©ママリ
ユウコ「さっきのLINE、見たんだけど。本当に、商品券、見てない?」
ハルコ「うん…。見てないし、鞄にも入ってなかったよ」
ユウコ「でもね、絶対にあったのよ。キッチンのカウンターの上に、デパートの商品券を封筒に入れて置いてたの。間違いないのよ」
語気が強くなっていくユウコさんの声に、私は完全に圧倒されていました。彼女がそれほど確信を持っているということは、本当にそこにあったのでしょう。でも、私には全く身に覚えがないのです。
ハルコ「そ、そうなんだ…。でも、私は本当に見てないし、キッチンには…」
ユウコ「だって、ハルコさんたちが帰ってから、どこを探してもないのよ?おかしいでしょ?」
怒りに震えているような声。それは明らかに、私に向けられたものでした。
ハルコ「え…?で、でも…」
ユウコ「さっき、私がトイレに行った時とか、ちょっと飲み物取りにキッチンに行った時とかあったでしょ?何回か、その場を離れるタイミングあったと思うんだけど。その時に、キッチンに行かなかった?」
「疑われている」はっきりとそう感じました。私が席を立った隙に、キッチンへ行って商品券を盗んだのではないか、とユウコさんは言いたいのです。 ※1
商品券を「盗んだ」と疑われて
まさか、ママ友宅へ遊びに行ったのがきっかけで、商品券を盗んだ疑いをかけられてしまうなんて…。ハルコには、まったく身に覚えのないことです。ですが、ユウコは完全に疑っている様子。ハルコは弁明しますが、ユウコは聞く耳を持ちません。
疑いが晴れないまま、ユウコとの電話を終えてぼう然としていると、ハルコの夫が帰ってきました。
夫が寄り添ってくれたけど…
私は夫に、今日ユウコさんの家に行ったこと、帰宅後に商品券がないと連絡があったこと、そして電話で泥棒扱いされ、もう話しかけないでと言われてしまったことを、涙ながらに話しました。
夫は黙って私の話を聞き、そして、怒りを滲ませながら言いました。
夫「なんだそれ!ハルコがそんなことするわけないだろ」
ハルコ「うん…でも、ユウコさん、私がやったって決めつけてるみたいで…」
夫「証拠もないのに?ひどすぎるだろ…俺が話してやろうか?」
ハルコ「ううん、いい…」
夫が言ってくれるのは心強いけれど、それで余計に関係がこじれてしまう。それに、今はユウコさんも感情的になっているだろうから、何を言っても聞く耳を持たない気がしました。
ハルコ「今は、そっとしておいた方がいいと思う…。それに、私が言っても信じてもらえなかったんだから、きっと…」
夫「でも、このままじゃ濡れ衣だろ?」
ハルコ「…うん……辛いけど……どうしようもなくて……」
夫は共感して励ましてくれましたが、私の心が晴れることはありませんでした。 ※2
夫が話を聞いてくれ、寄り添ってくれましたが、ハルコの心は晴れません…。これからも毎日、保育園で顔を合わせることを考えると、憂うつで仕方ありません。娘・メイちゃんへの影響や変なウワサを流されたら…と思うと、不安で押しつぶされそうです。
覚悟はしていたけれど、やっぱりキツイ
翌朝、重い足取りで保育園へ向かいました。ゆうべはほとんど眠れませんでした。ユウコさんに言われた「信じられない」「話しかけないで」という言葉が、何度も頭の中で繰り返されて…。
保育園の門をくぐると、ちょうどユウコさんとココナちゃんが靴箱の前にいるのが見えました。私の心臓が、またドクンと大きく鳴ります。
(どうしよう…。挨拶、した方がいいよね…?でも、「話しかけないで」って言われたし…)
迷っているうちに、ユウコさんがこちらに気づきました。目が合った、と思った瞬間、ユウコさんはプイッと顔を背け、ココナちゃんの手を引いて足早に教室の方へ行ってしまいました。
(…やっぱり、無視された)
分かっていたことなのに、実際にその態度を取られると、胸がズキリと痛みました。まるで、汚いものでも見るかのような、冷たい拒絶。周りにいた他のママさんたちの視線も、なんだか気になります。もしかして、もう何か聞いているんだろうか…。
教室の前まで行くと、メイはいつものように元気よく「ココナちゃーん!」と駆け寄ろうとしました。でも、ユウコさんはココナちゃんの手をつかんだまま、さっと身をひるがえして教室の中へ入ってしまったのです。
メイ「ココナちゃん…?」
きょとんとした顔で私を見上げるメイ。その顔を見ると、申し訳なさで胸が締め付けられました。 ※3
やはり、ユウコには無視されてしまいました。娘・メイちゃんは仲良しの友だち・ココナちゃんと話すことができず、困惑しています。子どもを大人の事情に巻き込むなんて、心苦しいですよね…。
ユウコの無視は一週間以上続きます。何とか状況を打開しようと、ハルコは考えを巡らせますが、なかなかチャンスは訪れません。すると、今度は、ユウコから電話がかかってきたのです。恐る恐る応答すると、ハルコから「商品券が見つかった」と告げられたのです。
商品券は、ココナちゃんの習い事バッグの中に入っていたそうです。心から謝罪され、「今まで通りの関係に戻りたい」と言われますが、ハルコの心は複雑です。ユウコの思い込みが激しく、感情的な一面を見てしまったため、今後は深く関わらないことを心に決めます。
相手のことをよく知らない関係で深入りすることは、時にこうしたトラブルに巻き込まれることも…。親しい間柄になったとしても、距離感を大切にすることはいい関係でいるためにも、必要なことかもしれませんね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
サムネイルイラスト:まい子はん










