©ママリ
「実はね、ここ最近、非通知の着信がすごく増えてて…毎日毎日かかってくるから、正直、ちょっと怖いなって思ってて…」
私の言葉に、詩織さんの顔が少しピクッとしたような気がする。しかし、すぐに持ち前の明るさで繕う。
「えー!それは怖いね!いたずら電話かな?」
「うん、それも考えたんだけど…あとね、パート先のスーパーのクチコミも、最近酷いこと書かれてて…」
私が続けると、彼女は少し目を泳がせた。非通知電話とクチコミのつながりがバレていそうなことを感じ、焦っているのだろうか。
「そのクチコミ、最初は漠然としたことだったんだけど、最近になって『おばさんのレジ応対が悪い』なんて、具体的なこと書かれちゃって…多分私のことだと思わない?」
私が言葉を紡ぐたび、彼女の顔は少しずつ下を向き、表情を伺いにくくなった。
「でね、私の知り合いに、弁護士さんがいるんだけど…こういうのって、発信者情報開示請求っていうのができるらしいの。誰が非通知の電話をかけてるのか、誰がクチコミを書いてるのか、調べられるって」
その言葉を口にした瞬間、詩織さんの顔色は明らかに変わった。それまで饒舌だった彼女の口から、一切の言葉が出なくなった。明らかに動揺している。
「あ、あはは…そんな…弁護士さんなんて…大袈裟じゃない?
きっと、ただのいたずらだからさ…やめた方がいいと思うよ、そういうの…」
彼女の声は、普段の明るさを失い、か細く震えていた。笑顔は完全に消え去り、額には脂汗が滲んでいる。まるで、罪を追及された容疑者のようだった。そして、弁護士を介入させることを、必死に止めようとしている。 ※1
明らかに、動揺し始めたママ友
ゆきのスマホの非通知での着信に、パート先での中傷めいたクチコミ。ママ友の1人・佐藤詩織ではないかと考えていたところ、他のママ友を通して、彼女の本性をしります。
詩織は、夫から不倫された報復に、自分も不倫に走ります。さらに、不貞行為を他のママ友に武勇伝のように語ったそう。常識はずれな一面と、気性の荒さを知り、ゆきの疑惑は確信へと変わります。
そして、カマをかけてみたところ、詩織は明らかに動揺し始めます。しらを切ろうとする詩織に対して、ゆきはさらに追い詰めます。
追い詰められたママ友が、ついに…
しらを切る彼女を、もう逃がすわけにはいかない。私はかたくなに情報開示を進める意向を伝えることにした。
「でも、毎日続くとやっぱり不安で。それに、実害はなくてもクチコミも営業妨害にもなりうるんだって。かなり悪意がありそうだし、ちゃんと白黒つけたいなって思って…私、本当に困ってるから、弁護士さんに相談しようと思うよ」
私は困っているという一点張りを崩さなかった。佐藤さんの表情がみるみるうちに硬くなり、やがて彼女の顔には、隠しきれない怒りが浮かび上がってきた。
「ねえ、さっきから私の顔色伺ってるよね。もしかして、私のこと疑ってるの?」
彼女の声が、それまで抑えられていた感情を抑えきれなくなったかのように低くなる。その様子は、以前田中さんから聞いた「気性の激しさ」を如実に物語っていた。
「いやいや、私はただ困っているから相談してるだけで…」
私の言葉にかぶせて、彼女はさらに声を荒げた。
「困ってるくらいなら私に相談したらいいでしょう。弁護士雇って犯人を特定?まるで犯罪者扱いだよね?」 ※2
ゆきは「相談」しているだけだったのに、自分に疑いをかけられていると思い込んだ詩織。「犯罪者扱い」という、物騒な言葉まで飛び出しました。
自滅するのも、時間の問題です。
つじつまが合わない…ママ友の常識はずれな姿
彼女はテーブルを叩き、パンケーキが僅かに跳ねる。感情のコントロールを失っているようだった。彼女がここまで感情的になるところを見た事はなかった。
「佐藤さん落ち着いて。佐藤さんが犯人じゃないのに、なぜそんなに怒るの?」
私が尋ねると、佐藤さんは深く息をしたあとに、一気にぶつぶつと話し始めた。
「はあ…私のこと何も知らないくせに。私って本当に我慢してばかり。家族も友達も本当に心許せる相手なんかできやしない。それなのに、途中からコミュニティーに入ってきたあなたがどうして、そんなに簡単に輪の中でニコニコするのよ。そんなに簡単じゃないのに…」
彼女の口から、田中さんから聞いた通りの、孤立した現状への不満があふれ出した。
「ねえ佐藤さん、それとこれとは別だよね?私のこと、貶める理由にはならないよ」
私は毅然として言い放った。自分の人生に不満があるからといって、相手を傷つけていいわけはない。佐藤さんは顔を真っ赤にして、急に立ち上がった。
「もういい、あなたに理解してほしいなんて最初から思ってなかったの。この話をまたみんなに噂して私をのけ者にするんでしょうね。何とでもすればいいわ。じゃあね」 ※3
どうやら詩織は、幸せそうなゆきを妬んでいたようです。ですが、だからと言って、嫌がらせや中傷をしていい理由にはなりませんよね。ゆきは、最後まで毅然とした態度を崩しませんでした。
このあと、詩織から謝罪の言葉はなく、連絡は一切こなくなったそう。また、クチコミはひっそりと削除されていました。
「幸せそうだから」という理由だけで、他人を貶める人もいるのですね…。ゆきは、今回のできごとを「人生の勉強だった」と、振り返っています。
※このお話はママリに寄せられた体験談をもとに、個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。










