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「あなたに聞きたいことがある」と私が切り出すと、タクミは私のただならぬ雰囲気に気づいたのか、少し顔色を変えました。私が探偵から受け取った写真を見せると、タクミの顔から血の気が引いていくのが分かりました。彼は、言い逃れできないことを悟ったのでしょう。
「……ごめん」
タクミは、力なくそう呟き、床に視線を落としました。不倫を認めた瞬間でした。その一言で、私の心の中にあった最後の希望が打ち砕かれました。
「どうして?」
私は、震える声で尋ねました。完璧な夫だったはずの彼が、なぜ、こんなことを。タクミは、口ごもりながら、絞り出すように答えました。
「仕事と家庭のストレスが、重なって……」
ストレス?その言葉に、私は呆れてしまいました。私だって、パートをしながら3人の子どもの家事育児をこなし、ストレスがないわけではありません。なのに、それを理由に不倫をするなんて。あまりにも自分勝手な理由に、怒りが込み上げてきました。
「相手の女性は?」
私がそう聞くと、タクミはさらに歯切れが悪くなりました。
「元ホステスの女性で……アプリで知り合ったんだ。最初はただ話を聞いてくれるのが嬉しくて……」
聞くと、タクミは以前からマッチングアプリを入れていたのだそう。最初はネット上のメッセージのやり取りだけで満足していたそうなのですが、この女性があまりにもキレイだったので会いたくなったのだとか。
「いい女を連れてたら、鼻が高くてスカッとしたんだ……」
聞けば聞くほど、自分勝手な話ばかり。私の知っているタクミとは、全く違う人間がそこにいるようでした。 ※1
夫が不倫をした理由を聞き、幻滅
不倫の証拠をつきつけ、夫を問い詰めたところ、あっさりと認めます。さらに、不倫をした理由は「仕事と家庭のストレス」だなんて、呆れてしまいます。自分勝手で見栄っ張りな夫・タクミの姿は、リコが知る優しい夫とはかけ離れていたのです。
その後、リコは無言で離婚届をタンスから取り出し、夫の目の前で書きます。すると、夫の顔色が一変。「離婚したくない」と、言い出したのです。
離婚か、再構築か…揺れる妻の心
「一生許すことはないよ。それだけわたしと子どもをないがしろにしたんだもの」
私は、冷静な声でタクミに問いかけました。私の目には、もう涙はありませんでした。決意は固まっていたからです。
タクミは、私の言葉に怯えたように顔を青くし、何度も首を縦に振りました。
「わかってる。今すぐ許してほしいなんて思わない。子どもたちと過ごす時間も、リコと過ごす時間も失いたくないんだ。どんな罰でも受けたい」
彼の言葉に、本当に信じていいのか、正直なところ分かりません。でも、ここで全てを壊してしまうことが、子どもたちにとって本当に良いことなのか。子どもたちの笑顔を考えると、すぐに離婚という選択をするのは、まだ早すぎるのかもしれないとも思いました。
私は、深呼吸をして、タクミに告げました。
「次にもう一度同じようなことをしたら絶対に離婚。子どもたちの養育費も慰謝料もしっかり払ってもらう。その誓約書を書いてほしい」
私の言葉に、タクミは震えながらも「はい」と答えました。この言葉は、タクミへの“最後の通告”です。そして、私たちは誓約書を交わしました。この誓約書は、実はママ友・マリに相談したときにアドバイスしてもらったものです。「最後に再構築を選ぶなら」と。私の悩みに寄り添ってくれるマリならではの助言でした。 ※2
リコは、子どものことをいちばんに考え、再構築の道を選択。誓約書を交わし、夫婦として再スタートを切ることに。
すると、夫は猛反省した様子。本当に、人が変わったかのように…。
変わった夫と許せない妻
それからというもの、タクミは態度を改めました。以前にも増して、家事育児にも積極的に協力するようになり、私への気遣いも怠りません。金曜日の外食もなくなりましたし、もちろんマッチングアプリも削除し、スマホのパスワード・位置情報も自ら共有してくれています。休日は子どもたちと全力で遊び、家族のために尽くす日々です。
タクミの変わりように、私は驚き、そして、もしかしたら本当に反省してくれたのかもしれないと思うようになりました。でも、一度壊れた信頼は、そう簡単に元には戻りません。彼の行動を、一つ一つ、注意深く見守る日々が続いています。
夫婦としては確実に再構築の道を歩み始めています。以前のような心からの笑顔を交わせるようになるには、まだ時間がかかるかもしれません。彼の不倫という行為を本当の意味で「許す」ことは、きっと一生できないでしょう。でも、子どもたちのために、そして私たち自身の未来のために、前に進むしかないのです。
この経験は私にとって大きな教訓となりました。夫婦関係は、信頼の上に成り立っていること。そして、どんなに完璧に見える夫でも、裏の顔を持っている可能性があること。そして何よりも、困難に直面した時、自分自身の心と向き合い、真実を突き止める勇気を持つことの大切さ。
不倫が疑わしいときに見て見ぬふりをするか、問い詰めるか。どちらを選んでもつらいと思います。それでも私は自分が選んだ道が正しかったと思えるように、これからも子どもたちと前を向いて歩んでいきます。 ※3
夫は、本当に態度を改め、家族に尽くす日々を過ごしているようです。ですが、リコは「一生許すことはない」と語っています。それほど、夫の裏切り行為は、家族を傷つけました。
リコの言う通り、夫婦の間で信頼関係は欠かせません。そして、一度失った信頼を取り戻すのは、容易なことではありません。
それでも、子どものために前を向くリコ。とても強い女性の姿に、勇気をもらえる作品です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










