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「協力する気あるの?」祖母の介護をめぐり、母と叔母が決裂した日|介護問題で親族と不仲になった話

祖母の介護をきっかけに、長年仲の良かった母と叔母の関係が少しずつ歪み始める。話し合いの度に感情がすれ違い、協力どころか、互いを責め合う日々。美咲は母と叔母の間で、どうにか橋渡しをしようと奔走していた。けれどその努力は、やがて別の関係までも壊してしまうことになる。介護をめぐる親族の不和の裏にある“優しさの行き場”を描く、ひとつの家族の記録。『介護問題で親族と不仲になった話』をごらんください。

🔴【第1話から読む】母と祖母の通話で「怒鳴り声」→支えあうはずの祖母の介護が崩れていく|介護問題で親族と不仲になった話

祖母の介護を巡り、母と叔母の間に深まる確執。板挟みの中で奔走する美咲だったが、やがて従姉妹との関係にも溝が生まれていく。

深まる確執、すれ違う思い

確執 PIXTA

祖母の介護を巡り、母と叔母の対立は日に日に深まった。仲の良かった母と叔母の不和に胸を痛めた私は、険悪な雰囲気を少しでも緩和しようとできることは積極的に動いた。

介護計画の折衷案の模索や、仕事が入っていても世話当番の日は1人でも祖母の家に足を伸ばした。けれど、移動の問題や体調を崩しがちになったりと無理は続かなかった。折衷案についても対立意識が強くなってしまった母には聞き入れられず、さらには「叔母家族とはもう連絡を取らないで!」とまで言われてしまった。

従姉妹との連絡が生んだ波紋

通話 PIXTA

母と叔母の確執が深まることに頭を抱えていたものの、それ以上に私は祖母の体調が気がかりだった。仕事で行けないことが多いからこそ、久しぶりに会った時の祖母の痩せ細っていく姿にショックを受けていた。そのため、世話当番でも仕事などで訪問が難しい時は、祖母の体調を従姉妹の彩花に連絡して確認していた。

「今日も行けなくてごめん……。おばあちゃんの体調、どんな感じ?」

「う〜ん……食は細くなってきてるかな」

「そっか……」

「……あのさ、美咲に言うのもどうかとは思うんだけど」

「えっ?」

「おばあちゃんそんな感じだし、残りの時間を大切に過ごしてほしいと思ってる。だから、介護の体制をしっかりしたいし、家族同士も穏やかでいたい」

「うん……」

「でも、由紀子さんが聞く耳持ってくれないってお母さんが。話し合いできないんじゃ何もしようがないでしょ?」

溜まった憤りを抑えつつ、あくまで冷静に彩花が主張しようとしていることを、私は言葉の端々や語気から感じ取っていた。彼女の言い分はもっともだった。それぞれの家庭事情が上手く噛み合わない現状を前に、母が感情的になって話し合いを放棄しているのは私の目にも明らかだった。

「そうだよね、ごめん。説得はしてるんだけど……もう少し、落ち着く時間が必要なのかも」

「はぁ……そんな悠長にしてる時間ないし、介護もなぁなぁになってきてるし。由紀子さん、そもそも協力する気あるの?」

進展の兆しの見えない母の様子にシビレを切らしたように、彩花の口調は次第に崩れ始め、母への批判的な態度が表れ始めた。彩花との長い付き合いの中で、母へこんな態度や言動を取るのは初めてだった。

「介護については、お母さんなりに考えてるのは本当だから。私からも説得は続けるから、時間をちょうだい?」

「……うん、わかった。急かして悪いけど、早めにお願い。ウチも大変なの」

彩花の最後の一言には、怒りと呆れ、そして疲労が込められているように感じた。

崩れていく“最後の繋がり”

孤独 PIXTA

「このままじゃ、おばあちゃんの介護が成り立たなくなる……」そんな危機感を募らせ、私は母の説得を試みた。

「……ねぇ、お母さん。前にも話したけど、介護について、もう一度叔母さんたちと相談しない?それぞれの事情も変わってきたんだしさ」

母は「介護」の言葉に眉をピクリとさせると、すぐに怪訝そうな表情を浮かべた。そして深いため息を一つ吐くと、気怠いような雰囲気で話し始めた。

「もうそのことは話したでしょ?うちは向こうの家よりおばあちゃん家まで遠いの。休みにもバラつきがあるから泊まり込みだって難しい。前に無理して体調崩してたじゃない?」

「それはそうだけど……。でも、私たちが行けない穴を彩花ん家が埋めてくれてるんだよ?せめて、費用の負担をもう少しこっちで持ったり……」

「そんな余裕ないわよ。そもそも介護費用の手出しの割合だって、それぞれの家庭の収入に沿って考えたんだから」

「そうだとしても!叔父さんも持病のことがあって大変だって彩花に聞いたよ?」

頑なに譲らない母の態度に、私はつい声を荒げてしまった。

「彩花ちゃんに聞いたって……美咲、まだ連絡取ってるの?もうやめなさいって言ったでしょ!?」

──結局、私は母の説得に失敗、さらに言いつけを守っていなかったことで母にも距離を取られることになってしまった。

その日の夜。私は祖母の体調の確認も兼ねて、彩花に説得の失敗を伝えようと連絡した。しかし、通話が始まるや否や彩花が取り乱した様子で捲し立ててきた。

「ねぇ美咲!どういうこと?由紀子さんがお母さんに『もう連絡してくるな』って言ってきたみたいなんだけど」

「えっ……。それは、ごめん。ただ今日、お母さんを説得してみたんだけど全然話聞いてくれなくて……。彩花と連絡取ってることも気に食わないみたいで」

「はぁ?何それ……。じゃあ結局、由紀子さんは話し合う気も、介護に協力する気もないんだ」

「それは、少し違うと思う……」

「どうして?介護の分担にお互い不満なのに、改善しようとしないなんてもう色々放棄してるじゃん」

堪忍袋の緒が切れた彩花から、今まで溜めた鬱憤を鋭い言葉として投げかけられた。その言葉は否定し切れないもので、私はただ受け切るしかなかった。

「てかさ、美咲も由紀子さん説得するって言って出来てないし、同情だけはするクセに由紀子さんの肩を持つじゃん」

「えっ……」

「美咲って、嘘つきなんだね」

直後、通話は一方的に切られた。母と叔母を繋ぐ、最後の砦だと思っていた彩花との関係。そこに今、大きな亀裂が入ったことを突きつけるように、通話終了の規則的な音声が鼓膜を揺らした。

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あとがき:「家族の優しさ」がぶつかるとき

介護という現実の中で、それぞれが「正しさ」や「思いやり」を抱えながらも、いつしか相手を責めてしまいます。本当は、誰も悪くない──ただ、余裕をなくしてしまっただけ。それでも、ぶつかり合った後に残るのは「想いの深さ」だと信じたい。誰かを支えるはずの優しさが、自分を追い詰めてしまう。本エピソードが、そんな現実を静かに見つめ直すきっかけになればと思います。

※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。

🔴【全話読む】介護問題で親族と不仲になった話

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