かなでは、私より6歳下の20歳。まだ大学生で、世の中の酸いも甘いもこれから知っていく年ごろだ。対して私は26歳、社会人としての荒波にもまれ、男の「表の顔」と「裏の顔」がある程度見分けられるようになってしまった。
「1回しか会ってないのに付き合ったって、展開早くない?」
「えー、お姉ちゃん考えすぎだよ!純一くん、すごく情熱的なんだもん。毎日LINEくれるし、バイトの迎えにも来てくれるんだよ?」
かなでは幸せそうに笑う。その笑顔を見ていると、私の心配も「独身女のひがみ」みたいに思えてきて、それ以上は何も言えなかった。
「お姉ちゃんも今度、一緒にご飯行こう。純一くんも会いたがってる!」
「はいはい、機会があればね」
そんな風に軽く流していた。でも、心のどこかで小さな違和感があった。26歳の現役美容師が、たった1回カットに来ただけの20歳の大学生に、そんなにすぐ本気になるものだろうか? ※1
妹の彼氏に抱いた「不信感」
20歳の妹・かなでは、純一との交際に完全に舞い上がっているようです。自分が渦中にいるときは、違和感には気付かないもの。まわりが冷静な目で、見守ってあげることが必要ですね。
そんなある日、妹から泣きながら電話がかかってきました。デート中、一緒に動画を観るために純一から渡されたスマホ。ホーム画面をスワイプすると、「火遊びの代名詞」といえるアプリがインストールされていることに気づいたそうです。
妹から聞かされる残酷な真実の数々
「元々、遊び人だったっていうのは聞いてたの。でも、今は私だけだって……」
かなでが震える指で、アプリを開いた先の内容を教えてくれた。
そこは、伏魔殿だった。 純一は、かなでがバイトで会えない日を狙い澄まして、別の女の子を物色していた。 驚くべきは、かなでのバイト先へ「迎えに行く直前」まで、他の女と会う約束を取り付けていたことだ。
特に酷かったのは、ある女性とのやり取り。 相手の女性が「今日、生理になっちゃったから飲みに行くの厳しいかも」と送ると、純一の返信はこうだ。
『残念。やれないね。じゃあ一週間後くらいなら大丈夫?』
「やれないね、って……。私の前では『かなでの笑顔が一番の癒やしだよ』なんて言ってたのに。目的はそれだけだったの?」
かなでの声が怒りで震える。
さらに、彼の嘘はそれだけではなかった。仕事用とプライベート用、二つのアカウントしかないと聞いていたSNSには、他に3つも隠しアカウントが存在していた。そのすべてが、女の子をナンパするためだけの専用アカウント。DM欄には、かなでが知らない純一の「営業トーク」が山のように積み重なっていた。
「全部スクショした。証拠はバッチリだよ……」
涙を流しながらも、かなでは冷静に事実を確認していた。その健気さが、余計に私の怒りを沸騰させた。
「かなで、もう十分だよ。こんな男、今すぐ縁を切りなさい」
私の言葉に、かなでは力なく頷いた。 しかし、これだけでは終わらなかった。この男の「正体」は、私たちの想像を遥かに超えるものだったのだ。 ※2
純一は、浮気の常習犯。ヒマさえあれば、女遊びを繰り返していたようです。かなでは、純一の本性を知り、別れを決意します。
ところが、さらに驚がくの事実が発覚したのです。純一は、26歳と言っていたのですが、実は30歳。かなでとは、10歳も年の差があったのです。それでも「別れたくない」と、ゴネタ純一でしたが、かなでも負けじと「別れてください」と宣言し、2人は破局を迎えます。
頭ではわかっていても…恋は泥沼へ
数日後。かなでは純一からの連絡を無視していると言いつつも、スマホをずっと気にしていた。
「ブロックしたの?」と聞くと、彼女は首を振った。
「……できない。情があるし、まだ好きなんだもん」
私は耳を疑った。
「は?かなで、正気?あんなに嘘つかれて、他の女と『やれない』なんてやり取りしてた男だよ?」
「わかってる。わかってるけど、一緒にいた時の優しさまで嘘だったとは思えなくて」
母親も参戦して、説得を試みた。
「かなで、あんな男は一生治らないわよ。もう二度と会っちゃダメ」
「うん、わかった。もう会わない。別れたから」
かなではそう断言した。
しかし、その数日後、彼女がコソコソと出かける準備をしているのを見つけた。
「かなで、どこ行くの?もう会わないよね?」
「……いや、まだ会う」
「え、なんで!?別れたんでしょ?」
「一応別れたけど……でも、やっぱり好きなんだもん!」
絶句した。 理論ではない。感情が、彼女を泥沼に引き戻そうとしていた。 私は自分の無力さを痛感した。他人の恋愛に、家族ができることには限界があるのだ。 ※3
かなでは「最低な男」だとわかっていないながらも、泥沼の恋愛へと戻ってしまったのです。頭ではわかっていても、心が納得できないと、別れるのは難しいものです。
このあと、サツキは妹が傷つくのは安易に予想できました。ですが、周囲が説得しても無意味なこともわかっていたため、見守ることに徹したのです。そして、ボロボロに傷ついた妹は、ようやく最低男と決別し、家族の元に戻ってきたのです。
本作では、妹が最低な男にハマってしまい、姉として冷静に見守った様子が描かれています。家族のために、つい口出ししてしまいそうですが、本人のために、周囲はときには「見守る勇気」が必要だと感じました。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










