離婚後の面会交流の現状
日本は離婚後単独親権のため、多くの割合で子供は親権者となる母親と暮らし、両親のいさかいが原因で子供とパパ(別居親)の親子関係が阻害されることが問題となっています。ちなみに、離婚時に面会交流の取り決めをしている母子世帯のママは24.1%、継続的に子供とパパの面会交流ができている母子世帯は29.8%という状況です。(厚生労働省「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査」より)。
パパと会えないことで生まれる子供へのダメージ
両親の別居や離婚をきっかけに、子供にとってはある日突然パパとの交流が断絶されてしまうといったケースが多々あります。ママへ理由を聞いても教えてくれないという事態は親への不信感となり、会えないことで自分はパパから愛されていないと感じる場合も。他方でパパと会えない中でママからパパの悪口を聞かされ、深く心を傷つけられているという事態もあります。子供にとってパパはたった一人のパパです。親を否定されることは自分を否定されることと同じように子供はとらえます。このように、パパと会えないことで生まれるダメージは子供の自己肯定感の低下へとつながるリスクがあります。
忠誠心葛藤と片親疎外とは
子供がママの顔色をみたり気持ちを推し量ったりし、本当はパパに会いたいのに会いたいと言えないような状態を「忠誠心葛藤」と呼び、これは子供が両親のどちらも好きであることから起きる板ばさみの心理状態のことを指します。
そして、子供が親権者(同居親)であるママの影響を受けて、正当な理由もなく、また心とは裏腹に、「パパとは会いたくない」などとパパを拒絶する状態のことを「片親疎外」と呼びます。このような状態は、子供の心のバランスを崩し、情緒不安定や対人関係困難へとつながりかねず、望ましい状態ではありません。
心のダメージを負わせないためにママが子供にできること
上記のような子供にとってつらく悲しい事態とならないようにママ自身ができることは、自分の感情と子供のことは切り離し、子供とパパが関係性を築くことを認め、サポートをすることかと思います。またこれは離婚有無に限ったことではありませんが、子供の前でパパの悪口を言わないことも大切です。
一方で、子供からパパのことで聞かれることもあるでしょう。その際は、うそはつかずに事実を伝えることも誠実な対応の一つかと思います。その場合のポイントは、自分自身の主観は入れずに説明をすることです。「うそを言わない」「悪口を言わない」ということは一本筋の通った子育てにつながり、親子関係を良好にしてくれます。
さいごに
今回は、離婚によって子供が感じるパパとの断絶感について、フォロー方法も含めてご紹介しました。
離婚はしないに越したことはありません。しかし、時には離婚の二文字が頭をよぎることもあるでしょう。そんな時、自分の負の感情は一度脇へ置き、子どもにかかる負担について、少し立ち止まって考えてみませんか。全か無かではなく、複数の選択肢がきっとあるはずです。
いわもと くみこ(離婚カウンセラー/勇気づけ子育てコーチ)
NPO法人日本家族問題相談連盟認定 夫婦問題・離婚カウンセラー資格取得。その後、子育てコーチングを学び、親の離婚が子に与える影響に焦点を置き、現在「一般社団法人りむすび 共同養育アシスタント」としても活動中。また、ヒューマン・ギルド認定 ELM勇気づけリーダーとしてママ向け体験学習講座も行っている。
- 厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188147.html,2019年10月24日最終閲覧)
- Julie A. Ross+Judy Corcoran (著),青木聡、小田切紀子(訳)「離婚後の共同養育と面会交流実践ガイド」全ページ(北大路書房,2013)
- ヒューマン・ギルド「勇気づけ勉強会ELM講座テキスト」全ページ(ヒューマン・ギルド開発・非売品,2008)