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🔴【第1話から読む】小学1年生・吃音がある息子がいじめに?「意地悪するの…」幸せな毎日に“不穏な証言”|小さなSOS
クラスメイトとのすれ違いに悩んだ優也くん。けれど放課後、まっすぐな想いが交差し、奇跡のような仲直りが――。母・仁美さんもまた、子の勇気に背中を押されて、一歩踏み出します。
朝、いつもと違う静かな食卓
いつもより早い時間に私は目を覚ましました。体はだるく目の奥から頭までグーッと痛みます。キッチンで主人のお弁当を詰めていると、優也がランドセルを背負ってリビングに現れました。
何も言いません。顔は少しだけむくんでいました。少しだけでよかった、そう思いながらおはようと言うと、優也も
「おはよう」
と答えて食卓に座りました。優也の大好きなスクランブルエッグ、ソーセージ、バナナジュース。これは、私なりのエールだから、優也がわかってもわからなくてもいいのです。
そのあとにやってきた夫も、無言のままテレビをつけました。いつもならツッコミをたくさん入れて、優也を笑わせているのに、今日はそれすらありません。
いつもとは少しだけ違った空気のテーブル。食事を終えた夫が、まだ食べている優也に言いました。
「堂々とすればいいよ。パパとママが助けるから。」
優也は夫の顔をじっと見て、
「うん。」
と言いました。夫は優也の髪の毛をクシャッとし、私の目を見て「行ってきます。」と出かけて行きました。
「ママもでしょ」小さな気づきに励まされて
私は、優也の背中を見ながら、深呼吸をしました。今日という日を無駄にはしないと決めたのです。玄関で優也に
「翔くんによくお礼を言ってね。ママもあとで電話するから。優也、いい友達をもってよかったね」
と言うと、優也は、
「うん」
と答えたあと私の方を見て、
「ママもでしょ」
と言いました。予想もしていない言葉に面食らっていると、優也はニカッと笑い、
「行ってきまーす」
と飛び出して行きました。私はあっけにとられたままキッチンに戻ると、涙が込み上げてきました。うれし涙です。
他の子より幼いと思っていた優也が、母親の人間関係に安心してくれている・・・。
思っていたよりも、ずっと成長していたようです。そして、昨日あんなことがあっても、親のエールを受けて、前を向いてくれたこと。
きっと本当は怖いに決まっている。だけど、気丈に振る舞っている。それは、れっきとした大人の行為だと思いました。
だけど、あの子は当然子ども。親が手助けしなければならないのです。
あの子から勇気をもらった今の私なら学校に立ち向かえる。立ち向かわなければならない。そう思いました。
それでも、母の心は揺れる
午後3時、私は、スマホを握りしめたままでした。今まで自分がモンペじゃないかと悩んでいましたが、健太くんの親こそモンペだったら?と、考えてしまったのです。
学校に抗議するってことは、当然親を呼び出すことになります。どうしよう…。
もっとひどいことになったら?そう思うと、優也からもらった勇気はどこへやら…。
まずユキさんに相談してみようか?いや、あんなに助けてもらったんだから、だめよ…と、文字通り右往左往していると、玄関が勢いよく開きました。
放課後、明かされたまっすぐな本音
「ただいまぁ〜っ」
と優也がパタパタとリビングに入って来ました。そして、
「ママ、健太くんと仲直りしたよ!」
とニコニコ言ったのです。
「えっ、仲直り?なんで?」
と叫ぶと、
「なんでって、仲直りしたもん」
とケロッとしながら優也は、こんな話をしてくれました。朝の通学路で、ランドセルに石を入れられたことを翔くんに話すと、
「もう我慢できねぇ!俺が言ってやる!」
と、教室に入ると、カーテンの中でぐるぐる回る健太くんに、放課後に近所の公園に来てと伝え、緊張して待つ二人に対してうれしそうに走ってきた健太くん。少し不思議に思いながらも、
「どうして優也に嫌なことするんだよ!」
と聞くと、
「嫌なことって?」
と逆に聞いてくる健太くん。よくよく話を聞いて、要約すると、鉛筆はジャグリングしていたら優也に当たり、お箸箱はよそ見をして歩いていたら落としてしまったそうです。ですが、それらについてはその場で謝ってくれていたそうです。
その記憶は優也にも翔くんにもあり、いつも付いてきて何か言ってくる、というのも
「昨日ユーチューブ何みた?」
「うちの近所のでっかい犬見に行こう!」
「からいカレー食べられる〜?」
といったものでした。おそらく苦手意識から頭に入らなかったのでしょう。そして、肝心の石。それは、超かっこいい石があったから内緒でプレゼントだったようです。そこまで聞いた翔くんは
「カッコよくても黙って石を入れちゃだめだろ〜?」
と叫ぶと、優也も思わず吹き出し、翔くんも笑いました。
「おれ優也くんと仲良くなりたかったんだ!」
と真剣に言う健太くんに、
「わかった。でも、優也はショックだったんだって。仲直りしなくちゃ。健太くんはおっちょこちょいを、優也はやめてって言わなかったことを謝りあおう!」
そして二人は謝り合い、遊んで帰ってきたそうです。
許すこと、受け入れること
全身の力が抜けるのを感じながら、優也に聞きました。
「優也はそれでいいの?健太くんと仲良くできる?」
すると、
「いいよ。わざとじゃなかったし、僕もちゃんと聞こうとしなかったもん」
この子は、許しを知っていた…。
新しい友達、成長した息子
夕方、お母さんがしょげた健太くんを連れて見えられて、今度は私たちが謝罪合戦でした。夜、帰ってきた夫に話すと、唖然としていました。無理もありません。夫が優也を見ると、健太くんママが持ってきてくれたお菓子を食べています。
「ま、よかったんじゃない?」
と言いながらも、目は潤んでいました。あれから、3人はだんごのようにいつもくっついて遊ぶようになりました。ありがとう、優也。ママも少しだけ、強くなれたよ。
あとがき:まっすぐな気持ちが伝わる時
「よかったんじゃない?」
ぽつりとこぼれたその一言に、この家族の物語がすべて詰まっていたように思います。たくさん悩み、揺れ、立ち止まりながらも――結局、一番まっすぐで、強かったのは子どもたちでした。
友達になりたかっただけ。そんな率直な思いを、大人はいつの間にか見逃すようになってしまったのかもしれません。誤解も、不安も、すれ違いも、ちゃんと向き合えば通じ合うことがあります。
小さな3人のだんごがじゃれる姿は、そのことを何よりも雄弁に語ってくれていました。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










