🔴【第1話から読む】「もし不倫したら、徹底的に追い詰める」不倫を憎む夫
数ヶ月後、再構築が始まった光里と夫。夫は光里の機嫌をうかがうように過ごしていますが、裏切られた側である光里の気持ちは…。
惨めな夫はいいパパを演じる
事件から数ヶ月が経ちました。
季節は巡り、我が家には表面的には平穏な日常が戻っています。
太郎は、あの誓約書の日以来、驚くほど「いいパパ」として振る舞っています。
朝は誰よりも早く起きてゴミを出し、仕事が終われば誘いを断って真っ直ぐ帰宅する。週末は光次を公園や動物園へ連れて行き、綺羅里の夜泣きにも積極的に対応するようになりました。
家計の管理も透明化され、彼のスマートフォンにはGPSアプリが入れられました。定期的にチェックしていますが、夏菜子との連絡は一切断たれているようです。
彼女は誓約書通りに会社を去り、引っ越したと叔父に聞きました。慰謝料も分割ではなく、彼女の親が肩代わりしたのか、一括で全額振り込まれました。
「光里、今日の夕飯、すごく美味しいよ。いつも準備してくれてありがとう。本当に感謝してる」
食卓で、少しおどおどした様子で私を褒める太郎。その笑顔を見るたびに、私の心には言いようのない冷たい隙間風が吹き抜けます。
光次はパパに懐き、「パパ、次はいつキャンプに行く?」とはしゃいでいます。綺羅里もパパの膝の上で、安心しきった顔で離乳食を食べている。
世間から見れば、危機を乗り越えてより一層絆を深めた、理想的な再構築家庭に見えるのかもしれません。
けれど、私は知っています。
一度木っ端微塵に壊れた信頼という器は、どれだけ強力な接着剤で繋ぎ合わせても、継ぎ目は一生消えないということを。そして、一度でも水が漏れたその器には、もう二度と「純粋な安心」を注ぐことはできないということを。
彼が優しくなればなるほど、私はあの日、暗い部屋で見たスマホの画面を思い出してしまいます。
「愛してる」と別の女性に囁いていた、その同じ唇で私に微笑みかけている。
「不倫する奴はクズだ」と吐き捨てた、その同じ声で子供たちに絵本を読んでいる。
今の彼の優しさは、私への愛情から出たものなのか。それとも、誓約書という鎖で繋がれた「罰」を遂行しているだけなのか。私は時折、彼がただの「精巧に作られた良き夫というロボット」に見えることさえあります。
戻らない信頼と冷たい決意
叔父さんが最後に、事務所の外で私に言ってくれた言葉が、今でも胸に深く刺さっています。
「光里、再構築というのはね、許すことじゃない。『許せない自分』を抱えたまま、共に地獄を歩く覚悟をすることなんだ。不倫というのは、相手の『心』を殺し、積み上げてきた『信用』という土台を根こそぎ破壊する行為だ。土台が消えた更地に、もう一度家を建てるのは並大抵のことじゃない。お前は、よく頑張っているよ」
今の私は、太郎を以前のように心から愛しているから一緒にいるわけではありません。
子供たちの今の笑顔を奪わないため。そして、彼に犯した罪の報いを、残りの人生をかけて「誠実」という形で返させるため。私は、誓約書という名の見えない手錠を彼にかけ、この家という名の刑務所で彼を監視し続けている看守のようなものです。
「……パパ、これ見て! 上手に描けたよ!」
光次の楽しそうな声がリビングに響きます。
私はそれを見つめながら、ふと窓に映る自分の表情を確認しました。
そこには、かつての無邪気な笑顔はなく、どこか冷めた、けれど強くなった一人の女性の顔がありました。
あの日、彼が私に突きつけた「追い詰めてやる」という言葉。
皮肉なことに、今、精神的に追い詰められているのは、自由を奪われ、過去の過ちという亡霊に一生怯えながら「いいパパ」を演じ続けなければならない、彼の方なのかもしれません。
不倫が招いた結果。それは、偽りの平穏と、一生消えることのない不信感。
そして、二度と「心からの安らぎ」を得られない夫婦関係。
私はこれからも、この重い十字架を背負った彼と共に、どこまで続くか分からない、けれど決して以前と同じにはなれない道を、子供たちの手を引いて歩いていくのです。
あとがき:壊れた信頼が戻ることはない
再構築を選んでも、一生信頼は戻らない…それでも子供のために、と進み始めた光里は本当に立派です。これからも強い母として頑張ってほしいですね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










