Ⓒママリ
🔴【第1話から読む】不妊治療中、ママになったかつての友人との再会
息子との関係に悩む友人・ユウコを児童相談所へと連れ出した主人公・マキ。そのおかげかユウコは少しずつ親子関係改善のために動きだします。息子との関係は、どうなったのでしょうか?
5歳を虐待していた友人のその後
季節は変わり、春の風が街を優しく撫でるようになっていました。ある日、ユウコから久しぶりに連絡が来ました。
「最近やっと色々落ち着いたんだ。今度、こっちに遊びに来ない?ユウタにもぜひ会ってあげてほしくて」
メッセージを見たとき、胸がじんわりと温かくなりました。文面からでも、元気にやっていることが伝わってきて安心したのです。あの日の張り詰めた時間が、少しずつ癒されていくような気がして――私は「ぜひ行きたい」と返しました。再び訪れたユウコの実家は、以前の彼女の自宅とはまるで違っていました。玄関には整頓された靴。リビングには木漏れ日が差し込み、温かい空気が流れていました。
「マキ!」
ユウコが台所から顔を出し、エプロン姿で迎えてくれました。顔色もよく、何より笑顔が柔らかくなっていました。まるで、昔の彼女に戻ったようでした。
「おじゃまします。わぁ、なんだか……ユウコ、全然違うね」
「そう?やっぱり田舎の空気ってすごいよ。体も心も、勝手にゆるむっていうかさ。今日は私とユウタだけだから、遠慮なくくつろいでいって。昔みたいにさ」
「あはは、昔を思い出すよ。ここで他にも何人かで集まって恋バナしたよね」
ユウコは「懐かしいね」、と楽しそうに笑っていました。かつてのユウコの姿はみる影もなく、その変化は目に見えて明らかでした。もう間もなく出産を迎えるユウコですが、家族の協力も得られることから、育児への不安もないようでした。
母自身にも変化が?
そこへ、小さな足音がパタパタと響いてきて――ユウタくんが姿を現しました。彼は急ブレーキをかけたように立ち止まると、壁にちょこんと隠れました。彼は以前のように突然叫ぶこともなく、私の方をじっと見つめて、そしておもちゃを手に持ってじりじりと近寄ってきました。
「ユウタくん、こんにちは」
その姿が可愛いあまり思わず吹き出しながら私がそう言うと、彼はにこっと笑って、小さく手を振ってくれました。
「あの子、言葉はまだだけど、最近すごく感情が伝わるようになったの。目も合うし、表情もくるくる変わるし……。療育のおかげだよ。本当に」
ユウコの目が潤んでいるのに気づいて、私も思わず胸がいっぱいになりました。
「ユウコ、よかったね……本当によかった」
「うん。ほんとに、マキのおかげ」
ユウコは私の手を握って、まっすぐな目で言いました。
心の奥底で寄り添ってくれる、大切な友達
「あの時、きっと私、気づいてたんだよね。どこかおかしいって。でも、自分を責めるのが怖くて、全部ユウタにぶつけてた。マキが止めてくれなかったら、私は今でもあの子を傷つけてたかもしれない」
私は首を振りました。
「私にできたのは、ただ“伝える”ことだけ。ユウコが勇気を出して動いたから、今があるんだよ」
「でも、ひとりじゃできなかった。誰かが“味方でいる”って言ってくれたから……私、逃げずに向き合えたの。マキがそう言ってくれたから」
私は何も言えず、ただ頷きました。味方でいるということは、いつも優しくすることじゃないのだと、私は知りました。ときには、嫌われる覚悟で真実を告げること。ときには、静かに見守ること。そして、ときには隣に座って、ただ黙って話を聞くこと。
「ねえ、マキ。あなたの治療、最近どう?」
その問いに、私は少しだけ笑いました。
「まだ結果は出てない。でもね、焦らなくなった。不思議と、今は自分のペースで進んでる気がするの」
ユウコは「そっか」とうなずいて、グラスに入れた麦茶を差し出してくれました。
「私、どんな未来でも、マキの味方でいるよ。今度は、私がその番」
私はその言葉に、目頭が熱くなるのを感じながら、小さく笑って応えました。
「ありがとう、ユウコ。……それだけで、がんばれる気がする」
窓の外では、桜が静かに舞っていました。かつて、あんなにも遠く感じていた幸せの形が、今、ほんの少しだけ近くにあるような、そんな気がしました。
あとがき:大切な友人の心に寄り添ったストーリー
マキに救われたユウコは、今後の子育てを楽しむことができるようになるといいですね。マキ自身の問題はまだ続いていますが、「今度は私が」と支えてくれるユウコの存在はとても大きいと思います。
大人になって悩みを抱えた時、身近なパートナーが寄り添ってくれないと一気に孤独感が押し寄せることもあります。そんなときはユウコのように、かつての友達に力を借りてみるのも良いのかもしれませんね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










