卵管の閉塞が改善する可能性があります。
しかし、検査で卵管の通過性が認められても、卵管周辺の癒着が生じていて卵管機能の障害が起こっていることがあるため、腹腔鏡検査で直接卵管内の状態を観察する場合があります。
- 美加レディースクリニック「不妊症外来【不妊症の検査】」(http://www.mikalady.jp/sterility/index2.html,2018年3月19日最終閲覧)
- 春木レディースクリニック「子宮卵管造影検査が心配な方へ」(http://www.haruki-cl.com/shikyurankanzoei/,2018年3月19日最終閲覧)
- 井上裕美(監)「病気がみえるvo.9 婦人科・乳腺外科」P.235(メディックメディア,2015年)
卵管閉塞の治療法
卵管閉塞は主に以下のような治療方法があります。症状が軽度の場合から両側の卵管が完全に閉塞してしまっている状態のものまで、症状に合わせた治療方法を選択する必要があります。
片側卵管閉塞の場合
片側卵管閉塞の場合は自然妊娠が可能ですが、治療することによりタイミング法や人工授精で妊娠できる可能性が高くなります。卵管造影検査後に様子をみながらタイミング法や人工授精を試みることがあります。
子宮鏡下選択的卵管通水術(しきゅうきょうかせんたくてきつうすいじゅつ)
子宮卵管造影検査で卵管閉塞が確認された場合に子宮鏡下選択的卵管通水術を行うことがあります。直径3mm程度の細い内視鏡を膣から挿入し、1mmに満たないほど細いカテーテルを卵管に入れて生理食塩水や色素水を注入して卵管を通過させてつまりを解消する方法です。
卵管造影検査で卵管閉塞の疑いがあると診断されても、子宮鏡下選択的卵管通水術で卵管の通過性が確認できることがあります。
卵管鏡下卵管形成術(らんかんきょうからんかんけいせいじゅつ)
卵管鏡下卵管形成術(FT)は、細いカテーテルを膣から子宮内に挿入し、水圧を調整したバルーンを卵管内に入れて詰まっている部分を押し広げる方法です。バルーンを引き戻す際に水を流しながら卵管内を観察していきます。痛みを伴うため、手術の際は静脈麻酔をしてから行います。
日帰りでの手術が可能ですが、術後しばらくして再度閉塞が起こる可能性があります。また、術後約6ヶ月経過しても妊娠に至らない場合は、体外受精を考慮する必要があります。
両側卵管閉塞の場合
両側の卵管が詰まっている場合は、子宮鏡下選択的卵管通水術や子宮鏡下選択的卵管通水術を行った上でタイミング法もしくは人工授精を試みます。
治療によって妊娠に至らない場合は、体外受精を選択する方法があります。体外受精は、卵巣から卵子を取りだし体外で受精させて受精卵を子宮内に戻す方法のため、卵管に詰まりがあっても妊娠できる可能性があります。
ただし、年齢や閉塞状況によっては、卵管通水術や卵管形成術を行わず直ちに体外受精を行う場合もあります。
- さくらウィメンズクリニック「卵管形成手術」(http://sakura-urayasu.jp/examination/rankankeisei/index.html,2018年3月15日最終閲覧)
- セントマザー産婦人科医院「不妊症の原因」(https://www.stmother.com/cause/cause6/,2018年3月15日最終閲覧)
- 扇町ARTレディースクリニック「妊娠と卵管閉塞について」(http://www.olc.ne.jp/_m/blog02/2017/02/2210/,2018年3月15日最終閲覧)
- 中央レディースクリニック「不妊症とは」(https://www.chuo-lc.jp/funin6,2018年3月16日最終閲覧)
卵管閉塞の治療後に妊娠した方の体験談
卵管閉塞がわかってから妊娠に至るまでの道のりはひとそれぞれです。卵管閉塞の治療を経て妊娠した方の体験談をご紹介します。
片方卵管閉塞を起こしていたが自然妊娠した
ですが今二人目妊娠中ですが二人とも自然妊娠です。
片方閉鎖してたとしても妊娠の確率は半分になるわけではないそうです。
両方通ってるよりはもちろん確率は下がりますが。
片方の卵管が閉塞を起こしていても自然妊娠する可能性があるというのはありがたいものです。卵管が片側閉塞していると、妊娠の確立が半分になるというイメージを持つ方がいるかもしれませんが、そうではないようです。
両側卵管閉塞で体外受精をした
自然妊娠を希望していたけれど体外受精を行ったという方の体験談です。できるだけ自然に妊娠したいという希望があっても、妊娠できない場合もあります。医師に相談してできるだけ希望をかなえられるように治療を進めていけるとよいですね。
卵管閉塞は治療することで妊娠できる可能性があります
卵管閉塞は卵管に炎症が起こる卵管炎などが原因で起こりますが、無症状のため不妊治療の検査で初めて知ることがあります。もし卵管閉塞がわかったら医師の指示のもと適切な治療を受けるようにしましょう。
卵管は片側のみ正常でも自然妊娠が可能な場合がありますし、もし両側が卵管閉塞を起こしていても体外受精を選択するなどして妊娠に至る可能性もあります。症状を把握した上で自分に合った治療方法を選択できるとよいですね。
また、卵管閉塞の原因となるクラミジア感染も子宮内膜症も、早期発見や予防ができる病気です。日頃から定期的に婦人科検診を受けて、早い段階からリスクを作らないように心がけておきましょう。