🔴【第1話から読む】「つわりで具合が悪いのに...」友人からのLINEが鳴りやまない
沙織からの催促はエスカレートし、「暇だから早く来て」と無理な日程変更を迫られる。自身の体調も限界の中、真理は断り方に悩む。かつての楽しい思い出が足を引っ張り、正直になれない自分を責めてしまう。
友人の催促にうんざり
沙織からのラインは、もはや「相談」ではなく「催促」でした。
『ねえ、2週間後まで待てないよ〜!』
『毎日赤ちゃんと二人きりで暇すぎて、気が狂いそう(笑)』
『平日でもいいから、明日とか明後日とか、もっと早く来れない?』
『慎吾くんも赤ちゃん見たいでしょ?早く抱っこさせてあげたいな!』
スマホを握る手が、かすかに震えました。
彼女にとっては「暇つぶし」の誘いかもしれない。けれど、今の私にとって「予定を早める」ことがどれだけ高いハードルか、彼女は想像すらしていないのでしょう。
返信するのも労力を使う…
「平日でもいいから早く来て、だって。……無理だよ。慎吾の幼稚園の送り迎えもあるし、何より、自分の体が……」
私は吐き気をこらえるように、胸元を押さえました。妊娠3か月。まだ誰にも言っていない、不安定な時期。
おなかの中では新しい命が必死に育っているけれど、その代償として私の体力はマイナスまで削られています。立ち上がることすら億劫なのに、車を運転して、気を遣いながら友人宅を訪問するなんて、今の私には「エベレスト登頂」と同じくらい困難なミッションでした。
「返さなきゃ、とは思うんだけど。なんて断れば角が立たないかな……」
「正直に言えばいいじゃないか。『体調が悪いから、予定通りでお願い』って」
祥吾の意見はもっともです。でも、沙織は「えー、なんで?どっか悪いの?大丈夫?私、いいお医者さん知ってるよ!」と、善意という名のマシンガントークで深掘りしてくるのが目に見えています。彼女との過去を思い返すと、さらに心が沈みます。
楽しい思い出はあるが、今は憂うつで仕方ない
以前は、月一で家族ぐるみで遊ぶほど仲が良かった。彼女夫婦は慎吾のことを実の甥っ子のようにかわいがってくれて、慎吾も「沙織ちゃん!」と懐いていました。楽しい思い出は、確かにたくさんある。
だからこそ、今の彼女を「面倒くさい」「産後ハイだ」と冷めた目で見てしまう自分に、猛烈な罪悪感を感じるのです。
『ごめんね、最近ちょっと忙しくて。予定通り2週間後でお願いできるかな?』
勇気を出してそう送ると、数分もしないうちに返信が来ました。
『えー、忙しいって何?仕事?主婦なんて暇でしょ(笑)』
『うそうそ、冗談だよ!でも本当に暇なんだもん。お祝いの品とか気にしなくていいから、手ぶらでいいから来てよ!』
手ぶらでいい、という問題ではありません。彼女の「暇」を埋めるために、私の残りのHPを使い果たせと言うのでしょうか。ウェルカムボードの時と同じ。彼女はいつだって「自分の気持ち」が最優先で、受け取る側の事情を、1ミリも考えていない。
「……もう、既読つけるのもしんどい」
私はスマホを伏せました。
お祝いしたい。でも、会いたくない。
相反する感情が胸の中で渦巻き、私はひどい自己嫌悪に陥っていました。
🔴【続きを読む】ストレスで悪化するつわりに、自分の本音に気づく夜
あとがき:「善意」という名の無自覚なナイフ
「主婦は暇でしょ」という言葉、冗談でも胸に刺さりますよね。沙織の言動は、悪意がないからこそタチが悪い「無自覚な加害」です。相手の「暇」を埋めるために、自分の貴重な「命の削りカス(体力)」を差し出す必要なんてありません。過去の楽しかった記憶に縛られて、今の苦しみを我慢しなくていい。真理がスマホを伏せた瞬間、読者の皆さんも一緒に深く深呼吸してほしい……そんな願いを込めた回です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










