©ママリ
「彩加、また遅かったじゃない。何回言ったらわかるの?門限は7時って決めてるでしょ!」
私が注意すると、彩加は「ごめんね」とは言うものの、どこか上の空。次の日にはまた同じことを繰り返すんです。
「ごめんねじゃないでしょ!お父さんとお母さん、心配するんだから」
そう言っても、まるで響いている様子がありません。口では謝るけれど、行動は全く変わらない。私達が厳しく言いすぎているのかな、と悩むこともありました。そして、さらに心配になったのは、学習面です。彩加は志望校があって、今は受験勉強が大切な時期です。それなのに、最近は塾をズル休みするように。
ある日、塾から「彩加さんがお休みされていますが、体調は大丈夫でしょうか?」と連絡があり、初めてズル休みを知った時には、本当に心臓が止まるかと思いました。
「彩加、塾休んだの?どうして?」
問い詰めると、彩加は目を泳がせて「ちょっと、疲れてて…」と歯切れの悪い返事。明らかに何かを隠しています。勉強も、以前ほど身が入っていない様子でした。リビングで参考書を広げていても、すぐにスマホをいじり始めたり、上の空だったり。成績も少しずつ下がってきているのが分かりました。
「彩加、今、一番大事な時期だよ。受験、どうするつもりなの?」
私がそう言うと、彩加は反発するように「わかってるよ!」と声を荒げる始末。以前は素直な子だったのに、まるで人が変わってしまったようでした。
夫にも相談しました。
「ねぇ、彩加の様子が変なの。ハヤト君と会ってるからなのかな」
夫も同じように心配していました。
「門限も守らないし、塾もサボる。これじゃ受験に響くわ」
夫も眉間にシワを寄せ、一緒に頭を抱えました。どうすれば、彩加にこの状況の深刻さを分かってもらえるのか。そして、この「ハヤトくん」という男の子が、彩加にどのような影響を与えているのか…。親として、不安だけが募っていきました。 ※1
受験期の娘に訪れた変化…
門限を破ったり、塾をサボったり…。親として、本当に心配ですね。しかも、受験生。今がいちばん大事な時期ですが、本人は危機感がありません。
何度注意しても、彩加の行動が改善されることはありませんでした。そこで、彩加を説得し、ハヤトくんとの連絡を試みます。
母が送った、娘の彼氏へのメッセージ
彩加をなんとか説得し、私は、慎重に言葉を選んでメッセージを送信しました。
「ハヤトくん。彩加の母です。いつも彩加がお世話になっています。彩加の門限や塾のことで、心配していることがあります。受験期でもあるので、良ければ一度、お話しませんか?」
親として、冷静に、しかし真剣な気持ちを伝えようとしました。しかし、返ってきたハヤト君の言い分は、あまりにもひどいものでした。
「門限を守って塾に行けというお話ですよね?それって、あなたたち親の勉強をさせたいという勝手な欲望ですよね?」
「わたしたち子どもは親に感謝はしていますが『ここまで育ててやったんだから言うことを聞け』という見返りの発想は良くないと思います」
「自分たちの言うことを聞かなくなることを恐れて強要的な権力で支配するのはあまりに人間として未熟ですね」
「子どもが勉強しないとしても、最終的に苦労するのはその本人。あなたにはなんの影響もない。」
「あなた方の勝手な見栄と世間体と支配欲から、子どもの自由を奪うのはやめてください。」
メッセージを読んだ瞬間、頭に血が上るのがわかりました。これは、中学3年生が書く文章なのでしょうか。誰かに吹き込まれたか、あるいはネットの情報鵜呑みにしているのか。それにしても、あまりにも見下したような言葉の羅列です。
「何これ……信じられない……」
夫もメッセージを読んで顔を真っ赤にしていました。
「こんな生意気なガキ、絶対に許せない!」
夫は怒りに震えていました。こんなひどい言い方をする彼氏と、彩加を付き合わせておくわけにはいきません。私たちはすぐに彩加にハヤトくんはあなたにふさわしくないと伝えました。しかし、彩加は簡単に了承しません。
「いやだ。ハヤトは悪くないよ。私のことを思って自由にさせようとしてくれてるの」 「ハヤトは本当に優しいんだよ」
彩加は、まるで洗脳されているかのように、彼にぞっこんでした。別れさせるならもう学校も行かない、塾も行かない、とだだをこね、部屋に閉じこもってしまいました。深夜、彩加のLINEをこっそり確認すると、そこには夫婦の悪口が書かれていました。
ハヤト「お前の親、まじ毒親じゃん」
彩加「だよねー、ほんと最悪」
そのやり取りを見た時、私の胸は張り裂けそうになりました。あの子はこの彼氏に騙されている。親を「毒親」とまで言わせてしまっている。このままでは、彩加の人生が、本当に取り返しのつかないことになってしまう。その夜、夫は怒りに震えながら、ハヤトくんの親に連絡しようとしました。
夫「こんなメッセージ送りつけてくるなんて、親の顔が見てみたい!」
私は感情的になる夫を必死に止めました。冷静に、事を運ばなければ。 ※2
ハヤトくんから返ってきたメッセージ、がく然としますね…。あまりにも大人を甘く見ているようです。さらに、「毒親」という言葉。素直だった彩加を洗脳しているのは、ハヤトくんで間違いなさそうです。
ですが、今ここで感情的に動いてしまっては、何も解決しません。一度、夫婦で冷静に話し合いをします。
親として、娘を守るために
娘の彼氏・ハヤトくんからのあまりにひどいメッセージ、そして彩加がハヤトくんにぞっこんで、私たち親を「毒親」とまで言っている事実。これ以上、この問題を放置するわけにはいかない。私と夫は、夜遅くまで作戦会議をしました。
「こんな言い方をする子に、彩加を任せておくわけにはいかないわ」
私がそう言うと、夫も深く頷きました。
「ああ。それに、親を『毒親』呼ばわりするような人間が、彩加のそばにいるのは許せない。このままでは彩加までおかしくなってしまう」
話し合った結果、まずは学校に相談することにしました。生徒間のトラブル、特に保護者への侮辱発言となると、学校も黙ってはいないはずです。そして、何より、ハヤトくんの保護者と直接話をする機会を設けてもらうことが一番だと考えました。 ※3
今の状況を看過することはできませんね。門限破り、塾のサボり、そして保護者に対する侮辱的な発言…。学校にも相談することを決めます。
このあと、学校側も今回のことを重大な問題と捉え、ハヤトくんの両親と話し合いをする場を設けます。ハヤトくんの両親に、ハヤトくんの言葉を告げると、絶句した様子。謝罪をしつつも、「仕事が多忙で…」と言い訳をします。その後、ハヤトくんは両親に咎められたのでしょう。今度は、ハヤトくんは彩加を攻撃し始めたのです。
ここで、ようやく彩加の目が覚めます。自分から別れを告げ、受験勉強に打ち込みます。そして見事、志望校に合格。
「毒親」という言葉に屈せず、学校も巻き込み、愛するわが子を守った両親。問題が大きくなったときこそ、冷静に対処しなければいけませんね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










