かよこは立派な母と妻をこなしながら外でも働くOL。そんな彼女の職場には、素敵な同僚がたくさんいます。しかしそこにやってきたのは…?
みんな優しい、素敵な職場
朝、カーテンの隙間から差し込む柔らかな光が、寝室のフローリングを白く染めています。 私は隣で眠る夫の規則正しい寝息を聞きながら、そっとベッドを抜け出しました。
四十二歳という年齢になり、朝の目覚めが以前より早くなったのは加齢のせいかもしれませんが、今の私にとっては「一人の時間を楽しむ贅沢」でもあります。
キッチンに向かい、ケトルでお湯を沸かしながら、窓の外を眺めます。
二十代の頃、広告代理店で馬車馬のように働いていた時期の私が見たら、今の私を何と言うでしょうか。当時は毎日終電で帰り、コンビニのパスタを啜りながら、明日という日が来なければいいと願っていました。
けれど、結婚して娘を授かり、一度専業主婦を経て再就職した今、私は人生で最も「自分らしい」時間を過ごせていると確信しています。
娘を抱きしめると、日向のような匂いがします。
今の私は、十六時には仕事を終え、十七前には必ず幼稚園に迎えに行くことができます。
かつての私には想像もできなかった、地に足のついた生活。それを支えてくれているのが、今私が勤めている小さなテレアポ代行会社でした。
八時半に家を出て、電動自転車を走らせること十五分。
オフィス街の喧騒から少し離れた、古い雑居ビルの三階に私の職場はあります。
「おはようございます!」
ドアを開けると、微かに香るアロマと、心地よいキーボードの打鍵音が迎えてくれました。
「かよこさん、おはよう。今日も元気だね」
声をかけてくれたのは、上司の部長です。 五十代後半の彼は、かつて大手メーカーで営業部長を務めていたそうですが、「数字を追うために人を使い潰すのはもう疲れた」と、この小さな会社に転職されたそうです。
「部長、この前のリスト、半分まで終わりました。後半は少し難易度が高そうですが、今日中に目処を立てますね」
「無理はしないでね。休憩はしっかり取るんだよ。昨日の夕方、あそこの交差点に新しいドーナツ屋さんができていたから、おやつに買ってきたんだ。あとでみんなで食べよう」
そう言って笑う部長の後ろには、同僚たちが持ち寄ったお菓子や、自由に飲めるコーヒーメーカーが並んでいます。
やってきたのは、嵐でした
この職場の最大の魅力は、単に「時間が短い」ことだけではありませんでした。 スタッフ同士の信頼関係が、驚くほど成熟しているのです。
二十名ほどの従業員の多くは、私と同じように育児中の女性や、親の介護をしている人、あるいは夢を追いながら働く若者たちでした。
誰かが急に子供の発熱で休んでも、誰一人として嫌な顔をしません。
「お互い様だから」「ここは私がカバーしておくよ」
そんな言葉が当たり前に飛び交う、まさに砂漠の中のオアシスのような場所。
私は自分のデスクに座り、ヘッドセットを装着しました。
九時のチャイムと共に、受話器から流れる電子音。
「お忙しいところ恐れ入ります。私、株式会社……」
単調な作業。断られることも多い。けれど、隣の席の同僚と「今の対応、勉強になったね」と励まし合い、休憩時間には家族の悩みや趣味の話に花を咲かせる。 そんなささやかな日常が、私にとってはかけがえのない宝物でした。
しかし、その穏やかな湖面に、一つの大きな石が投げ込まれたのは九月の半ばのことでした。
「皆さん、手を止めてもらえるかな。今日から新しい仲間が加わることになった」
部長の明るい声に、私はいつものように期待を持って顔を上げました。 新しい仲間。どんな人だろう。また素敵な出会いがあればいいな――。
しかし、部長の背後から一歩前に出たその女性を見た瞬間、私の思考は完全にフリーズしました。
長い髪をきつく巻き、原色のネイル。いくら服装規定が自由の我が社でも目立つような姿。
記憶の底に沈んでいた、二十年以上前の、あの騒々しい講義室の風景がフラッシュバックしました。
「みゆ……?」
私の唇から、無意識に名前が漏れました。 「あれ? かよこ!? うそ、かよこじゃない!」 彼女は挨拶もそこそこに、高いヒールを鳴らして私のデスクへ突進してきました。
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あとがき:楽しい再会…?
聞いてるだけでも自分自身が転職したくなるような、とても素敵な職場ですよね。それなのに一波乱の予感しかしないこの展開ですが、皆さんならかつての知り合いが来たらどんな反応をしますか?それも、絶妙に「いい思い出のない相手の場合は…。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










