深夜2時、妹・恵美からの悲鳴のような電話。10年交際する恋人・サトルの暴力は日常化し、警察沙汰も3回目。ボロボロの姿で逃げ込んでもなお、「私が悪い」と彼を庇う恵美。歪んだ愛情の檻に閉じ込められた妹を前に、姉の美幸は深い無力感に襲われる。
妹から震える声で助けを求める電話が…
「お姉ちゃん、助けて……。もう死にたい……」
深夜2時。スマホのバイブ音で飛び起きた私、美幸(29)の耳に飛び込んできたのは、妹の恵美(26)の震える声でした。後ろでは、男が怒鳴り散らす声と、何かが粉砕される激しい音が響いています。
「恵美! 大丈夫なの!? 今どこ!?」
「サトルくんが……私が、余計なこと言ったから……」
プツリと切れる通話。私は震える手で警察に通報しました。
これが今月で3回目。恵美と彼氏のサトル(32)が付き合い始めて10年。昔は仲の良いカップルだったはずなのに、いつからこんな地獄が日常になってしまったのでしょうか。
妹が彼氏からDVを受けている
私は都内のIT企業で働く、ごく普通の会社員です。
一方、恵美は昔からおっとりしていて、少し依存体質なところがありました。32歳にもなって感情を抑えられないサトルに対しても、「私がいなきゃダメなの」なんて健気なことを言っていますが、客観的に見ればそれはただの暴力(DV)です。
翌朝、恵美がボロボロの姿で私のマンションに逃げ込んできました。 頬は腫れ上がり、腕には青あざ。
「恵美、もう限界だよ。警察も来たんでしょ? 今回こそ別れなさい」
「……でも、警察が来たときサトルくん、泣いて謝ってくれたんだよ。私が警察なんて呼んじゃったから、彼はパニックになっただけで。本当は優しい人なの」
「優しい人は、愛する人を殴らないの!」
「全部私が悪い」妹が壊れていく…
私の叫びも、今の恵美には届きません。彼女は虚空を見つめたまま、まるで自分を納得させるように呟きました。
「私がもっと、彼の気持ちを察してあげられたら……。私が暴れたから、彼も止めるために手が出ちゃっただけなの。全部、私が悪いの」
自分の妹が、目の前で壊れていく。 私はただ、彼女の冷え切った手を握りしめることしかできませんでした。
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あとがき:愛という名の呪縛を解くために
「私がいなきゃダメなの」という言葉は、献身ではなく、自分を追い詰める呪文になってしまうことがあります。第三者から見れば明らかな暴力も、当事者にとっては10年という歳月が判断を狂わせる「日常」に。美幸が感じた、妹の手の冷たさは、恵美の心が凍りついている証拠そのものです。まずはその冷たさを認め、寄り添うことからしか救いは始まらない……そんな現実の厳しさを突きつける開幕です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










