小姑・絵里との関係に悩む主人公・沙耶。明るく気配り上手な義姉だが、その“自然体すぎる行動”に、時折モヤモヤを抱えてしまう。家族の調和と義理の関係、その狭間で揺れる物語。
楽しみな家族旅行
「ねぇ〜、ひろとくんとかなたに、あとなんにちであえる?」
目を輝かせながらそう聞いてくるのは娘の花。私、倉持沙耶は夫の啓介と2人の子ども、娘の花と息子の悠と4人で暮らしている。実は来週末、私たち家族は兄家族と一緒に総合公園に遊びに行く約束をしている。久しぶりに従兄弟に会うのと、以前行って気に入った総合公園に行けることに、娘は興奮冷めやらぬ様子だった。
「う〜ん、あと14回寝たら会えるかな〜」
「え〜14かい〜」
先が長いことにがっかりする娘の様子を、まだ小さい息子の悠を抱きながら微笑ましく眺めているとスマホが鳴った。通知バッチを見ると義姉の絵里さんからのメッセージだった。
「来週の週末、ライブと観光でそっちに行くんだ!寄ってもいい?」
私は胸のざわつきを覚えつつ、その感覚を振り払ってメッセージを打ち込んだ。
「お義姉さん、お久しぶりです。来週の週末は私の兄家族と外出予定でした」
そう返信すると、すぐに返信が届いた。
「そっか!ちなみにいつ行くの?予定が合えば、私も行きたいな〜。花ちゃんと悠くんと遊びたいし!」
少し、胸が詰まった気がした。でも、気のせいだと言い聞かせ、義姉に予定を伝えた。その後、どうやら予定が合ったようで、当日は私たち家族と兄家族に加えて、義姉も参加することが決まった。
総合公園での違和感
予定当日。義姉を駅で拾い、総合公園へと向かった。向かう車中で義姉は助手席にいたが、終始身体を後部座席に傾け、子どもたちと交流していた。子どもたちも喜んでいて、退屈せず上機嫌でいてくれることは嬉しかった。だけど、私はなぜか1人悶々としていた。
総合公園に到着し、兄家族と合流すると娘は従兄弟にベッタリだった。そして、男に負けじと活発に遊具を動き回っていた。娘たちには夫と兄、そして義姉がついて周り、私はまだ小さい息子と兄の奥さんと一緒に、その様子をベンチから眺めていた。元気にはしゃぐ子どもたちの姿は、ただただ微笑ましかった。
ひとしきり遊んでお昼になると、お弁当を広げて食べることに。食事中、お手洗いに立ち、戻る。すると戻る道中、遠目に義姉がスマホを掲げている姿が見えた。全体写真を撮っているのかと思っていたが、一向にスマホを掲げている手が下がらない。それに、近づくにつれてスマホに向かって義姉や子どもたちが話しかけていることに気づいた。
「花ちゃんね、男の子2人に負けないくらい速く走ってたの!ね〜?」
「ね〜!」
義姉のスマホ画面には義父と義母が映っていて、テレビ電話を繋いでいた。
「あ、沙耶ちゃん!今お父さんとお母さんに子どもたち見せてあげてたの!」
屈託のない笑顔を向ける義姉に笑顔を返すも、私の胸中は複雑だった。義姉に悪意がないことは理解しつつ、私は義姉の行動に“少しの身勝手さ”を感じざるを得なかった。
残ったモヤモヤ
公園で遊び終えると、義姉をライブ会場近くのホテルに降ろして私たち家族は帰宅した。日中の義姉の行動へのモヤモヤを残しつつも、夕食やお風呂、寝かしつけを済ます頃にはほぼほぼ晴れていた。
リビングに戻り、ゆったり過ごしていると義母からメッセージが入った。珍しいなぁと思いメッセージを開くと、そこには複数枚の今日の子どもたちの写真に1通のメッセージが送信されていた。
「絵里から写真送ってもらいました。子どもたちも楽しそうでつい連絡しちゃった」
その写真とメッセージに、さっきまで消えかけていた義姉に対するモヤモヤがまた胸を埋め尽くした。無断で子どもたちの写真を撮ったこと、テレビ通話をしたこと。私の胸にはそのことがどうしてもつっかえていた。でも、誰にも言い出せない感情に、私はただ黙って抱え込むことしかできなかった。
悶々とする胸中、昔の記憶が思い返される。思えば、義姉に対する違和感はあの頃から抱え始めていた――。
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あとがき:違和感のはじまり
家族の中で抱いた小さな違和感は、言葉にできないまま心の奥に沈んでいく。最初はただの気のせいだと思っていても、やがてその違和感は静かに形を変え、関係の歪みとなって現れる。義姉との関係に芽生えた感情は、沙耶にとって“はじめての違和感”だった。次話では、沙耶が義姉に対して違和感を抱くきっかけが語られます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










