Ⓒママリ
🔴【第1話から読む】増えた“非通知着信”→「待てよ?」記憶から行きついた、恐ろしい推理|恐怖!見えない敵はママ友でした
夫の転勤で東京に引っ越してきた主人公ゆきは夫と娘と三人、慎ましくも幸せに生活を始め、ゆき自身もママ友やパートで交流築く。しかし非通知着信や悪質な口コミに悩まされ…。ママ友詩織への疑念は確信へ変わり、娘の友達の誕生日パーティーで詩織の裏の顔を知る。
束の間の息抜き
詩織さんからのランチの誘いLINEは、相変わらず既読のまま返事をしていなかった。指は動かせず、どうすれば波風を立てずにこの状況を乗り切れるのか、ずっと頭を悩ませていた。そんな時、私のスマホに別の通知が届いた。ママ友の一人、田中さんからだった。
「急で悪いのだけど明日、うちで娘の誕生日パーティーをやるんだけど、愛奈ちゃんと一緒にどうかな?」
田中さんの娘さんと愛奈は同じクラスで、とても仲が良い。うれしい誘いだったが、同時に不安もよぎった。もし、パーティーの場で詩織さんと会ってしまったら? でも、こんな状況だからこそ、別のママ友と交流を持つことは大切だ。それに、もしかしたら田中さんから何か情報が得られるかもしれないという期待もあった。私は田中さんの誘いを快く受けた。
次の日、田中さんのご自宅にお邪魔した。広々としたリビングには、かわいらしい飾り付けが施され、美味しい匂いが漂っていた。愛奈は田中さんの娘さんとすぐに遊び始め、楽しそうな笑い声が響く。私も田中さんとおしゃべりしながら、手作りの料理をいただいた。他のママ友も数人来ていて、和やかな雰囲気だった。詩織さんの姿はない。少しホッとしながらも、心のどこかで彼女の話題が出るのを待っていた。
しばらくして、会話が途切れた隙に、私は田中さんに切り出した。
「あの、田中さん、佐藤さんのことなんですけど……最近、ちょっと連絡が取りづらくて。何かあったのかなって。」
あえて遠回しな言い方を選んだ。田中さんは、私の言葉に少しだけ目を伏せ、ためらうような素振りを見せた。そして、他のママ友が別の部屋に移動したのを確認すると、小声で話し始めた。
詩織の悪評
「実はね、天野さん。詩織さんのこと、私たちもちょっと距離を置いているのよ。」
田中さんの口から出た言葉に、私はやはり、という気持ちと、胸騒ぎが入り混じるのを感じた。
「詩織さんね…、結構、気性が激しいところがあるでしょう? 前々からいろいろとあったんだけど、決定的なことがあってね。」
田中さんは少し声を潜め、私の顔をじっと見た。
「詩織さん、ご主人の浮気が発覚した時にね、腹いせに自分も浮気をしたらしいのよ。」
私は思わず息をのんだ。耳を疑うような話だった。
「でね、それを私たちママ友に、まるで当然の権利であるかのように『相談』してきたの。ご主人が浮気したんだから、自分も同じことをするのは当たり前だ、って。最初はみんな、彼女が可哀想だと思って話を聞いてあげてたんだけど…あまりにも話の内容が、なんていうか…その…常識外れで。」
田中さんの言葉は、詩織さんの意外な一面を私に突きつけた。
「彼女はね、自分は何も悪くない、被害者だ、って一点張りで。それでいて、浮気相手との関係を赤裸々に話したりするの。まるで武勇伝みたいにね。みんな、さすがに引いちゃって…」
田中さんは言葉を選びながら続けた。
「結局、多くのママ友が彼女をブロックしたの。私も、連絡を取るのがしんどくなっちゃって…。浮気相手からも、結局ブロックされたらしいわよ。あまりにもしつこかったから、って話だけど…。」
私は絶句した。私の頭の中で、詩織さんの数々の行動と、田中さんの話がつながっていく。非通知着信、クチコミの悪意ある編集。これらすべて、彼女の歪んだ心理からきているのかもしれない。
「詩織さん、今ね、孤立してると思うわ。多分、天野さんだけが、彼女にとって唯一普通に接してくれるママ友なんじゃないかしら。」
「はたから見て『幸せそうに見える人』に、嫌がらせをしているという噂もあるから気をつけて」
幸せそうに見える相手に嫌がらせをしているということは、彼女が欲しかった幸せを、私が持っているということなのだろうか。夫との円満な関係、愛奈の笑顔、新しい土地で、新しい人間関係を築き、パートも順調で、充実した日々を送っているように見える?
それも私がなんの努力もなしに手に入れたわけではないのだけど、詩織さんには、妬ましく映ったのだろうか。そして、なんとかそれを壊そうとしているということ?あの悪意に満ちたクチコミも、非通知の嫌がらせも、すべては私の幸せを蝕むため…?
そう考えると、彼女の行動のすべてに合点がいった。そして、同時に、言いようのない恐怖に襲われた。田中さんは、私が黙り込んでいるのを見て、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「天野さん、無理に付き合う必要はないわよ。あなたも大変な目に遭ってるんでしょう?」
田中さんの言葉に、私はようやく現実に戻された。彼女は、私の抱える問題に気づいてくれたのだ。私は小さく頷いた。
「実は…、ちょっと心当たりがあって。非通知の電話が増えたり、パート先のクチコミがひどく編集されたり…」
私はごく簡単に、ここ最近のでき事を田中さんに打ち明けた。田中さんは眉をひそめ、真剣な表情で私の話を聞いてくれた。
「やっぱりそうだったのね…。それは大変だったわね。私たちが協力できることがあれば、いつでも言ってちょうだい。でも、くれぐれも無理はしないでね。」
田中さんの温かい言葉に、張り詰めていた気持ちが少しだけ緩んだ。一人で抱え込まずに、相談できる人がいるというのは、こんなにも心強いことなのだ。
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あとがき:ママ友同士の交流の心強さと怖さ
ママ友の一人田中さんとの会話を通じ、詩織の裏の顔を知れた主人公ゆき。相談ができる人がいる、力になってくれる人がいるという心強さを感じながらもどこか『そういう話』がママ友という狭いコミュニティ内で広がってしまう怖さも感じるお話になりました。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










