野菜ジュースを調理に使用する効果を検証
2018年4月、株式会社味香り戦略研究所(本社:東京都中央区/代表取締役:菊池 健司さん)が野菜ジュースを調理に使用する効果を分析し、味の違いを比較した調査結果を発表しました。
レシピサイトなどでも取り上げられ、近年注目の集まる野菜ジュースアレンジ。野菜の価格変動にも左右されにくく、また時短調理にも役立つというメリットがあります。野菜ジュースを調理に使ったときの効果について興味深い調査内容を見ていきましょう。
生野菜、トマト缶、野菜ジュースを使った調理では?味の違いを比較
健康を考えて日々の食事には多くの野菜を取り入れたいと思いつつも、家庭での調理にたくさんの野菜を使うのはなかなか難しいもの。そんな野菜を手軽で安価に摂取する方法の一つとして、野菜ジュースを使った調理がレシピサイトなどでも紹介されています。
野菜ジュースを使うと調理にはどのような違いが出るのでしょうか。今回の調査では、生野菜、トマト缶、そして野菜ジュースを用いて調理した場合、それぞれを同じレシピで作ることによってどの程度味の違いがでるのかを検証したものとなっています。
調査方法
実験ではジャガイモ、ニンジン、タマネギで作ったミネストローネに生野菜、トマト缶、野菜ジュースを加えて味の変化を検証します。
ミネストローネは野菜からのだし汁を検証するため、コンソメや油、味付けの塩とコショウは添加せずに調理。サンプルとしてミネストローネを等分し、それぞれに生野菜、野菜ジュース、トマト缶を加え、水100ccを加えて煮立てた後、常温に冷めるまで留置して違いを調べたものです。
組成サンプル一覧
- 基本レシピ
- 基本+別の生野菜
- 基本+多品種(40種以上)の野菜ジュース
- 基本+約30種の野菜ジュース
- 基本+トマト缶
生野菜よりも野菜ジュースやトマト缶。味のバランスがよいのは?
上のグラフは味のバランス(酸味、苦味、苦味の後味)を比較したものです。味の特徴として、調和のとれた味は正三角形に近づいていきますが、何かとがった味がある場合にはそこが飛び出た形となります。
グラフを見ると、トマト缶や野菜ジュースを用いた方が生野菜を加えた場合よりも、味のバランスが崩れにくいことがわかります。生野菜を加えたサンプルでは苦味が強く出ており、仮に調理で多くの野菜を取り入れようと種類を増やした場合、素材によっては味を調えにくくなる可能性も。トマト缶や野菜ジュースを用いる方が味のバランスがよくなり、野菜の摂取とおいしさを両立しやすくなると考えられます。
多品種の野菜ジュースを使用したものがより甘い
次に甘味について比較してみると、約30種の野菜ジュースやトマト缶で調理したものに比べ、多品種(40種以上)の野菜ジュースを加えたものが甘味が強いという傾向が見られました。
野菜ジュースを加えることで甘味が強くなるということは、甘味を引き出すために長時間煮込む必要がなくなり、時短にもつながるのではないかと考えられます。
「多品種の野菜ジュース」はだし汁のように活用できる
家庭の料理ではトマト缶を使うことが多いと思いますが、ここまでの検証を見ると、トマト缶だけでは甘味が不足がちとなると推測されます。甘味はおいしさの土台ともいえる味。それを補うために旨味調味料や塩などを使って味を調える場合もあるでしょう。
苦みの出やすい生野菜や甘みの足りないトマト缶ではなく、元々味のバランスが取れている野菜ジュースを使えばいろいろな料理のベースとなるだし汁のように活用でき、余計な調味料を使わずに済むようになるかもしれません。
特に多品種の野菜ジュースで調味することは、多くの野菜を摂れるうえ時短にもなり、現代のニーズに合った合理的な方法だと言えるでしょう。
分析は味・香りのスペシャリスト
今回の調査を分析したのは、味香り戦略研究所味覚コンサルタントの菅 慎太郎(かん しんたろう)さんです。
1977年埼玉県生まれ、早稲田大学社会科学部卒業。おいしさの表現を企画する「口福ラボ」を主宰し、味香り戦略研究所では味覚参謀(フェロー)としてマーケット分析、商品開発に携わっています。
日本味育協会認定講師でもあり、大学での講義や地方での商品開発や地域特産物の発掘、ブランド化なども手がける味分析のスペシャリストです。
野菜ジュースを上手に使って、ワンランク上のお料理を
市販の野菜ジュースなどを見てみると、種類が豊富でどれを選べばよいか迷ってしまうほど。昨今の健康志向と共に味や成分の開発も進み、おいしく飲みやすい商品も増えているのではないでしょうか。
野菜ジュースを取り入れるのは、家事の手間を省いたり野菜の栄養を手軽に摂取できたりするだけでなく、料理の味をアップさせるのにも役立ちそうです。
トマトジュースやトマト缶をお料理に使う家庭もあると思いますが、今回の調査結果を参考に、野菜ジュースを使う機会を増やしてみるのもよいですよね。料理のタイプに合わせて、トマト缶や野菜ジュースを使い分けるのもよさそうだと筆者は思いました。
野菜ジュースのみで野菜不足の完全な解消は難しいですが、野菜料理に味わいを加える意味でも上手に取り入れてみたいもの。手軽な方法でワンランク上のお料理を目指してみませんか。