Ⓒママリ
🔴【第1話から読む】不妊治療中、ママになったかつての友人との再会
友人・ユウコによる子育ての苦悩を知り、彼女に黙って児童相談所へ連絡した主人公・マキ。果たして事態は好転していくのでしょうか?
「通告した?」友人からの連絡にドキッ!
通告の電話をかけた翌日、私は深い罪悪感に包まれていました。あれは本当に正しかったのか――。ユウコはどう思うだろう。怒るだろうか。裏切られたと感じるだろうか。それでも私は、加藤さんという女性の声に救われたのです。
「こちらで状況を確認し、ご友人の方と連絡を取ってみます。今の段階では、通告者の情報はもちろん伏せて対応しますので、ご安心ください」
その言葉を信じて、私は静かに日常に戻るしかありませんでした。そして、数日後。ユウコからのLINEが唐突に届きました。
「加藤さんって人から電話があった。児童相談所。……あんた、通告した?」
画面を見つめる手が、震えました。バレてしまった――。いいことをしている、と自分に言い聞かせていただけにそんな感覚に襲われました。慎重に言葉を選びながら、私は返信しました。
「心配だったの。あのままだと、ユウコもユウタくんも壊れてしまいそうで……」
既読がついても、しばらく返事はありませんでした。
児童相談所に行くハードル
その翌日、ユウコと病院で顔を合わせました。するとユウコは、泣きそうな顔を向けてきたのです。
「どういうつもり?私が母親として失格だって、そう言いたかったの?」
待合室の片隅で、彼女は声を押し殺しながらも、強い口調で詰め寄ってきました。
「違うよ……。ユウコが悪いって言いたいんじゃない。ただ、助けが必要なんだって、思っただけ」
「他人が勝手に判断しないでよ!私の苦しさ、全部見てたわけじゃないでしょ!子育ての現実なんて、マキにはわかんないよ!」
ユウコの目には、怒りと悲しみが入り混じっていました。そして、何より――深い孤独がにじんでいました。私は、深く息を吸い、彼女の目を見て言いました。
「昔のユウコは、もっと人に優しかった。人の気持ちに寄り添ってくれる子だった。私はそんなあなたの友達で、今でもずっと味方でいたいと思ってる」
ユウコは無言のまま、視線を逸らしました。
「児童相談所って、何かを奪う場所じゃないよ。私も話を聞いてもらったけど、ただ“助けたい”って思ってる人たちだった。ユウコがもっと楽になれるように、一緒に加藤さんと話してみない?」
しばらくの沈黙のあと、ユウコは小さく首を横に振りました。
「……無理だよ。そんなの、怖いだけ。何か変わるとも思えないし」
「じゃあ、私も一緒に行く。一人じゃない。ずっと隣にいるから」
彼女の頬を一筋の涙が伝いました。それが、どんな感情からのものだったのか、私には正確にはわかりません。でも、ようやく彼女の心に、少しだけ隙間ができたような気がしました。
相談する勇気
その週末、私たちは加藤さんのいる児童相談所を訪れました。私も同席すること、がユウコが児童相談所に行くことに対してつけてきた条件でした。ユウコは終始緊張していました。膝の上で手を握りしめ、言葉を選びながら、少しずつ話し始めました。
ユウタくんとの意思疎通が、あまりうまくいかないこと。毎日の癇癪が何時間も続くこと。夫は「それぐらい普通」と言うだけで、育児にまったく関わってこないこと。疲れていると訴えると、「俺だって仕事してる」と言い返されるだけだったこと――。
ユウコの口から語られる現実は、想像をはるかに超えていて、私はただ隣で彼女の手を握っていました。加藤さんは、真剣な眼差しでユウコの話を聞き終えると、やわらかく言いました。
「お子さんは発達の専門機関で詳しく診てもらった方がいいかもしれません。そして、お母さん自身も、まずは少し休む時間が必要です」
「……私、母親失格ですよね」
そう呟いたユウコに、加藤さんは静かに首を振りました。
「お母さんが声を出したということ、それがどれだけ勇気のいることか、私は知っています。失格なんかじゃありません。今ここに来てくれたことが、その証拠です」
ユウコは泣いていました。肩を震わせながら、何度も「ごめんなさい」と呟いていました。でもその姿を見て、私はようやく――心から、ああ良かった、と思ったのです。
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あとがき:虐待の裏にあったのは孤独感
ぶつかり合いはあったものの、最終的には相談に行くことができたユウコ。マキが寄り添ったからこそ彼女が勇気を出せた…この事実はとても大きいと思います。
ユウコの虐待の裏には、育児の不安を誰にも理解してもらえない孤独感がありました。マキとの再会や児相職員の介入で、そうした不安感が少しずつでも解消されていくといいですよね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










