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🔴【第1話から読む】遠慮がない夫と、口が悪い実母→水と油のような2人にハラハラする妻|夫と実母は仲が悪い
帰省初日から起こってしまった夫と母の摩擦。裕子はなんとか平和を保とうと、必死に二人の間を取り持とうとしますが...
危うい均衡
帰省二日目の昼下がり。窓からは暖かな冬の陽射しが差し込んでいて、昨夜の気まずい雰囲気が嘘のように穏やかでした。リビングでは母がきっちりとした手つきで洗濯物を畳み、私はキッチンで昼食の支度をしていました。そして、夫は食器を片付けてくれています。
それだけ見れば、どこの家にもある平和な正月の風景でした。けれど、私には分かっていました。この静けさは、いつでも崩れる危うい均衡の上にあることを。
母「あら、このタオル、畳み方が少し違うわね」
私「あ、ごめん。後で直しておくね」
夫「さっき僕がやりました。畳み方が違ってましたか?」
母「いえ、助かるけど……男の人って、どうしてもこういうの苦手でしょ」
その言葉に、夫の手が一瞬止まり、微妙な間が流れました。私は慌てて笑って、「手伝ってもらってるだけでありがたいよ」と言いましたが、母は小さくため息をつきました。
夫は手に持っていた皿を置いて、母の元へ行き、黙ってタオルを畳み直しました。その背中に、言葉にならない不満が滲んで見えるようでした。
それぞれの正しさ
気まずさを振り払うように、私は味噌汁を温め始めました。味噌の香りが立ち上ると、母が背後から覗き込んできました。
母「味見、もうした?塩分、ちょっと多くない?」
私「あ、まだ途中で……」
母「去年も少し濃かったのよ。お父さん、血圧高いんだから」
夫「そんなに濃くないと思いますけど」
その一言で、空気がまた凍りました。夫は穏やかに言ったつもりだったのでしょう。でも、その声には少し棘がありました。
母「そう。でも、あなたたちは若いから気づかないのよね」
夫「いえ、そういうことでは……」
私「ねぇ、もう少し優しく言い合わない?」
そう言いながらも、私は心底焦っていました。この二人の会話のテンポが少しでもずれると、何かが壊れてしまいそうでした。
母が鍋をのぞきこみながら、「ちょっと水を足しておくわね」と勝手におたまを持ったその瞬間、夫が少しだけ眉を上げました。何も言うことはありませんでしたが、その表情がすべてを物語っていました。
この家の中では、小さな緊張感が静かにくすぶり続けていました。そんな重苦しい空気の中、私は鍋から立ち上る湯気を見つめながら、深く息をつきました。
洗濯物も料理も、些細なことなのに、どうしてこんなに空気が重くなるのだろう。母も夫も、どちらも悪気があるわけじゃない。ただ、互いの「正しさ」が少しずつ擦れ合って、棘になっているだけ。
しかし二人の微妙な距離感と小さな摩擦が、帰省中はずっと消えそうにありませんでした。
🔴【続きを読む】「もう限界」正月帰省中に帰ると言い出す夫→実母との言い争いで“最悪の空気”に|夫と実母は仲が悪い
あとがき:板挟みの戸惑い
板挟みになり、どうしたらいいかわからなくなってしまうというような経験は、きっと誰にでもあるのではないでしょうか?誰も悪くないけれど、感じる違和感や緊張が日常に影を落とします。次回は、その張り詰めた空気がついに表面化することになります。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
イラスト:まい子はん










