育休中の紗枝は、家計が苦しい中、元気な義母へ毎月2万円を仕送る現状にモヤモヤしていた。結納を辞退した過去の配慮も虚しく、当然のように金銭を頼る義母と無自覚な夫。家族の「当たり前」に歪みを感じ始める。
毎月の2万円の仕送りに違和感
「ねえ、今月も衛(まもる)さんの口座から2万円、お義母さんに振り込んでおいたよ」
家計簿を閉じながら、私はソファでくつろぐ夫に声をかけました。生後10か月の息子、空(そら)が私の膝の上でスヤスヤと寝息を立てています。
「ああ、いつもありがとう。お袋、一人で頑張ってきたからさ。仕送り、助かってると思うよ」
衛は悪びれる様子もなくスマホに目を落としたまま答えます。その横顔を見ながら、私の胸の奥には、小さなしこりのような違和感がまたひとつ積み重なりました。
私、紗枝(さえ)32歳。夫の衛とは、いわゆる「授かり婚」でした。幸せなはずの結婚生活ですが、入籍当初からずっと、私の心に引っかかっていることがあります。それが、別居している義母への「毎月2万円」の仕送りです。
結納も義母を考えて、諦めた
義母はまだ50代。現役でバリバリ働いているし、趣味のサークルにも頻繁に顔を出しています。正直、生活に困っているようには見えません。それなのに、なぜか息子夫婦からの仕送りが「当然の権利」のようになっているのです。
「なあ紗枝。結婚する時、結納の話あったじゃん?」
入籍前、衛にそう聞かれた時のことを思い出します。
「周りの友達も結納なんてしてない奴が多いし、お袋も母子家庭でさ。もしやるなら俺が今からお金集めなきゃいけないんだけど、紗枝の親御さんはどうかな?」
衛なりの気遣いだったのかもしれません。でも、「お金を集めなきゃいけない」と言われたら、私の親だって無理は言えません。
母は「本当はケジメとして形だけでも……」と寂しそうにしていましたが、結局、義母の負担を考えて結納はなし。顔合わせ食事会だけで入籍しました。
仕送りで恩返し?
ところが、いざ生活が始まってみれば、待っていたのは「恩返し」という名の仕送りでした。
「はじめはさ、お袋『2万円じゃ少ないわね』なんて言ってたらしいんだ。でも俺が、紗枝が産休に入ったらキツくなるからって、なんとか納得させたんだよ」
衛は手柄を立てたかのように笑いますが、私は笑えませんでした。産休中で収入が減り、これから子どもにお金がかかる時期。その2万円があれば、空のおむつだって、将来のための貯金だって、もっと余裕を持ってできるのに。
私の両親は定年を迎え、決して裕福ではありません。それでも「あんたたちはこれから物入りなんだから、自分たちのために貯めておきなさい」と、お祝いこそくれど、1円だって受け取ろうとはしません。
「お母さん、今日も趣味のダンスに行ったんだって。元気でいいよな」
無邪気な衛の言葉を聴きながら、私は空の柔らかい頬をなでました。この違和感は、私の心が狭いだけなのでしょうか。それとも、家族としての「当たり前」の形が、どこか歪んでいるのでしょうか。
不満を口にすれば、義母との仲がこじれるかもしれない。衛を傷つけるかもしれない。そう自分に言い聞かせ、私はまた、重い溜め息を飲み込みました。
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あとがき:その「善意」は誰の犠牲の上に?
結婚生活で最初に直面する壁、それが「義実家との金銭感覚のズレ」ではないでしょうか。夫にとっては「育ててもらった恩返し」という美談でも、家計を預かる妻にとっては、子どもの未来を削る死活問題です。特に「結納なし」という配慮が、感謝ではなく「都合のいい財布」として扱われるきっかけになってしまった紗枝の絶望感に、胸が締め付けられる導入です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










