専業主婦さゆりは、夫・正勝のスマホに届いた「温泉旅行」のメッセージで、長年の疑念が確信に変わる。問い詰めると、正勝は風俗の女性との浮気を認めた。夫を失いたくないと願うさゆりの心は、まだわずかな望みを抱いていて―――。
私の家族と大好きな義実家
さゆり、32歳。専業主婦になってから、この名前は「みちるちゃんママ」「みゆちゃんママ」と呼ばれることが多くなりました。夫の正勝は33歳。長女の4歳のみちる、次女の2歳のみゆ。愛らしい2人の娘たちと、ごくごく普通の四人家族。これが、数日前の私たちの形でした。
私たち夫婦は特に仲が良いというわけではありませんでしたが、義実家との関係には恵まれていました。義両親は孫たちをかわいがってくれるし、そして何より、正勝の姉である静香さん(35)が、私にとっては実の姉以上に頼れる存在でした。
静香さんはサバサバしていて、いつも私の良き理解者で、本音で話せる数少ない人だったんです。甥っ子たちも含めて、毎週のように集まってご飯を食べ、旅行にも行きました。正勝の家族なのに、私の居場所はそこにある、そう感じていました。
温泉旅行…?夫の浮気が発覚
そんな平和な日常が、1通のメッセージで崩れ去りました。目を離したすきに次女・みゆが、正勝のスマホをいたずらしていました。
「あ、コラ!みゆ、だめよ。」
と、スマホを拾いあげるとそこには、夫宛てに届いた女性からのメッセージがありました。
「温泉旅行、もうすぐだね!すごい楽しみ!」
私は凍りつきました。
「怪しい」という疑念は、実は数か月前からありました。帰りが遅い日が増えたり、スマホのロックを妙に気にしたり。でも、私はずっと目を背けていました。クロだと確定してしまうのが怖かったからです。私が「知らない」でいれば、この家族は壊れないと思っていたので…。
でももう、こんな事実を知ったら引き返せない。
「ねえ、なんかメッセージがきてるよ」
あくまで冷静なふりをして正勝にスマホを渡した直後、血の気が引いた顔を見て、全てを悟ったんです。子どもが眠った後、正勝と話し合いをしました。
「ねえ、どういうことなの?」
絞り出すような私の声に、正勝は観念したように小さな声で言いました。
「ごめん、ちょっと…魔が差して…」
魔が差した夫を許すべき?
魔が差したなんて軽い言葉では信じられないという思いと、1回だけなら許すべきじゃないか、そうして家族を守るべきじゃないかという思いが交錯しました。
「温泉楽しみって、予約してるってことだよね?いつ行くつもりだったの」
「いや、予約なんてしてないよ。勝手に営業かけられてるだけ。お店の子で、遊びだったから…」
遊び。その言葉の軽さが、私の胸に重くのしかかりました。遊びだから許されると思っているのでしょうか…。でもまだ、このときの私は2人の娘たちのパパである正勝を、失いたくない、という気持ちに囚われていたんです。
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あとがき:「知らない」という名の鎖
平和な日常が崩壊する瞬間は、いつも些細なきっかけです。さゆりが恐れていたのは、「黒」だと確定すること。その「知らない」でいる状態が、この家族を守る最後の防波堤だと信じていたからです。しかし、一度見てしまった現実は引き返せません。正勝の「魔が差した」という軽薄な言い訳に対し、まだ彼の言葉を信じようとするさゆりの弱さ。それは、娘たちの「最高のパパ」を失いたくないという、母親としての純粋な愛情ゆえの葛藤でしょう。彼女のこの後の選択が、家族の形を決定づけます。










