乳がん検診を受けたことはありますか?
突然ですが、皆さんは乳がん検診をしたことはありますか?
「まだ若いから受診は先でもよいのでは」「マンモグラフィーは痛いと聞いたので、あまり受けたくない…」「子供を産んで忙しくなったから、しばらく検査に行けていない」などと、さまざまな理由でまだ受けたことがない・最近受診できていないという方もいるかもしれません。
ニュースではときどき取り上げられているけれど、なんとなく他人ごとのような気もしますよね。ですが、日本ではおよそ2人に1人ががんになり、年間34万人ががんで命を落としています。この割合は世界最高レベルです。
医学の進歩により、今は約50%の人ががんを発症しても治る時代になりました。進行していない初期の段階でがんを見つけ出し、適切な治療を行うことで高い確率で治癒できます。ですが、がんを初期の段階で見つけ出すのに有効ながん検診の受診率が、日本は先進国の中で最低レベルとなっているのです。
- 厚生労働省「がん検診ってなに?」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan10/pdf/gan_women10_02h.pdf,2018年8月6日最終閲覧)
乳がん闘病記をブログで書き綴ってくれた小林麻央さん
©Ameba
小林麻央さんは、生前バラエティ番組やニュース番組「めざましどようび」への出演を経て、「NEWS ZERO」のキャスターに抜てき。その番組での取材がきっかけとなり、後に結婚する歌舞伎役者の市川海老蔵さんと知り合います。
2010年3月に晴れて海老蔵さんと入籍し、梨園の妻として生きていく人生を歩み始めます。2011年7月に長女の麗禾(れいか)ちゃん、2013年3月には長男の勸玄(かんげん)くんを出産しました。
幸せな家族生活を送っていた矢先、麻央さんが乳がんを患っていることが発覚。しばらくは公にすることなく闘病にはげんでいましたが、乳がん発覚から約1年半後である2016年6月に、夫の海老蔵さんが会見を開き、麻央さんが乳がんであることを公表しました。
麻央さんは、2016年9月1日に公式ブログ「KOKORO.」を開設し、乳がんの状況やがん発見までの経緯、闘病生活を送る上での心境などを彼女自身の言葉で包み隠さずつづっていきました。2017年6月22日、惜しまれながら34歳の若さでこの世を去りましたが、亡くなる2日前までブログの更新を続けました。
彼女の書いた公式ブログは同じような境遇の人たちだけでなく、女性のがん検診の啓蒙にも影響を与えました。それらの功績などから、2016年に注目されたブログをたたえる"BLOG of the year 2016"の最優秀賞に選ばれています。
ブログの内容を紹介
©Ameba
私も
後悔していること、あります。
あのとき、
もっと自分の身体を大切にすればよかった
あのとき、
もうひとつ病院に行けばよかった
あのとき、
信じなければよかった
あのとき、、、
あのとき、、、
私は痛み止めを飲むのが嫌で、
でも、癌の痛みで
限界を感じて、ようやくようやく
薬を飲んだとき、
身体の痛みが和らいで、
なんだかわからないけれど、
「許されていく 」感覚がしたのです。
そのときの
痛みから 解放されていく
「 和らぎ 」が今でも忘れられません。
思ったのです。
何で頑なに
こんなに自分を苦しめる必要が
あったのだろう。
私、悪いことしたから病気になった
わけでもないのに、
なんで勝手に罰みたいに
苦しんでいたのだろう。
不思議なもので、
あんなに苦しんだ痛みは
少しずつ忘れたけれど、
あのときの、
痛みから解放されていく感覚は
きっと一生忘れません。
それほどの意味もないのに、
それほどの理由もないのに、
自分を許さないなんて
あまりに自分に対して可哀想だったと
思います。
(一部を抜粋) ※1
再検査では「心配ない」との結果で、安心し、
癌への不安が残ることもありませんでした。
けれど、
何気ない時に、
左の乳房を触ってみるのが癖になっていきました。
不安はないとは言っても、
どこか潜在的には
あったのかもしれません。
(一部を抜粋) ※2
小林麻央さんが亡くなったニュースは、当時の筆者にはとてもショッキングなものでした。本人とほぼ同世代、わが子と長男の勸玄くんもほとんど年齢が変わらない…。自分と境遇がほぼ同じ人が乳がんで亡くなってしまったということに、言葉に表せない恐怖を感じたことが今でも忘れられません。
麻央さんの死から半年も経っていないころ、筆者は左胸に痛みを感じ、慌てて乳腺科のある病院へ行きました。エコー検査とマンモグラフィー検査の結果は要精密検査。まさか乳がん…?と目の前が一瞬で真っ暗に。その後MRI検査を受け、小さなのう胞があるもののがんではないと診断され、1年に1度を目安に乳がん検診を受けるよう言われました。
がんではなかったことに安心したと同時に、心の片隅にあった「自分はまだ乳がんなんて発症する訳がない」という考えは、全くの見当違いだったのだなと反省させられました。
麻央さんのブログの存在がなければ、あのとき慌てて乳腺科へ行くことはしなかったかもしれない…と思うとただただ感謝しかありません。自分が健康であることは、自分だけでなく夫や子供を見守っていくためにもとても重要なこと。これからも、定期的に乳がん検診を受けようと思うようになりました。
がんであることの恐怖を赤裸々に告白した北斗晶さん
©Ameba
北斗晶さんは、女子プロレスラーとして活躍していた1995年に元プロレスラーの佐々木健介さんと結婚。現在ではバラエティー番組出演のほか、健介さんとともに会社運営をするなど忙しい日々を過ごしています。男の子のお子さんが2人いるママでもあります。
元プロレスラーであった経緯もあり、鬼嫁キャラが先行して少々怖い印象がありましたが、2015年9月下旬に乳がんで入院中であること、乳がんがリンパ節にまで転移している可能性があるということをオフィシャルブログ上で公表しました。
手術は無事に成功し、再発することなく現在も元気に活動されています。右乳房全摘出手術を受けることが確定したとき、女性として、そして母親としての不安や絶望、複雑な心境を当時のブログでは赤裸々に告白しています。
ブログの内容を紹介
©Ameba
癌の進行度、大きさ、場所
主治医の先生から、もっと精密に癌が分かる機械のある病院に行って再度検査を勧められ、詳しく検査をして。
主治医の先生には今一度 胸の細胞を取って調べる検査などもしてもらい、その結果…
1週間後に、主治医から家族も一緒に来るように言われた時には、
なんか、こんなシーンをテレビのドラマで見た事があるな~。
そんな感じでした。
パパと2人で主治医からの細かい説明と、癌の種類、ステージ、手術の内容を聞き。
[右乳房全摘出]を先生から告げられた時、あまりの恐怖とショックに初めて自分の事なんだと…泣きました。
なんとか乳房を全摘出せず、癌だけを取り除く事は出来ないのか?
せめて乳頭だけでも残せないか?
48歳と言っても、私だって女です。
胸を全て取る事の恐怖。普通にあるのが当たり前だった胸が乳頭までも全てなくなる。
直ぐには、主治医の先生に[分かりました!胸を全部取ってください。]とは言えませんでした。
これは当たり前だけど、女性なら40才だろうが50才だろうが60才だろうが、胸がなくなる事を直ぐに理解して即答できる人なんていないでしょう。
どうしても、胸の全摘出を受け入れられずにいると…主治医から
[胸の事よりも今は5年先、10年先、生きることを考えましょう。]
生きること。
こう言われた時に初めて、今の自分は命さえも危険な状態なんだと分かりました。
そういう病気なんだと。
それが癌なんだと…
(一部を抜粋) ※3
なんとなくおかしいと思った胸の異変から、検査を受けた北斗さん。乳がんと診断されてから、右乳房全摘出手術を受けることを納得して受け入れるまでの心境の描写が、読んでいる筆者自身までつらい、目を背けたいと思ってしまうほどでした。
仕方ない理由ではあっても、女性の象徴でもある胸を全摘出と言われたら自分ならどんな反応をするだろう…。北斗さんは相当な覚悟を持って手術・治療に挑んだのだな、と改めて思います。
ブログを読んでいて印象に残ったのは、北斗さんが毎年乳がん検診・婦人科検診を受けていていたにもかかわらず、がんが発見されずにリンパ節転移が疑われるほどまでに進行していた、という点です。北斗さん曰く、がんが乳頭の真下近くにできてしまい、自身でも異変に気づくのが遅れてしまったそうです。
毎年欠かさずに検診を受けていてもがんになりうる。それでも北斗さんは早めに行動を起こしたのでよかったものの、もし自分が同じ立場でセルフチェックや検診を定期的に行っていなかった場合どうなっているのか…と想像すると、定期的なセルフチェックや検診は乳がんに気づくためおろそかにしてはいけないのだな、と痛感しました。
女性がかかりやすい「乳がん」の特徴とは
乳がんは女性にできるがんの中で最も発症率が高く、年間で約5万人が診断されています。年間約1万人が乳がんのために亡くなっており、これは交通事故で亡くなる人数の実に2倍の多さなのです。
乳がんは、乳房のなかの母乳を作る組織である、乳腺にできる悪性の腫瘍です。特に40代後半以降の女性が多く発症していますが、それより若い年齢でなる方も。乳がんの直接的な原因はまだ解明されていませんが、「40歳以上」「高齢出産の人(出産未経験の人)」「良性の乳腺疾患になったことがある人」などいくつかの危険因子が関係しているとされています。
乳がんの特徴は「他のがんよりも比較的性質が良く治しやすい」という点にあります。早期発見ができれば高い確率で完全治癒できます。また乳房を温存しながら、わずかな切除手術でがんを取り除くことも可能。そのためにも、定期的に乳がん検診を受けることがとても重要です。
- 厚生労働省「がん検診ってなに?」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan10/pdf/gan_women10_02h.pdf,2018年7月14日最終閲覧)
自分の気持ち次第で乳がん予防の行動は起こせます
©Ameba
2人の乳がん経験者の体験談を読んでみて、何か感じるものがあったかもしれません。
がん治療中、自分の闘病記を記してくれた小林さんと北斗さん。体力的にも精神的にもギリギリの状態のさなか、ここまで自分をさらけ出してブログとして残してくれたのには、「乳がんを他人ごとと思わないでほしい」「自分の体の異変に気づいたら病院を訪れてほしい」「がん検診をきちんと受けてほしい」という強い願いがあったからだと筆者は思います。
仕事や育児、家事が忙しくてなかなか自分の体調のことまで気がまわらないかもしれません。ですが、あなたががんになってしまうことで家族や親族・友人は間違いなく悲しみます。
前述しましたが、乳がんは初期段階の状態で発見されれば高い確率で完全治癒できます。幸いにも定期的な検診やセルフチェックで気づくことのできる病気。自分の気持ち次第で、乳がん予防の行動は起こせます。まだ具体的な行動に移せていない方も自分自身のため、大事な家族のために乳がん検診を受けてみませんか。