Ⓒママリ
🔴【第1話から読む】増えた“非通知着信”→「待てよ?」記憶から行きついた、恐ろしい推理|恐怖!見えない敵はママ友でした
夫の転勤で東京に引っ越してきた主人公ゆきは夫と娘と三人、慎ましくも幸せに生活を始め、ゆき自身もママ友やパートで交流築く。しかし非通知着信や悪質な口コミに悩む。ママ友詩織の関与を疑い、ママ友の一人田中から彼女の孤立を知る。カフェで詩織に真相を迫ると…。
白を切る彼女、追い詰める私
私を怖がらせるための非通知電話も、嫌な思いをさせるためのパート先へのクチコミ投稿も、明らかに私の目の前にいるママ友・佐藤さんの仕業だ。
それでもしらを切る彼女を、もう逃がすわけにはいかない。私はかたくなに情報開示を進める意向を伝えることにした。
「でも、毎日続くとやっぱり不安で。それに、実害はなくてもクチコミも営業妨害にもなりうるんだって。かなり悪意がありそうだし、ちゃんと白黒つけたいなって思って…私、本当に困ってるから、弁護士さんに相談しようと思うよ」
私は困っているという一点張りを崩さなかった。佐藤さんの表情がみるみるうちに硬くなり、やがて彼女の顔には、隠しきれない怒りが浮かび上がってきた。
「ねえ、さっきから私の顔色伺ってるよね。もしかして、私のこと疑ってるの?」
彼女の声が、それまで抑えられていた感情を抑えきれなくなったかのように低くなる。その様子は、以前田中さんから聞いた「気性の激しさ」を如実に物語っていた。
「いやいや、私はただ困っているから相談してるだけで…」
私の言葉にかぶせて、彼女はさらに声を荒げた。
「困ってるくらいなら私に相談したらいいでしょう。弁護士雇って犯人を特定?まるで犯罪者扱いだよね?」
詩織の感情と不満、孤独
彼女はテーブルを叩き、パンケーキが僅かに跳ねる。感情のコントロールを失っているようだった。彼女がここまで感情的になるところを見た事はなかった。
「佐藤さん落ち着いて。佐藤さんが犯人じゃないのに、なぜそんなに怒るの?」
私が尋ねると、佐藤さんは深く息をしたあとに、一気にぶつぶつと話し始めた。
「はあ…私のこと何も知らないくせに。私って本当に我慢してばかり。家族も友達も本当に心許せる相手なんかできやしない。それなのに、途中からコミュニティーに入ってきたあなたがどうして、そんなに簡単に輪の中でニコニコするのよ。そんなに簡単じゃないのに…」
彼女の口から、田中さんから聞いた通りの、孤立した現状への不満があふれ出した。
「ねえ佐藤さん、それとこれとは別だよね?私のこと、貶める理由にはならないよ」
私は毅然として言い放った。自分の人生に不満があるからといって、相手を傷つけていいわけはない。佐藤さんは顔を真っ赤にして、急に立ち上がった。
「もういい、あなたに理解してほしいなんて最初から思ってなかったの。この話をまたみんなに噂して私をのけ者にするんでしょうね。何とでもすればいいわ。じゃあね」
残されたパンケーキの様に
そう言い放つと、佐藤さんは自分の分のパンケーキ代を財布から雑に出し、机に叩きつけて店を出て行った。まだパンケーキが残った皿がガタリと音を立て、フォークが床に落ちた。
私は一人、カフェに取り残された。周囲の客からの好奇の視線が突き刺さる。床に落ちたフォークと、残ったパンケーキ。そして佐藤さんの表情が脳裏に焼き付いた。残されたパンケーキの様に宙ぶらりんな気持ちを抱えたまま会計して店を出ると、さわやかな風が吹いた。まるで「これでよかったんだよ」と誰かに言われているような気がした。
佐藤さんからの謝罪はなく、その後はメッセージが届くこともありません。しかし、数日後にふとクチコミを確認してみると、クチコミは削除されていました。
正直、もやもやとしたものは心の中に残りますが、これも人生の勉強だったと思うことにします。世の中には自分には到底理解できないような行動をする人がいるということを、改めて認識したできごとでした。
あとがき:悪意に立ち向かうこと
主人公ゆきは悪意に立ち向かい詩織と向き合い対決しました。感情的な爆発と孤立の背景が明らかになり人間関係の複雑さと嫉妬の闇が浮き彫りに。しかしすっきりとした終わりを迎えるわけでは無かったものの、人として一つの階段をのぼることができたゆきはこれからも良き妻・母として生きて行けるのでしょう。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










