26歳のサツキは、20歳の妹かなでから「運命の出会い」を報告される。相手はイケメン美容師の純一。浮かれる妹をよそに、サツキは出会って即交際というスピード感と、彼の完璧すぎる振る舞いに拭いきれない違和感を抱く。
妹の彼氏は美容師
「ねえお姉ちゃん、見て!カッコよくない?」
妹のかなでが、キラキラした目でスマホの画面を突きつけてきたのは、数か月前のことだった。 画面に映っていたのは、いかにも「今どきの美容師」といった風貌の男。緩くパーマをかけた髪に、清潔感のあるファッション。名前は純一、26歳。私、サツキと同い年だ。
「ああ、確かに整った顔してるね。この人が今の彼氏?」
「そう!私、ずっと通ってた美容室が閉店しちゃって美容室難民だったでしょ?たまたま飛び込みで入ったお店で担当してくれたのが純一くんなの。もうね、運命感じちゃった」
幸せそうな妹を横目に感じる違和感
かなでは、私より6歳下の20歳。まだ大学生で、世の中の酸いも甘いもこれから知っていく年ごろだ。対して私は26歳、社会人としての荒波にもまれ、男の「表の顔」と「裏の顔」がある程度見分けられるようになってしまった。
「1回しか会ってないのに付き合ったって、展開早くない?」
「えー、お姉ちゃん考えすぎだよ!純一くん、すごく情熱的なんだもん。毎日LINEくれるし、バイトの迎えにも来てくれるんだよ?」
かなでは幸せそうに笑う。その笑顔を見ていると、私の心配も「独身女のひがみ」みたいに思えてきて、それ以上は何も言えなかった。
「お姉ちゃんも今度、一緒にご飯行こう。純一くんも会いたがってる!」
「はいはい、機会があればね」
そんな風に軽く流していた。でも、心のどこかで小さな違和感があった。26歳の現役美容師が、たった1回カットに来ただけの20歳の大学生に、そんなにすぐ本気になるものだろうか?
心配は膨らむばかり
美容師という職業柄、女性の扱いに慣れているのは当然だ。営業スマイルと本気の恋の区別がつかなくなっているんじゃないか。あるいは、ただの「狩り」を楽しんでいるだけなんじゃないか。
でも、かなでは本当にうれしそうだった。
「純一くん、仕事ですごく指名が多いんだって。忙しいのに私のために時間作ってくれるの、本当に優しいんだ。いつもおしゃれなお店につれて行ってくれるの!なかなかタイミング合わなくて家には行けてないんだけど、今度家で飼っている熱帯魚見せてくれるって!素敵でしょ!?」
その言葉を信じてあげたい。妹の初々しい恋路を邪魔したくない。 私は「お幸せにね」とだけ言って、その場を濁した。 この時の私はまだ知らなかった。その「優しい彼氏」の正体が、嘘で塗り固められた最低男だったなんて。
日常の中に潜む違和感は、ある日突然、最悪な形で姿を現すことになる。
あとがき:信じたい気持ちと、騒ぎ出す女の勘
恋に落ちた瞬間の無敵感って、本人には何を言っても届かないものですよね。「運命」という言葉でフィルターがかかってしまう妹のかなでと、社会の荒波を知って慎重になった姉のサツキ。この対比がリアルで、読んでいるこちらも「その男、大丈夫?」と身を乗り出してしまいます。清潔感があって、情熱的で、マメな美容師……。条件がそろいすぎている時ほど、裏があるのではと疑ってしまうのは、女の防衛本能かもしれません。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










