念願のマイホームを手に入れたまりは、向かいの家に住むえりこと仲良くなる。しかし、ささいな用事のキャンセルをきっかけに、えりこがSNSで他のママ友と楽しんでいるのを見て、まりの心に小さな違和感が芽生える。
念願のマイホーム、すべてはここから始まった
私、まりは、夫・竜馬と4歳の長男・風太と3人で、念願の一軒家を建てた。日当たりの良いリビング、風太が走り回れる庭、そして何より、自分たちの手で作り上げたという事実が、私の心を毎日のように満たしてくれた。ご近所さんとの交流も楽しみだった。
最初のうちは、本当に全てが順調だった。引っ越しから数日後、向かいの家に住むえりこさんが、近所のパティスリーのクッキーを差し入れに持ってきてくれた。同じくらいの年の息子・ゆうとくんがいて、風太とすぐに仲良くなった。
「困ったことがあったらいつでも言ってください。この辺のことなら何でも知ってますからね」
えりこさんの屈託のない笑顔と優しい言葉に、私は心から安心した。この土地に、いいご近所さんがいてよかった、と。
仲の良いママ友ができる
それからというもの、私とえりこさんの距離はあっという間に縮まり「えりこさん」「まりちゃん」と呼び合う仲になった。えりこさんは33歳で、私より2つ年上だという。
子どもたちを一緒に公園に連れて行ったり、スーパーで会えば立ち話をしたり。他のママ友たちとも顔見知りになり、少しずつ輪が広がっていくのを感じた。えりこさんはいつもグループの中心にいて、明るく、テキパキと皆をまとめるのが上手だった。
でも、ほんの小さな違和感が芽生えたのは、そのころからだったかもしれない。
あるできごとで感じた小さな違和感
ある日、風太の風邪で急に遊びの約束をキャンセルしたことがあった。
「ごめんね、えりこさん。風太が熱出しちゃって…」
とLINEを送ると、すぐに
「えー、大丈夫? 看病、大変だろうけど無理しないでね。困ったらいつでも連絡して!」
という返信が来た。
その日の夜、風太が寝た後、私が何気なくSNSを開くと、そこには他のママ友たちとえりこさんがカフェでランチをしている写真がアップされていた。そのカフェは「予約が取りにくいからお互いにパートが休みの日に行こうね」と約束していたカフェだった。
「2人で行こうって約束してたのになあ」
そう思ったけれど、すぐに「こっちが看病で行けなかったんだから、仕方ないか」と自分に言い聞かせた。
この小さな出来事を夫の竜馬に話したときも、彼は笑って言った。
「考えすぎだって。えりこさん、いい人じゃん」
竜馬の言葉に、私もそうだよね、と頷いた。だけど、心のどこかで引っかかっていた。 このとき、まだ私はこの違和感の正体が分からなかった。まさか、この人が私の精神をじわじわと蝕んでいく存在だなんて、夢にも思っていなかったんだから。
🔴【続きを読む】町内会のお祭り準備に行ったら→公園には誰一人いない…理由を想像してゾッとする|フレネミーママ友
あとがき:新生活の光と影
新築のマイホームという、誰もが憧れる場所で始まる物語。主人公まりの喜びと期待に満ちた描写は、誰もが共感できるのではないでしょうか。しかし、その幸せな日常に、隣人えりこによって小さな影が落とされます。些細な出来事から生まれたこの違和感は、後に大きな恐怖へと変わっていく序章にすぎません。信じていた隣人からの最初の裏切り。この物語は、ご近所付き合いという身近なテーマに潜む闇を描き出します。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










