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大人には見えなかった真実。「私たちは友だちだった」通学路でつながった心|あなたの子とは遊ばせない

仕事と子育てに追われながらも、おだやかな日常を大切にしていた、母・真帆。しかし、娘の友だちの母・咲希から、突然、突きつけられたのは、「もう、娘と遊ばせたくない」という言葉だった…。公園での「子ども同士のトラブル」をきっかけに、親同士の“常識”がすれちがっていく様子を、双方の視点から描く作品、『あなたの子とは遊ばせない』最終話をごらんください。

PIXTA

🔴【第1話から読む】「娘とは遊ばせないで」ママ友から、突然の絶縁宣言!明かされた”衝撃の理由”に絶句

謝罪をきっかけに、関係が断たれ、結衣は強いショックから登校を拒否するようになった。真帆は、母として結衣に寄り添い、少しずつ心を立て直していく。一方、沙良も理由を知らされないまま、「遊んではいけない」と言われ、結衣たちと距離を置くことになる。

結衣の心─「拒絶された」と思った日から

不登校 PIXTA

この町に引っ越してきて、学校の外に友だちができたのは、はじめてだった。

公園で遊ぶ時間は、学校とは少しちがっていて、沙良ちゃんと一緒にいるとワクワクした。毎日、会うのが楽しみだった。

沙良ちゃんは、いつもお母さんと下の子と一緒に公園に来ていた。一緒に遊んだり、おかしをもらったり──私にとっては、それが、まるで家族以外の家族がいるみたいで、胸の奥があたたかくなった。

でも、あの日。

ママと一緒にあやまりに行った日から、全部が変わった。

(迷惑だったんだ)

そう思った瞬間、胸の中がぎゅっと苦しくなった。

もう、話しかけちゃいけない──

そう決めた。

ショックで学校をしばらく休んだけど、ママと過ごすうちに何とかまた通えるようにはなった。

だけどあの日から、もう公園には行かなくなった。

学校はちがうけど、毎朝、登校する時に沙良ちゃんとは顔を合わせていた。だけど、沙良ちゃんに会わないように時間をずらしたり、下を向いて歩いた。

(会ってイヤな顔されたらどうしよう……)

(また怒られたらどうしよう……)

そんな不安がずっと胸に引っかかったままだった──。

沙良の心─理由を知らされなかった「別れ」

寂しい PIXTA

結衣ちゃんたちと遊ぶのは、楽しかった。

自分からは言えないことも、結衣ちゃんが自然に引っ張ってくれて、知らない遊びをたくさん教えてくれた。

少しだけ、ついていけない時もあったけど、イヤじゃなかった。だから、あの日のことは、びっくりした。

「ごめんなさい」

そう言われて、何が起きたのか分からなかった。

その日から、結衣ちゃんたちは公園に来なくなった。

「もう、あの子たちとは遊ばないで」

ママはそう言った。

理由は分からなかった。でも、逆らえなかった。

朝の通学路。いつもなら結衣ちゃんたちと会って、放課後の遊ぶ約束をするのに…。あの日から、ひよりちゃんしか見なくなった。

ひよりちゃんに結衣ちゃんのことを聞くと、「落ち込んでて、お休みしてるの」と教えてもらった。胸の奥がズキッと痛んだ。

(どうしよう、私のせいだ……)

そんなふうに思った。あやまりたいと思った。だけど、私と会ったらイヤな気持ちにさせてしまいそうで、どうしたらいいのか分からなかった。

そんな私にできることは、また結衣ちゃんに会えることだけを密かに祈りながら、いつもの通学路を通ったり、公園で遊んだりすることしかなかった。

また会いたい──ただ、それだけだった。

変わらないもの─すれ違いの先で交わした言葉

笑顔 小学生 通学路 PIXTA

沙良ちゃんと会わなくなってしばらくたった。

一緒に遊んでいたころのようなワクワクはないけど、少しずつ前向きになり始めていた。

朝の通学路…角を曲がった時だった。反対側の歩道の沙良ちゃんと目が合った。

久しぶりに会えたことでうれしくなる気持ちと同時に、「イヤな顔されたらどうしよう……」と、強い不安が込み上げてきた。

身体が固まり、声も出せずにいた、その時だった。

「おはよう、結衣ちゃん」

それは、あのころと同じ声だった。

一瞬、何も言えなかった。でも、気づいたら口が動いていた。

「……おはよう」

小さな声だったけど、沙良ちゃんは笑った。

「今日、算数のテストがあるの。結衣ちゃんは?」

「え、私は漢字のテスト……」

それだけの会話なのに、胸が少し軽くなった。

あのころのように、約束をするわけではない。

でも、お互いの心は確かにお互いへと向かっている。そんな気がした。

他愛のない会話をしばらくした後、それぞれの学校に向けてまた歩き出す。進む方向は反対だけど、今日はどこか、心強さと晴れやかさを感じていた。

「結衣ちゃ〜ん、またね〜」

振り返ると、沙良ちゃんが手を振っていた。その表情は笑顔だった。

「沙良ちゃ〜ん、またね〜」

ぎこちない笑顔ながら、私も控えめに振り返した。

公園では、もう会えないかもしれない。前みたいには、戻れないかもしれない。

それでも──私たちは、ちゃんと友だちだった。

今も、それは変わっていない。そう思えた朝だった。

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【全話読む】
あなたの子とは遊ばせない

大人の決断の向こうで、友情は静かに息づいていた

大人の都合や判断は、ときに子ども同士の関係を簡単に断ち切ってしまう。

けれど、理由を知らされなかった子どもたちは、それぞれの場所で傷つきながらも、相手を思い続けていた。

第5話では、こわれてしまったように見えた関係の中に、確かに残っていた“友情”が描かれる。元には戻れない。けれど、交わしたあいさつと笑顔は、彼女たちが友だちだった証。静かでささやかな救いが、物語をそっと締めくくる。

※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています

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