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怖くても選んだ一歩…息子が見せた“同調しない勇気”|息子がいじめる側になった話

「やめさせる」のではなく「どう在りたいかを選ばせる」──児童館の森下さんの言葉をきっかけに、関わり方を見つめ直した母・真帆。怖さから同調してしまう息子・悠真に対し、正しさだけでなく“選択”を委ねる言葉をかける。そんな中、児童館で再び訪れた同調を迫られる場面。悠真が選んだ行動とは。「息子がいじめる側になった話」最終話をごらんください。

🔴【第1話から読む】いじめの加害者は自分の息子!「まさか、うちの子が?」

同調そのものを否定するのではなく、「どう振る舞うか」を自分で選ぶことの大切さに気づいた真帆。悠真に対しても“どうなりたいか”を問いかける関わりへと変化していった。そんな中、児童館で再び翔と湊の間で緊張が走る場面が訪れ、悠真は選択を迫られる──。

試される瞬間

子ども  PIXTA

「ねえ、また間違えてるじゃん」

翔の声が、少し大きく響いた。
児童館のテーブルで、湊は小さく肩をすくめる。

「……ごめん」

か細い声でそう言うと、翔は鼻で笑った。

「ほんと、できないよな」

その言い方に、周りの空気が少しだけ張りつめる。

「やめてよ……」

湊が、絞り出すように言った。
でも翔は、やめない。

「何が?別にできてないから言ってるだけじゃん」

そう言いながら、もう一度、わざとらしくため息をつく。

そのとき、翔の視線が、ゆっくりとこちらに向いた。
にやり、とした口元。

「……なあ?」

試すような目。悠真の心臓が、ドクンと強く鳴る。

(どうしてやる?)

そう言われている気がした。
体が、固まる。
喉が、うまく動かない。

そのとき、ふっと別の声がよぎった。

思い出した“選んでいい”という言葉

叱る PIXTA

「怖いよね」

昨日の帰り道。ママは、そう言った。

「仲間外れにされたり、嫌なことされるかもって思ったら、合わせちゃう気持ちもわかるよ」

責めるんじゃなくて、ちゃんと聞いてくれた。

「でもね」

そこで、少しだけ立ち止まって。

「他の子を仲間外れにしたり、怖い思いをさせるのは、その子にとって同じくらいつらいことなんだよ」

静かな声だった。でも、まっすぐだった。

「悠真には、そんなことしてほしくないなって思う」

その言葉に、何も言えなかった。
ただ、胸の奥が少しだけ苦しくなった。

「怖いかもしれない」

ママは、そう続けた。

「でもね、どうするかは悠真が決めていいんだよ」

優しく、でもはっきりと。

「どんなふうになりたいか、自分で選んでいい」

「……」

目の前に、湊がいる。
困った顔で、うつむいている。
さっきの「やめて」が、頭の中で何度も響く。
胸が、ぎゅっと痛くなる。

でも翔の視線も、まだそこにある。
逆らったらどうなるか、わからない。

また、自分が同じことをされるかもしれない。
仲間に入れてもらえなくなるかもしれない。
怖い。すごく怖い。

それでも悠真は、口を開かなかった。何も言わなかった。
ただ、笑わなかった。うなずかなかった。
視線を逸らさず、でも、同じ側にも立たなかった。

小さくても確かな一歩

男の子 手 amana images

翔の表情が、わずかに歪む。

「なんで何も言わないの?」

苛立った声が飛んでくる。

「お前もさっき言ってただろ!」

その言葉に、体がびくっとする。
でも、動かなかった。

「……」

黙ったまま、何も答えない。
その沈黙が、逆に気に入らなかったのか。

「なんだよ、それ」

翔が一歩、近づく。
空気が、一気に張りつめる。
そのときだった。

「どうしたの?」

落ち着いた声が、その場に入ってきた。
振り向くと、森下さんが立っていた。
翔は一瞬、言葉に詰まる。

「……別に」

ぶっきらぼうにそう言って、視線を逸らす。

「そう?ならいいけど」

森下さんは、静かに周囲を見渡した。
その空気に押されるように、翔は舌打ちをしてその場を離れていく。
足音が遠ざかっていくのを、悠真はただ聞いていた。

「大丈夫?」

森下さんが、しゃがんで目線を合わせてくる。
悠真は、小さく頷くことしかできなかった。

「……よく頑張ったね」

その一言で、張りつめていたものが、一気にほどけた。

「……っ」

気づけば、涙がこぼれていた。
怖かった。ずっと、怖かった。
でも逃げなかった。
そのことを、初めて自分で感じた。

その日の帰り。
真帆が迎えに来ると、森下さんが声をかけた。

「今日、少しお話があって」

胸が、少しだけざわつく。
でも、その表情は、いつもと少し違っていた。

「悠真くん、頑張っていましたよ」

その言葉に、真帆は目を見開く。
森下さんは、今日の出来事を静かに伝えた。
翔くんのこと。湊くんのこと。そして、悠真がどう振る舞ったのか。

話を聞き終えたとき、真帆はしばらく何も言えなかった。
ただ、隣にいる悠真を見る。
少しだけ疲れた顔。
でも、どこかすっきりしたような表情。

「……そうだったんですね」

微笑みながら、そう答えた。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。

完璧じゃなくていい。
怖くてもいい。
それでも、自分で選んだこと。
その一歩が、どれだけ大きいか。

真帆は、静かにかみしめていた。

帰り道。夕焼けの中、ふたりで歩く。

「悠真」

名前を呼ぶと、こちらを見る。

「今日は、よく頑張ったね」

そう言うと、悠真は少しだけ照れくさそうに笑った。

その笑顔を見て、真帆は思う。
この子は、ちゃんと選べる。
どうなりたいかを、少しずつでも選んでいける。
その力を、もう持っているのだと。

あとがき:“怖くても選ぶ”という強さ

同調しないという選択は、子どもにとって決して簡単なものではありません。特に、恐怖や不安が伴う状況ではなおさらです。

本作では、「やめること」ではなく「どう在りたいかを選ぶこと」に焦点を当てました。小さな一歩でも、自分で選んだ行動には大きな意味があります。その積み重ねが、子ども自身の軸を育てていくのだと感じています。

※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。

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