結婚1年、アプリ婚の成功例を自負していたりかこ。ある夜、退会し忘れていたアプリを軽い気持ちで開くと、そこには「ログイン:2時間前」という夫・亮平の形跡が。残業と嘘をつく彼の裏の顔に、吐き気が走る。
アプリで出会った私たち夫婦
「ねえ静香、私って幸せだよね?」
カフェのテラス席で、私は親友の静香に問いかけた。
「何よ藪から棒に。亮平さんと結婚して1年、喧嘩もしてないんでしょ? 羨ましい限りよ」
静香は呆れたように笑いながら、アイスラテを啜った。
私、りかこ(29歳)。夫の亮平(30歳)とは、2年前、マッチングアプリで出会った。穏やかで優しくて、私の話をいつも「うんうん」と聞いてくれる。
子どもはまだだけど、共働きで平穏な日々。私たちは、いわゆる「アプリ婚」の成功例だと自負していた。
出会いのきっかけのアプリを退会し忘れていた
その日の夜、スマートフォンの整理をしていた時のことだ。
「あ、これ。まだ残ってたんだ」
画面の隅に追いやられていた、ピンク色のアイコン。私たちが運命の出会いを果たした、あのマッチングアプリ。結婚してからは一度も開いていなかった。退会手続きを忘れていたことに気づき、私は軽い気持ちでアプリを起動した。
懐かしい画面。そこには、かつての私のプロフィールが残っていた。
「ついでに、亮平のも残ってるのかな……」
ほんの、本当にほんの少しの出来心だった。夫の名前で検索をかける必要すらなかった。かつてやり取りをしたメッセージリストの最上部に、彼のアイコンはあった。
2時間前にログインしていた夫
私の心臓が、ドクンと嫌な音を立てた。アイコンの横に表示されたステータス。 【ログイン:2時間前】
「え……?」
指先が冷たくなる。2時間前?その時、彼は「残業で遅くなる」とLINEをくれていたはずだ。
画面を凝視する。彼のプロフィール写真は、私と付き合っていたころのままだ。けれど、自己紹介文が微妙に更新されている。『仕事が忙しくて癒やしを求めています。まずはメッセージから』
「癒やし……? 私がいるじゃない」
声が震えた。同時に、玄関の鍵が開く音がした。
「ただいまー。ごめん、遅くなった!」
リビングに入ってきた亮平は、いつもの優しい笑顔だった。その笑顔の裏で、ついさっきまで見知らぬ誰かを探していたのかと思うと、吐き気がした。
「おかえり……お疲れ様。今日、忙しかった?」
「ああ、課長に急な資料作成頼まれちゃってさ。参ったよ」
彼は鞄を置き、真っ先に手を洗いに行く。その背中を見つめながら、私はスマートフォンの画面をそっと閉じた。
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あとがき:幸せという名の「薄氷」
愛する人の背中が、一瞬で「得体の知れない他人」に変わる恐怖。マッチングアプリという、かつて二人を結んだ「運命の場所」が、今度は最悪の裏切りの舞台になる皮肉が効いていますね。亮平の「ただいま」という優しい声が、スマホの画面一つでこれほどまでに不気味に響く。平穏な日常が崩れる音は、意外にも静かで、そして冷酷なものだと思い知らされる導入です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










