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涙ぐんで“産んでくれてありがとう”→義姉の言葉にモヤモヤが止まらない理由|弟の子を独占する義姉

家族の中でも、誰より頼りにしていた義姉。それなのに、妊娠を機に感じ始めた“違和感”が、沙耶の心に静かに広がっていく。優しさの裏に潜む独占欲のようなものに、胸の奥では何かがざらついていた。このとき沙耶はまだ、義姉との関係が長く自分を苦しめることになるとは、思いもしなかった。『弟の子を独占する義姉』をごらんください。

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夫の姉・絵里は明るく面倒見のいい義姉。結婚当初は頼りになる存在だったが、妊娠をきっかけに“距離の近さ”が少しずつ気になるように。そしてある日、決定的な違和感を覚える出来事が起こる。

頼れる義姉のはずが……

笑顔 口元 PIXTA

私が義姉の絵里さんと初めて会ったのは、婚約の挨拶に夫の実家を訪れた時だった。

「……なんか、緊張してきたね」

「え〜。啓介は実家で家族と会うだけでしょ?リードしてよぉ……」

私は夫との付き合いこそ長かったものの、それまで義家族と会ったことはなく、話だけ夫から聞く程度だった。そのため、挨拶当日、私はガチガチに緊張していた。

しかし、そんな緊張が解れたきっかけは、義姉の絵里さんだった。

「沙耶さんが緊張するのは分かるけど、なんでウチの人らが緊張してんのよ〜」

「でもびっくり!まさかあの啓介が、こんな素敵な娘を連れて来るなんて。お姉ちゃん、感激……」

義両親も緊張していてぎこちなかった空気を、朗らかな義姉の雰囲気と軽妙な語り口によって和やかなものに変えてくれたのだ。そのおかげで私も義両親も次第に自然な会話ができるようになり、安心して婚約の挨拶を済ませることができた。

この時の第一印象もあって、私の中で義姉は親類の中でも頼りやすい人と思うようになり、婚姻後も何かと相談させてもらっていた。慣れない結婚生活で弱音を吐いた時も、仕事の愚痴も、義姉は変わらぬ朗らかな態度で接してくれた。その包容力に私は安心感を得ていた。

そんな義姉に対して違和感を抱き始めることとなったのは、私が初めての妊娠をしてからのことだった。最初の頃は、変わらぬ義姉の朗らかな雰囲気と積極的な協力に甘えさせてもらい、純粋に感謝しかなかった。

ただ次第に、子どもの話題について義姉がやけに入ってくるようになった。妊娠期間中にした方がいいとされることを調べては「試してみよう!」と半ば押し付けるように勧めてきたり、子ども用品を勝手にリストアップして「これなんてどうかな?」と提案してきたり……。

初めは姪の誕生に浮かれて、世話焼きになっているのかな、くらいに思っていた。しかし、私の中で決定的に干渉されていると感じる出来事が起きる。

干渉と戸惑い

姉 PIXTA

それは夫とともに、義実家を訪れていた時。2人きりになった茶の間で子どもの名前について話し合っていると、どこからともなく義姉が茶の間にやってきて、話し合いに混ざっては話を回し始めたのだ。

その時は義姉の提案を聞きつつ、夫が「2人で考えさせて」と言って落ち着いた。けれど、私の中での義姉への違和感が色濃くなった出来事だった。

「産んでくれてありがとう」

不安 PIXTA

それでも義姉の朗らかさや親切な態度は、妊娠で心身に負担のある私にとって、とても支えになっていた。そして、その支えを受けて私は無事に第一子である娘の花を出産した。

出産後の面会では、私の家族と義家族が来てくれた。私への労いや気遣いの言葉がけに溢れる中、義姉も目に涙を浮かべながら私に言葉をかけてくれた。

「沙耶ちゃん、産んでくれてありがとう」

言われた直後は、涙ぐむ義姉の様子や場の雰囲気に呑まれて流していた。けれど、時間が経てば経つほど、義姉の言葉が胸に引っかかった。

別に、義姉に特別な意図はないのかもしれない。ただ私には、あたかも義姉のために娘を産んだような意味合いを感じざるを得なかった。

「子どもを産んだのは夫婦の意思だし、義姉や他の何かのために産んだわけではない」と、いつしか私は義姉に対して憤りを覚えていた。

それから義姉がお見舞いに来たり、退院後に子どもに近づいたり触れたりするのに私は心の中で抵抗感を感じるようになった。でも、自分の娘を愛でてくれる叔母であり、婚約の頃からお世話になってるという負い目。それに義姉に対して敏感になってる自分がおかしいのかもしれないという思いが、義姉への抵抗感を誤魔化した。

今は気になるけど、じき慣れる──そう自分に言い聞かせて、私は子育てを始めた。けれどこの違和感は、その後も長らく私を悩ませることになるのだった。

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あとがき:優しさの輪郭

人の“優しさ”は、時に境界を曖昧にしてしまいます。義姉の明るさも思いやりも、本来はまっすぐな愛情からのものだったのかもしれません。それでも、受け取る側の心が疲れているときには、愛情さえも重荷に感じてしまうものです。絵里の優しさに戸惑いながら、沙耶は“家族との距離”という課題に初めて直面していました。その違和感が、やがて避けられない亀裂へと変わっていくことを、まだ知らずに。

※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています

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