🔴【第1話から読む】「男子にたたかれるの」娘の行きしぶりが始まった日
無事教頭先生が動くことになり、娘に嫌がらせをしていた男の子の親御さんとも接触。このまま無事和解へ進めるのでしょうか。
頼りになる教頭先生
「白崎さん、本当に……本当に申し訳ございませんでした。これは一教師の問題ではなく、管理職である私の責任です」
教頭先生は椅子から立ち上がり、私に向かって深く、長く頭を下げ続けました。
「黒田さん(母親)については、私が責任を持って連絡を入れ、直接面談を行います。これまでの全容を包み隠さず伝え、悠斗くんへの適切な指導と、家庭環境の見直しを求めます。これ以上、桃乃さんに指一本触れさせるようなことは、決してさせません」
その翌日、教頭先生は約束通り、黒田悠斗くんの母親、黒田裕子さんを学校へ呼び出しました。
後に教頭先生ご本人から聞いた話では、彼女は現れるなり「仕事が忙しいのに何の用だ」と不機嫌さを隠さなかったそうです。しかし、教頭先生が警察の介入の事実、そして悠斗くんが路上に石を置いて重大な事故を引き起こしかねない行動を取っていたこと、そして何より桃乃への継続的な暴行の証拠を突きつけた瞬間、彼女の態度は一変したといいます。
黒田裕子さんは、有名な外資系企業で役職に就いている、いわゆる「バリバリのキャリアウーマン」でした。しかし、その輝かしい経歴の裏側で、家庭は崩壊の一途を辿っていたのです。
「彼女は、悠斗くんを一流の中学校に入れることしか頭になかったようです。平日は深夜まで働き、土日は悠斗くんを朝から晩まで塾や家庭教師のスケジュールで埋め尽くす。会話といえば『テストの結果はどうだった』『宿題は終わったのか』。悠斗くんにとって、家庭は安らげる場所ではなく、ただの監視所だったのでしょう」
教頭先生の説明は、悠斗くんのあの歪んだ瞳の理由を裏付けるものでした。
彼は母親から受ける強烈なプレッシャーを、自分より立場の弱い桃乃を叩くことで発散していたのです。そして、「ママがいない時を狙う」という狡猾さは、親の顔色を伺いながら生きる中で身につけてしまった悲しい知恵だったのかもしれません。
相手の親との対峙、結果は?
「私が結構強めに注意したのですが、黒田さんはその場で泣き崩れてしまいましてね。自分の子供が、外でそんな怪物のようになっているなんて思いもしなかったと。……もちろん、だからといって桃乃さんが受けた傷が癒えるわけではありませんが、彼女もようやく、自分のキャリアのために息子を置き去りにしていた事実に直面したようです」
数日後、私のもとに黒田裕子さんから一本の電話が入りました。
「白崎さん……。この度は、息子が、悠斗が……本当に、取り返しのつかないことを。申し訳ありませんでした」
以前、保護者会で見かけた時の、あの威圧的で隙のない彼女の姿は、声の端々からも感じられませんでした。そこにあったのは、自分の育て方を間違えたことに気づき、途方に暮れる一人の疲れ切った母親の声でした。
「黒田さん。私は、あなたを責めて追い詰めたいわけではありません。ただ、子供たちが、あの子たちが……、安心して学校へ行き、笑って過ごせるようにしてほしい。それだけなんです。悠斗くんも、本当は苦しかったのではないですか?」
受話器の向こうで、彼女は嗚咽を漏らしていました。
「……はい。あの子と、一から向き合おうと思います。警察への被害届の件、もし許していただけるなら……これからの私たちの態度を見て判断していただけないでしょうか。必ず、二度とこのようなことは起こさせません」
私は、被害届を一旦保留にすることに同意しました。目的は処罰ではなく、平和な日常を取り戻すことだったからです。
悠斗くんはその後、しばらく学校を休み、家庭での対話やカウンセリングの時間を設けることになったそうです。そして学校へ復帰してからの彼は、警察や教頭の目が厳しくなったこともあり、驚くほど大人しくなりました。
あとがき:相手の家族も救われた
色々あったものの、相手の親とも和解できてよかったです。
櫻子の行動は娘だけでなく、もう一つの家庭も救ったようですね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










