🔴【第1話から読む】「親の貢献度が全て」女王が支配する"スポ少地獄"。標的にされた親子の悲劇
体調不良で少年野球の送迎に行けなくなってしまった、春子。そんな彼女へ、秋乃から連絡が入り…。
女王からの「お叱り」
ふるえる手で、通話ボタンを押した。
「あんた、何してるのよ!」
頭がわれそうになるような叫び声の主は、案の定「秋乃」だった。熱で意識が朦朧(もうろう)とする中、せめて礼儀正しく病状を伝えようとした。
「……申しわけありません、高熱が出てしまい、どうしても車が出せなくて……」
「ふざけないでよ! 今日がどんな日か分かってるの? となり町のチームとの大事な練習試合なのよ! 送迎担当のあなたが来ないせいで…今、グラウンドでどれだけの子どもたちが立ち往生してると思ってるの!」
「すみません…でも、本当にうごけなくて……送迎を代わっていただけないでしょうか」
「知らないわよ!自己管理不足でしょ!専業主婦のくせに…役割も果たせないなんて、本当に無能ね。チームのお荷物だわ…やる気がないなら、今すぐ辞めなさいよ!桃太くんだって、親がこれじゃ先が思いやられるわね!」
罵詈雑言の嵐に、言い返す言葉もうしない、涙がこぼれた。熱でぼんやりした頭に、彼女の冷酷な声がつき刺さる。ところが、次の瞬間、私の手からスマホがひったくられた。
「お母さんを、わるく言わないで!」
桃太の声でした。私のヒザ元で、彼が電話に向かって叫んでいました。
ちいさなヒーロー、立ち向かう
「秋乃おばちゃん、聞こえてる!? お母さんは昨日だって、みんなのためにルート確認して、夜おそくまで準備してたんだ。それを、お荷物だなんて……そんなこと言うおばちゃんの方が最低だ!」
「は…はあ?桃太くん?だれに向かってそんな口……」
「チームの仲間なのに…病気の人をいたわるのが、あたり前なんじゃないの? ぼくは野球が大好きだけど…お母さんをいじめるような人がいるチームなんてやめてやる! お母さんをくるしめるくらいなら、野球なんてやらなくていい!」
桃太は一方的に通話を切ると、私のスマホをフトンの上に投げ出した。そして、私にしがみついて言いました。
「お母さん…もういいよ。ぼく、気づいてたよ。お母さんが秋乃おばちゃんにムリやり、いろんなことをやらされてるの。ぼくのせいで、お母さんが病気になっちゃうのはイヤだよ。もう、ムリしなくていいから……」
「バイバイ…」息子からのボイスメッセージ
桃太の小さな肩がふるえている。私は彼を力のかぎり抱きしめた。
「守るべき対象」だと思っていた息子が、いつの間にか、こんなに強く優しく成長していた。
情けなさと、誇らしさと…そして、積年のうらみが溶け出すような解放感で、私は桃太と一緒に声を上げて泣いた。
その後、桃太は私のスマホを使い、野球チームのグループLINEではなく、個人的に仲の良かったチームメート数人に、ボイスメッセージを録音しておくった。
「お母さんが高熱でたおれたのに、秋乃おばちゃんにひどいことを言われた。ぼくはもう、このチームにはいたくない。みんな、今まで一緒に野球ができてたのしかったよ。バイバイ」
その率直なメッセージは、瞬く間に保護者たちの間に転送され、広がっていった。
桃太の純粋な怒りは、秋乃さんの暴政に耐えていた他の保護者たちの心を、はげしくゆさぶったのだった。
🔴【続きを読む】名門チームの崩壊とボスママの末路…大人の「計算」不要な新天地で見えた光
あとがき:守るべき対象だった息子に守られ…
限界だった春子を救ったのは、「守るべき対象」だと思っていた息子・桃太でした。
桃太の純粋な声に、心をゆさぶられた読者も多いのではないでしょうか。子どもは大人が思っている以上に、大人のことを見ているものですね。そして、自分で決断できる強さも持っています。桃太くんの勇気には力づけられますね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










