🔴【第1話から読む】「世話になってるんだから」実家に戻ったシングルマザーに厳しい妹|出戻りシンママが前を向くまで
家を出る決意をしたみずほは、家族にそのことを告げます。そして妹・まおにも自分の気持ちをはっきりと伝えることにしました。
決意を伝えた日
「あのね、私、家を出ることにしたよ」
夕食時、私は意を決して家族に告げた。両親もまおも、突然のことに「ぽかん…」と拍子抜けしたような顔をしている。
「え…どういうこと?」
まおが、ようやくそう問いかけた。母は心配そうな顔を、父は少し寂しそうな顔をしている。
「裁判も落ち着いたし、これからはよつばと2人で暮らしていこうと思うの」
家族みんな驚いた様子だったけれど、両親は「まあ何かあったらまた頼りなさいね」と言ってくれた。よつばは私と2人の生活が楽しみなようで、ニコニコしながら食事をしていた。
妹に対してずっと言いたかったこと
その夜、よつばを寝かしつけた後にリビングで、お風呂上がりのまおと会った。まおは私の顔を見るなり「今2人で出ていくなんて向こう見ずだと思うよ。うまくいかないと思う」とまたネガティブなことを言っていた。でも、私の心はもう揺るがない。
「ねぇ、まおは小さいころから、いつも完璧で失敗なんてしない子だったよね。お父さんとお母さんの期待を一身に背負って、ずっと頑張ってきたんだよね」
私の言葉に、まおは少し戸惑ったように目を泳がせた。
「別に。私はそんな風に思ってないけど?だた、お姉ちゃんが失敗したらまた後悔すると思って。結婚失敗したんだし」
まおは私から言われたことに驚いたような表情になりつつも、また反論した。
「うん。でも、そう思うのはまお自身が失敗を恐れているからだよ。完璧じゃなくて何が悪いの?私は確かに大失敗したと思ってる。でも、失敗したからこそ、よつばと私の新しい生き方を見つけられた。失敗したら、そこからどう立ち上がるかが大事なんじゃない?」
まおは何も言い返さない。でもその目は今までの冷酷な雰囲気ではなくて、複雑な感情が渦巻いているのが分かった。
「私、よつばには『失敗してもいい』って教えたいの。失敗しないことより、失敗しても諦めないで立ち上がることのほうが大切だと思うから」
これが、私がまおに伝えられる精一杯の、そして最大のメッセージだった。まおは何も言い返してこなかった。
独り立ちを決意して、再出発のとき
引っ越し当日。軽トラックに最低限の荷物を積み込み、玄関に立つ。両親とまおが、そこにいた。
「今まで迷惑かけてごめんなさい。これからは甘えずに一人でやっていくから」
頭を下げて、それだけを伝えた。母が「気をつけてね」とだけ言ってくれた。父は、ただじっと私を見つめていた。実家に私が背を向けようとしたその瞬間、まおが声をかけてきた。
「お姉ちゃん、よつば…元気でね」
まおの優しい言葉は、久しぶりに聞いた気がした。きっとまおの中で何かが変わったんだと思う。
「ありがとね」
まおにもお礼を言って、よつばと手を繋いで、家を出た。
「ママ、おひっこし、たのしみ」
よつばが、うれしそうに私の手を握る。この子の笑顔のためなら、どんな困難だって乗り越えられる。よつばと私が幸せに生きるため、私は頑張る。えりも、定期的に連絡をくれると言ってくれた。新しい生活の始まり。ここからが、私の本当の独り立ちだ。
🔴【第1話から読む】「世話になってるんだから」実家に戻ったシングルマザーに厳しい妹|出戻りシンママが前を向くまで
あとがき:独り立ちの決意
この章は、みずほが新しい一歩を踏み出す、物語の大きな節目です。特にまおとの対話は、これまで彼女に押しつぶされそうになっていたみずほが、ついに自分の弱さを認め、乗り越える覚悟を示した瞬間でした。そして、「失敗したっていい。そこから先が大事」という彼女の言葉は、この物語全体を貫くテーマとなっています。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










