🔴【第1話から読む】1歳半の息子が女の子の手をかんだ→相手の親が激怒で立ち込める暗雲|保育園で慰謝料請求された話
ゆかりさんは慰謝料を要求されたことを園に相談。「払わなくていい」と言われますが、まだ不安が残ります。園でのママ友にも相談できず、久々に再会した二人の親友に打ち明けてみることにしました。
正しさは、少し冷たい
月曜日の朝。夫と相談した結果、私はまず園に電話を入れることにしました。週末の訪問で久美子さんから「慰謝料を払ってほしい」と言われた件について、園としての考えを聞きたかったのです。
電話に出たのは担任の先生でした。少し間をおいて、園長先生も代わってくれました。
「園としては慰謝料を払う必要はない、という認識です」
はっきりとした声と断定に安心しました。
「園内で起こったことは、園に責任があります。今回も保育の中でのできごとでしたので、保護者同士で直接やりとりをする前に、まずご相談いただきたかったです」
丁寧で落ち着いた口調でしたが、その言葉には、はっきりとした意思が感じられました。
しかし、本来は久美子さんの娘の手をかんだのがうちの子であることは、園が相手に伝えない方針だったはず。先生方で久美子さんに話をしっかりしてもらえば、こうして家に呼ばれることもなかったのに。
担任のさくら先生はまだ若く、久美子さんの剣幕に負けて私たちのことを伝えるしかなくなったのかもしれません。そして、相手がはっきりしたことをいいことに、久美子さんは慰謝料請求までし始めてしまって…。
園への報告電話を切ったあと、私はスマホをソファに放り出し、頭を抱えました。
誠意って、なんだろう。私にとっての誠意は心をこめて謝ることでしたが、それで解決するのはもう無理なのでしょうか―――。
誰にも話せない孤独
その週末、久しぶりに家に遊びに来てくれた中学時代の友人・あっことさおりに、この事実を伝えることにしました。誰かに聞いてほしかったのです。2人は私の転校人生のなかで、数少ない長く続いている友達。小学校は何度も変わったけど、中学校は3年間通い通せました。
その中で出会ったふたりは、私のことをよく理解してくれている親友です。大学進学を機に私はまた引っ越したけれど、就職後に2人の住む街に戻り、夫と出会い、結婚しました。
彼女たちの前では、見栄を張る必要も、取り繕う必要もありません。
ジョークというエールに救われた
「…実はさ、たつきが、保育園で女の子を噛んじゃったの」
最初の一言が出るまでに少し勇気がいったけれど、一度話し始めると、言葉が止まりませんでした。園でのこと。謝罪の場での久美子さんの言葉。家まで呼び出されたこと。慰謝料を求められたこと。
「えっ?謝ったのに、それ以上の何が誠意なの?」
「ゆかりと旦那さんは、ちゃんと謝ったんでしょ?」
ふたりは私の思いに同意してくれました。
「それ、請求する方が非常識だって!」
「小さい子が噛むのなんて、あるあるだよ」
子どもがいるさおりにそう言ってもらえて安堵しました。私の感覚は間違っていなかった…。張り詰めていた気持ちがゆるゆるとほどけていく、そう感じました。相談してよかった。心からそう思いました。
そして、さおりが唐突に言ったのです。
「謝罪に持ってったお菓子って何?」
「ローズデパートのトレビアンラスクだよ」
私が答えると
「濃厚チョコの方じゃなかったんでしょ!」
とさおり。するとあっこも
「それだ!チョコの濃度は誠意の濃度、ラスクの厚さは反省指数!ってウチのばーちゃんが言ってたもん!」
大真面目な顔でそう言うあっこに、私たちは大笑いしました。ふたりのジョークにエールを感じるとともに、自分の感覚を信じて「慰謝料請求については断る」と固く決意できた瞬間でした。
🔴【続きを読む】【スカッと】1歳半の行為に慰謝料請求した保護者、特大ブーメランで大赤面|保育園で慰謝料請求された話
あとがき:気持ちを共有できる人がいる幸せ
どんなに苦しい状況でも、寄り添ってくれる人がいるだけで、人はもう一度立ち上がれるのだと思います。親友からのエールを受けて、ゆかりさんの心は前を向くことができました。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










