🔴【第1話から読む】「男子にたたかれるの」娘の行きしぶりが始まった日
現状について、仲のいいママ友に相談した櫻子。しかし彼女の言い分からして、担任もやはりおかしいのではと気づき始めます。
ママ友の頼りになる指摘
翌日、私は藁にもすがる思いで、同じ小学校に子供を通わせているママ友に相談を持ちかけました。彼女の子供は隣のクラスですが、学校の内部事情には詳しい人でした。
近所のカフェで、私は震える手でコーヒーをすすりながら、これまでの経緯を包み隠さず話しました。彼女は私の話を聞くうちに、みるみる表情を硬くしていきました。
「ちょっと待って、白崎さん。あなたのクラスの担任、それ本当に対策してくれてるの? うちのクラスなんて、休み時間にちょっと小突いただけで先生から即座に家庭に連絡が来るわよ。もちろん、相手の親御さんにも事情を説明して、放課後に三者面談になることもある。それが普通じゃない?」
「……担任の先生は、『学校はそこまで踏み込めない』って」
「それは絶対におかしい。あの先生、うちの上の子の担任だったことあってね。事なかれ主義で有名だけど、そこまで酷いとは思わなかったわ。子供を守る気がないのよ。担任が面倒な仕事から逃げてるだけ」
ママ友の言葉は、私の背中を強く押してくれました。
やはり、私が感じていた違和感は間違っていなかった。 私はもう一度、担任に詰め寄る決意を固めましたが、その前に客観的な「事実」と「外圧」が必要だと考えました。学校という閉鎖的な組織が動かないのなら、外部の力を借りるしかありません。
私はその足で、地域の警察署の生活安全課へと向かいました。
「子供同士のトラブルで警察なんて」という迷いがなかったわけではありません。しかし、あのアザだらけの桃乃の腕を思い出すと、迷いは消えました。 相談窓口の警察官は、私の話を遮ることなく、一文字一文字を噛み締めるようにメモを取ってくれました。
「お母さん、よく勇気を出して来られましたね。これは立派な暴力行為です。たとえ相手が小学校二年生であっても、法的には守られるべき権利があります。子供なので今すぐ刑事事件にするのは難しいですが、『被害届』という形で記録に残すことは可能です。そうすれば、警察から学校へ正式に指導や注意喚起を行うことができます」
「被害届……そんな大事(おおごと)にしてもいいんでしょうか」
「大事にしているのは、相手の方です。お母さんは娘さんの正当防衛をされているだけですよ。まずは、パトロールを強化しましょう。下校時間に合わせて、警察車両や制服警官が通学路を巡回するように手配します。それだけでも、相手の子供への強い警告になりますから。子供でもね、悪いことをしている自覚があれば警察にどきっとするものなんですよ」
警察署を出たとき、少しだけ呼吸が楽になった気がしました。 数日後、私は警察が動いてくれるという確証を持って、再び学校へ連絡し、担任に報告することにしました。
ますます怪しい担任の口ぶり
「先生、お忙しいところ恐縮ですが、大切なご報告があります。これまでの悠斗くんの暴力行為について、あまりに改善が見られないため、警察に相談させていただきました。今後は警察によるパトロールが強化されます」
私は努めて冷静に、事実だけを伝えました。担任の先生は、電話越しで息を飲みました。しかしすぐに、震えた声を発し始めたのです。
「……警察? 白崎さん、それは本気でおっしゃっているんですか?」
「はい。娘の安全を守るために必要だと判断しました。それで、確認したいのですが、この三ヶ月間の件、黒田悠斗くんの保護者である黒田裕子さんには、どのように伝わっていますか? どのようなお返事をいただいていますか?」
当然、家庭での指導を約束させた、あるいは改善を促したという答えが返ってくるものと信じていました。
しかし、担任の口から出た言葉は、私の予想のさらに斜め上を行くものでした。
「いえ、学校から黒田さんには、今のところ何もお伝えしていませんよ」
「……はい? 何も、ですか?」
「ええ。前にも申し上げた通り、学校は家庭の教育方針にまで深く関与はできません。それに、白崎さん。警察に相談するなんて、さすがにやりすぎですよ。子供の話ですよ? 遊びの延長でちょっと手が出ただけかもしれないのに、警察沙汰にするなんて。悠斗くんの将来に傷がついたら、どう責任を取るおつもりですか?」
耳の奥で、キーンという高い音が鳴り響きました。 目の前の女性は、私の娘が流した血も涙も、怯えて眠れない夜も、すべて「遊びの延長」として切り捨てたのです。
それどころか、加害者側の将来を案じ、被害者である私たちを「騒ぎを大きくする加害者」のように扱う。 あまりの理不尽さと激しい怒りに、私は言葉を失いました。握りしめた拳が、爪が食い込んで白くなるほど震えていました。
この電波の壁の向こう側には、血の通った人間はいないのだ。そう確信した瞬間でした。
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あとがき:警察に行ったのは英断
警察相手、となると緊張するのに勇気を出して相談に行った櫻子はママとしてもとても格好いいです!
しかし担任の先生、どこまでも呆れてしまうような言い訳しかしないのがどこか気がかりですね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










