🔴【第1話から読む】小学1年生・吃音がある息子がいじめに?「意地悪するの…」幸せな毎日に“不穏な証言”|小さなSOS
「じゃれ合い」とされたできごとに違和感を抱いた仁美さんは、ついに先生へ連絡。帰宅した優也くんの告白、ランドセルの中の“石”、こらえていた涙があふれる――。
なにもなかった。でも
昨日のことを聞くと、結局健太くんには何も言えなかったそうです。特に何もなかったそうなのです。そっか、と拍子抜けしていると、優也がポツリと言いました。
「明日も何もないといいなぁ」
「そうだね…」
答えたものの、でも、絶対電話はすると決めていました。抗議ではなく、確認の電話。それなら誰だってするもの。私は自分に言い聞かせました。翌朝、なんとも不安そうな優也に
「大丈夫だよ。きっとよくなる。」
と笑って言いました。
「僕、頑張るね」
と少し笑って登校班の集合場所に歩いていきました。その背中に、
「ママも頑張るからね」
とつぶやきました。
電話で聞いた「じゃれ合い」の正体
昼間、学校へ電話してみました。優也の担任の先生はベテランの先生です。私は正直な気持ちを話しました。息子が隣の子に意地悪されていること、それは息子もちょっかいを出しているからかもしれないこと。しっかり聞き取りをしてほしいこと。
「親として息子の味方ではありますが、言う事を100パーセント信じているわけではありません。もし息子も相手の子になにかしているなら、しっかり叱ってください」
と私達夫婦の気持ちを伝えました。先生は、
「健太くんは人懐っこい子なんですが、元気がありすぎて、手が出る時もあるようです。じゃれ合いの延長…という可能性もありますし、2人ともまだ1年生になったばかりですから、行き違いもあるでしょう。お父さんお母さんのご心配は重々承知しております。来週席替えをしますので、もう少しだけ様子を見させてくださいね…」
「元気すぎる子」の違和感
先生との電話を切って、私はどっと疲れてソファーに座り込んでしまいました。健太くんってどんな子なんだろう…。手が出ちゃうほど元気な子って、それって暗にいじめっ子って言ってるの?
いじめはないと言ってるつもりなの?私は悔しくてたまりませんでした。教室の机で小さくなっている優也を想像すると涙が止まりません。
ついにあふれた言葉
午後、優也が帰ってきました。ヘトヘト、という音がしそうな表情の優也に、私はつとめて明るく伝えました。
「優也、来週席替えがあるんだって。よかったね」
すると、顔を上げた優也はみるみるうちに目に涙を溜めてしゃくりあげました。驚き、どうしたの?と聞くと、
「前、僕に鉛筆投げてきたの!お箸箱もワザと落としたの!休み時間もずっと僕に付いてくるんだよ!ずっとなんか言いながら付いてくるの!僕もういや!」
私の予感は当たってしまいました。しかも、より悪い方に。
「ひどい!優也はなんにもしていないのに!」
と、叫んでいました。ずっと抑えていた私の本音を、私自身が聞いてしまいました。優也は大人しくて、臆病な優しい良い子です。ちょっかいを出すなんてありえない。それが私の本音です。途端にもうだめでした。私は優也に謝りながら抱きしめて泣くしかありませんでした。
「ママが明日先生にガツンと言うからね。」
と言うと優也は涙をぬぐいながら頷きました。優也を落ち着かせ、日課のランドセルの中身の整理をするように言いました。
ランドセルの中の◯◯
ですが、本当の修羅場はここからでした。優也がランドセルを整理していた時、小さく声を上げたのです。覗き込むと、やや大きめの黒い石が入っていました。優也は青ざめながら、
「これ、朝に健太くんが持ってた…」
と。愕然としました。ランドセルに石を入れるなんて、完全にいじめではないか。やっぱり!と、やっと引っ込んだ涙がまた溢れそうでした。優也が
「僕、学校は行きたいけど健太くんは嫌だよ」
と私に抱きついて言いました。
「そうだよね。パパが帰ってきたら言うからね」
と約束して、何も考えないようにして夕食を作り、私は静まり返ったテーブルで夫に話しました。
父の怒りと決意
黙って聞いていた主人の顔が、真っ赤になっていました。優也は硬直して全然箸が進みません。私も初めて見る顔です。そして、夫は優也に尋ねました。
「本当に健太くんに何もしていないんだな?」
と。優也は、うん、と答えましたが、声にはなっていませんでした。夫は、私に
「明日、学校に電話して話し合いができるようにしてくれ。俺も行くから」
と言って席を立ち、頭を冷やしてくる、と庭で素振りを始めました。優也が
「パパ、健太くんをかっ飛ばさないよね?」
と心配そうにつぶやきました。思わず笑うと、優也も笑いました。
守ってくれていた友達
「翔くんはね、翔くんママに相談していたんだって。優也を助けたいって。でも、優也のことを考えて、三人でケンカにならないように、優也と一緒にいなさいって言ってくれたんだって。ずっと、守ってくれてたんだよ。ありがとうって言おうね」
優也は照れくさそうに笑いました。そして、優也が寝たあと私たちは話し合いました。
モンペなんかじゃない。これは正当な抗議だと。完全に覚悟が決まりました。絶対に今週中に解決する、そう決めて眠りにつきました。
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母としての「怒り」が、ついに言葉に
これまでうちの子にも原因があるのかもしれない…と踏みとどまっていた仁美さんですが、
優也くんの口から語られたでき事と、ランドセルから出てきた石に、もう我慢できなくなります。
家庭という守られた場所でさえ、すべてを口にできなかった優也くん。
そして、迷いながらもやっぱり動かなきゃと決めた仁美さん。本当の意味での行動が始まります。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










