🔴【第1話から読む】「男子にたたかれるの」娘の行きしぶりが始まった日
警察が動いたことで、教頭先生にまで話が進みます。しかし教頭先生と話が進むにつれ、あるとんでもないことが発覚してしまうのです。
警察という「威力」
警察が動いたことによる抑止力は、私の想像以上に絶大なものでした。
下校時間になると、パトロールのパトカーがゆっくりと住宅街を巡回し、時には制服を着た警察官が通学路の角に立って、子供たちに「さようなら」と声をかけてくれるようになりました。
その青い制服の姿が見えるだけで、桃乃の顔に少しずつ血色が戻り始めました。悠斗くんは、警察官の姿を見かけるとあからさまに視線を逸らし、脱兎のごとくその場を立ち去るようになりました。やはり、彼は自分がやっていることが「悪いこと」だと自覚していたのです。
ただ、自分を止める大人がいないことをいいことに、暴力を加速させていただけだったということなのでしょう。
ようやく平穏が訪れたかに思えた一週間後のことでした。私のスマートフォンに、見慣れた小学校の電話番号が表示されました。
「白崎さん、教頭ですが……。本日、放課後にお時間をいただけないでしょうか? 警察の方からかなり強い勢いで連絡をいただきまして。一度、事実確認のために三者でお話をさせていただきたいのです」
教頭先生の声には、明らかな困惑と緊張が混じっていました。ついに、学校という巨大な組織の重い歯車が、外圧によって無理やり回され始めたのです。
約束の時間に学校へ向かうと、応接室には二人の人物が待っていました。
一人は、厳しい表情で腕を組む初老の教頭先生。そしてもう一人は、かつての余裕に満ちた態度はどこへやら、幽霊のように青ざめた顔で下を向いている担任の先生でした。
「白崎さん、お忙しいところ申し訳ありません。本日お呼びしたのは、警察から入った『児童間の暴力トラブルについて、学校側の対応が極めて不十分である』という指摘についてです。正直に申し上げまして……私の方には、警察に届いていたという悠斗くんと桃乃さんの件、これほど深刻な事態になっているという報告が一切上がっておりませんでした。一体、現場では何が起きていたのか。詳しくお聞かせ願えますか?」
教頭先生の言葉に、私は静かに頷きました。そして、バッグの中から三ヶ月間書き溜めてきた一冊のノートを取り出しました。それは、娘の涙と私の怒りが詰まった、血の通った記録でした。
「教頭先生。私は三ヶ月前から、計十数回にわたり、担任の先生に相談を続けてきました。これはその全記録です」
私は震える手でノートを広げ、淡々と、しかし一言一言を噛み締めるように読み上げました。
「四月十日、腕を強く叩かれたと相談。担任の回答は『様子を見ます』。五月十五日、階段で突き飛ばされそうになったと報告。担任の回答は『子供の言うことなので、見間違いではありませんか?』。六月三日、顔を叩かれたと電話。担任は『忙しいので、今後は送り迎えで対応してください』と回答……」
応接室の温度が、一気に氷点下まで下がったかのように感じられました。
教頭先生がページをめくるたび、その眉間の皺は深くなり、隣で俯く担任の先生の肩は小刻みに震え始めました。
担任の先生の呆れるような本音
「……これは、本当か? 警察のことがあってから私が君に聞いた話では、『小さなトラブルはあるが、家庭との連携は取れている』ということだったはずだが」
教頭先生が鋭い眼光を担任に向けると、彼女は蚊の鳴くような声で「……それは……」と言い淀みました。
「答えなさい! なぜこれほどの事態を、一度も黒田さんの保護者に伝えていないんだ! 被害届という言葉まで警察から出ているんだぞ!」
教頭先生の怒号が部屋に響き渡りました。担任の先生はついにこらえきれなくなったのか、顔を覆って激しく泣き出しました。
「だって……っ、黒田さんのお母さんに、会ったことありますか!? あの人、すごくおっかないんです! 一度、忘れ物の件で電話をしただけで、『仕事中にくだらないことでかけてくるな、お前の教育が悪いから忘れるんだろ!』って一時間も怒鳴り散らされて……。もう二度と、あの人と関わりたくなかったんです! 悠斗くんを注意して、またあの母親が学校に乗り込んできたらと思うと、怖くて……。だから、白崎さんにさえ我慢してもらえれば、波風立てずに済むと思って……!」
あまりの告白に、私は怒りを通り越して、深い虚無感に襲われました。
この教師は、自分の平穏を守るために、幼い私の娘をいけにえに捧げていたのです。自分の保身と、モンスターペアレントへの恐怖。その天秤の対極にあったのは、教育者としての使命ではなく、ただの「逃げ」でした。
「先生……」
私は、震える声で彼女を見つめました。
「あなたが怖かったのは、黒田さんの母親であって、私の娘が受けている痛みではなかったのですね。あなたが守りたかったのは、学校の評判ではなく、ご自分の平穏だけだったのですね」
担任は答えられず、ただ子供のように声を上げて泣き続けるばかりでした。その姿に、もはや怒りさえ湧かず、ただ悲しさだけが胸に広がりました。
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あとがき:そんな先生でいいの!?
担任の先生の怠惰の理由が分かりましたが、本当にこれは人としてアウトですよね。
自分のために誰かを犠牲にする精神の人間が教師を名乗るなど、恐ろしくて仕方ありません。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










