生活環境の変化に伴う子供の負担
子供の心的ダメージの比重を大まかに分類すると、「引っ越し・転園転校どちらもなし」<「引っ越しのみあり」<「引っ越し・転園転校どちらもあり」という順にダメージが大きくなっていきます。
パパママの離婚という家庭内での環境変化だけでも相当なストレスの中、引っ越しや転園転校によって子供を取り巻く世界が大きく変わり、生活基盤が揺るがされる事態は親が思う以上に子供の負担です。
ここからは、引っ越し、転園・転校それぞれの負担について詳しくお話します。
引っ越しが及ぼす負担
子供にとってわが家は慣れ親しんだ安全基地。ある日突然の引っ越しは子供にとって根幹を揺るがす大きな出来事です。特に子供が小学生以上の場合は一人で行動する機会もあり、新しい環境へ適応するのに心身ともに負担が大きいもの。
また、生まれ育った家やマンションなどの場合、そこは子供にとって愛着のある安全な空間ですので、それを突然断ち切られることとなれば子供は深く傷つき、虚無感を覚える場合もあります。
転園・転校が及ぼす負担
人は常にどこかへ所属をしている生き物です。それは細かく見ていくと、家族であり、地域社会であり、大人であれば職場であり。子供にとっては学校での所属が大きなウェイトを占めています。それは幼い時分の所属である幼稚園や保育園でも同じこと。
転園・転校は子供にとって大きな負担です。また、春休みや夏休みなど長期休暇を利用して片親の独断で突然の引っ越し・転校となり、お友だちにお別れも言えなかった・・などという子供が傷つくケースも多く見受けられます。
生活環境の変化にあたり親が子供にできること
上記は生活環境が変わることによって及ぼされる子供への負担の一片です。これらの負担に対して親ができることとしては、以下のようなことが挙げられるでしょう。
引っ越し前に、子供の心の準備をサポートする
離婚や別居となった場合、これまで通りの生活環境を守ることがベストではありますが、引っ越しせざるを得ない場合は同エリア内で生活圏の変化を最小限に抑える、やむを得ず別エリアへの引っ越しとなる場合は引っ越しをする前に子供の心の準備をサポートするなど、少しでも子供の心的負担を軽減できるような対応が求められます。
そして、転園転校となる場合には、きちんとお友達や先生とお別れができるよう、子供が自分自身で区切りがつけられるような配慮とサポートが大切です。
※身体的な家庭内暴力などすぐに避難しなくてはならない場合は緊急性を伴いますので、専門機関への相談等、適切な対応が必要です。
引っ越し先に子供だけの空間を作ってあげる
引っ越し先でできることとして、子供部屋まではいかなくとも、棚のひとスペースでもよいので、子供のための空間を用意し、「そこは好きなように使っていいよ」と子供へ伝えることも有効です。
子供はそこに好きなおもちゃや宝物などを飾り、「自分の空間である」という認識を持つことができると言われています。ちなみに、この「自分の空間づくり」は、離婚の有無に限らずできる子育てサポートの一つです。
さいごに
今回は、居住エリア・所属の変化に対するフォロー方法についてご紹介しました。
離婚はしないに越したことはありません。しかし、時には離婚の二文字が頭をよぎることもあるでしょう。そんな時、自分の負の感情は一度脇へ置き、子供にかかる負担について、少し立ち止まって考えてみませんか。全か無かではなく、複数の選択肢がきっとあるはずです。
いわもと くみこ(離婚カウンセラー/勇気づけ子育てコーチ)
NPO法人日本家族問題相談連盟認定 夫婦問題・離婚カウンセラー資格取得。その後、子育てコーチングを学び、親の離婚が子に与える影響に焦点を置き、現在「一般社団法人りむすび 共同養育アシスタント」としても活動中。また、ヒューマン・ギルド認定 ELM勇気づけリーダーとしてママ向け体験学習講座も行っている。
- Julie A. Ross+Judy Corcoran (著),青木聡、小田切紀子(訳)「離婚後の共同養育と面会交流実践ガイド」全ページ(北大路書房,2013)
- ヒューマン・ギルド「勇気づけ勉強会ELM講座テキスト」全ページ(ヒューマン・ギルド開発・非売品,2008)